第一部 J-Startupセッションレポート
究極の生産性革命
―ロボティクスによる未来―

第1部
J-Startupセッションレポート

究極の生産性革命 ―ロボティクスによる未来―

スピーカー*写真左から
【モデレーター】
HEART CATCH 代表取締役、プロデューサー 西村 真里子 氏
【パネリスト】
株式会社安川電機 営業本部産業調査室長 古瀬 利博 氏
セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ株式会社 代表取締役社長 阪根 信一 氏
Telexistence株式会社 代表取締役CEO 富岡 仁 氏

自己紹介とILSと私

古瀬氏
古瀬氏

株式会社安川電機 古瀬 利博氏(以下、古瀬氏):
当社は1915年福岡県で創業をした。初めはモーターを開発していた。メカトロニクスという言葉は安川電機が約50年前につくった言葉である。現在は主に産業ロボットを中心に開発製造している。100周年の2015年に将来のビジョンを出した。その中でコア技術の進化とオープンイノベーションに社会に新しい価値を提供することを掲げた。その一つとして2016年に安川イノベーションプログラムをはじめ、ベンチャーへの投資活動を始めた。しかし何をしたらよいか分からなかったので、まずILSに参加した。そこで出会った京都大学発のベンチャーが初めての投資案件になった。この7月にはJ-Startupのサポーターズに登録をした。

阪根氏
阪根氏

セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ株式会社 阪根 信一氏(以下、阪根氏):
私たちは自分たちの会社を「世の中にないものを作り出す技術集団」と呼んでいる。代表的なものとして、これまで世界初の洗濯物を折りたたむ製品を開発してきた。2012年の第一回ILSに参加をした。大企業がベンチャーに大きな関心をもっていることに衝撃を受けた。ILSで大和ハウスの樋口会長の基調講演を聞いたことが強烈に自分の胸に刺さり、その夜の懇親会でご挨拶をしたことがきっかけで、出資を受けることができた。当社の転機になって出来事だったので、ILSに感謝をしている。

富岡氏
富岡氏

Telexistence株式会社 富岡 仁氏(以下、富岡氏):
去年の1月にできた会社である。遠隔存在という技術をつかって開発している。ロボットを自分の擬態として、遠隔から操作をするという技術を開発している。触感をロボットが伝えられるというのが特徴になっている。去年のILSに参加をしたときに、ベンチャートップ20に選ばれてピッチを行った。一年後にこのような場に呼んでいただいて、光栄である。

ロボットにより切り開く未来

西村氏
西村氏

ロボットの発展によりどのような未来を切り開こうと思っているのか。

阪根氏
阪根氏

ロボットは人の仕事を奪ったり、人が怠け者になるといわれるが、技術進化は人を幸せにすると信じている。人は生産性の高い仕事にシフトしていき、単純労働をロボットに任せて、余った時間で新しいイノベーションを生み出していけるようになればいい。ランドロイドは、共働きで時間がない人、お金に余裕があり、もっと趣味に時間を費やしたいという人からのニーズがある。家庭内にも家の外にもロボットができることはまだまだある。

富岡氏
富岡氏

自動化、機械化、5Gをキーワードにしている。ゴールは遠隔制御ではなく、関節データをとり、ロボットを人の振る舞いにつなげていくことを目指している。人が働かなくても良い世界を目指している。企業ではなく、個人にロボットの恩恵が返ってくるようなビジネスモデルを考えている。

古瀬氏
古瀬氏

人間が普通にやっていることでも、ロボットには出来ないことがまだまだある。はじめは3Kの現場でロボットが使われてきたが、最近は介護現場などでも使われ始めている。最近では、人で実験をしていたバイオの実験や分析を行わせるロボットが出てきている。高精度で同じことを繰り返してやってくれることに価値がある。全部を自動化ではなく、ロボットと人が助け合い共存していく世界がくると考えている。

西村氏
西村氏

チップを人間に埋めこんで、人間自体がロボットになるという動きについてはどう思うか?やってみたいか?

富岡氏
富岡氏

やってみたい。攻殻機動隊の世界だろう。

阪根氏
阪根氏

人間がIoT的にインプットしてアウトプットしていくことが今後、進んでいくだろう。

日本の強みと課題

西村氏
西村氏

日本の強みと課題をどうみているか?

古瀬氏
古瀬氏

現場をもっているのが強みである。AIにしてもデータを持っているところが一番強い。一方、日本は法治国家ができすぎている。運用や規則で縛られていることが多い。書いてないことは、やっていいのか、やってはいけないのかがわからず止まってしまうことがある。そこを突破しないといけない。やってみないと何も始まらない。兎に角チャレンジすることができない。

西村氏
西村氏

社歴が長いと新しいことにチャレンジすることは難しくないか?

古瀬氏
古瀬氏

これまで新しいことにチャレンジし、様々な技術を組み合わせてきた歴史がある。ベンチャーほどの機動力はないが、チャレンジしていこうという風土はある。

阪根氏
阪根氏

技術的な観点では、ハードウェアは強いがソフトウェアが弱い。量産化のノウハウに長けている。課題は、奇想天外の新しいことにやろうとしたときに、恐ろしいほど反対意見を言う人がいることだ。新しいことを応援していく土壌はできつつあるので、そのような動きが広がっていけば、この国はよくなっている。

西村氏
西村氏

セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ株式会社は、プロモーション活動が上手だと感じている。

阪根氏
阪根氏

ソニーのように世界で認められる会社になりたいというビジョンがある。出来る限り、ブランディングに取り組んでいる。

富岡氏
富岡氏

機械化、ハードウェアの技術は強い。日本人と外国人はリスクテイクの考え方が違う。当社の従業員の外国籍の人が移住してきている。マインドセットが違うと感じる。

西村氏
西村氏

日本におけるアカデミアと産業のつながりについてはどう考えるか?

富岡氏
富岡氏

自分は、前職は三菱商事におり、スタンフォードビジネススクールに通わせてもらった。ビジネススクールの教授を見ていると、アメリカはアカデミアの世界にいながら、自分でビジネスをやっている。アメリカと比べると、日本のアカデミアの先生はビジネスにあまり興味をもっていないような印象を受ける。そういう意味では日本におけるアカデミアと産業には距離感がある。

西村氏
西村氏

アカデミアと産業の間を仲介するような人が増えるといいのか?

富岡氏
富岡氏

日本にキャピタリストは多いが、大企業にいる優秀な人がベンチャー企業へ飛び出してくる例が少ない。自分が当事者になる人がいないと感じる。

日本が海外で勝つためにすべきこと

西村氏
西村氏

日本が勝つためには何をすればよいのか?

古瀬氏
古瀬氏

今売り上げの7割は海外である。日本のベンチャー支援の制度やVCの出現は追いついてきている。大企業のオープンイノベーションも頑張っているところもある。足りないのは、今の環境に合わせて取り入れる力。大企業のもっている力を活かしたチャレンジが必要であり。オープンイノベーションというより、オープンコラボレーションだ。そこに商機があると考えている。持っていないもの同士、マッチングしていくのは大事である。また、匠を科学するという考えも必要だ。匠の技をデジタルとつなげていくことが大事だ。これまで神の手が最適だと思っていたことが、ロボットでやるともっと最適なことがわかる。

西村氏
西村氏

海外の投資先企業は安川電機に求めているのか?

古瀬氏
古瀬氏

相手とどういう事業シナジーを描けるかが重要である。ベンチャーに技術はあるが、現場の実態を知らないので、大企業側はそれを提供している。シリコンバレー、北欧、イスラエルに投資をしてきた。それぞれ投資理由は違う。

阪根氏
阪根氏

スタートアップは人・時間・金がない。日本市場だけでなく、初めからグローバル市場を対象にして売っていくことをビジョンにしないと、売れない。破壊的イノベーションであるほど、世界のメディアで取り上げられるので、マーケティングコストはかからない。はじめから世界を目指していくことが大事である。また、ローカルのニーズを知ることは大事である。現地の商社に任せるのではなく、自分たちで拠点をもち現地のニーズを知ることが大事。

富岡氏
富岡氏

現在、グローバルで勝つ準備をしているところだ。戦略的にどういう観点で勝負をするのかを時間とともに変えていかねばならない。英語の準備もその一つ。日本で得られたことをそのまま海外で使えないので、海外にチューニングしていくことが大事である。