Forbes JAPAN 谷本 有香氏(以下、谷本氏):
自己紹介をかねて、現在の活動状況をお一人3分でお話ください。
東京急行電鉄株式会社 野本 弘文氏(以下、野本氏):
1971年に東京急行電鉄に入社して開発に長く携わっていたが、その後、ハーヴェスト事業、メディア事業など様々なことを経験してきた。ケーブルテレビに出向し、3年間社長を務めた。ケーブルテレビから戻ってきて、社長7年務め、この4月から会長を務めている。
テラモーターズ株式会社/テラドローン株式会社 徳重 徹氏(以下、徳重氏):
我々はEVから事業を始めて、バングラデシュなど世界で4万台販売している。今はインドでも事業を展開している。オーストラリアは上手くいかず撤退した。新規事業は理屈で上手くいくことはないので、現場で戦いながらソリューションを見つけていくことが大事である。
株式会社FiNC Technologies 溝口 勇児氏(以下、溝口氏):
弊社は予防ヘルスケア×テクノロジーを標榜している会社である。社内の3分の1がライフサイエンティスト、残りの3分の1がAI系技術者と人材が多様である。自分自身は、17歳からプロ野球選手のパーソナルトレーナーをしていた。対面で提供できるサービスには限界があると感じ、非対面でも、スマホをつかって、同じサービスを低コストで提供できると考えた。今日までに累計100億円の資金を大企業に出資してもらっており、本日はその観点から話をしたい。
Fringe81株式会社 田中 弦(以下、田中氏):
弊社の事業のスタートは広告だったが、現在は人事管理系のソフトウェアの開発を行っている。海外ではインドとベトナムで展開している。先日GITEXのピッチコンテストに参加し、かなりいい評価をもらえた。人事面談は世界共通で嫌なことなのだろう。それを楽しくするようなサービスを提供していきたい。
オープンイノベーションが上手くいっている企業は少ない中で、何が成功の要因だったか?
変革のスピードが早いので自社だけでは限界がある。他との知恵の組み合わせが大事になってくる。自社では、企業内での起業家育成とアクセラレートプログラムの立ち上げに取り組んだ。
現場のスピードを落とさないために気をつけたことは?
イッツコムにいっていたときに、経営会議で指示したことが、中間層でつまってしまうことがあった。「伝えること」と「伝わること」は違う。やり遂げることが大事で、放任しまうと、そこでとまってしまう。社員と一緒にお昼ごはんをとって会話の機会をつくり、コミュニケーションを図った。最近、ようやく改善してきた。
どうやって大企業とうまく組むのか?
弊社はこれまで多くの大企業と組んできた。ベンチャー企業は実証が多いが、リアルビジネスをしないと意味がない。ドローンの世界は半年も経つと技術が変わってしまう。新しい技術は、スピードが大事である。
大企業にもスピードを落とさないようにしてもらうためには?
海外ではドローンが既にリアルビジネスになっているという事例を示している。
大企業が「発注します」というのは、オープンイノベーションではない。ベンチャーにもっと損をさせたほうがいい。ベンチャーは未上場なので、大企業よりもリスクがもてる。ベンチャーが研究開発費をもって大企業と連携するとよいだろう。ベンチャーと大企業はリスク・リターンの時間軸は違う。我々の場合は、自社の研究開発費を使って大企業と連携したパターンが一番うまくいっている。
大企業は、経営陣のコミットと現場の熱量が大事である。そのような会社はベンチャーをよく理解しようとしてくれる。
これまで大企業と会話が成立しないことが多く起きてきた。お互いの理解が進んでいけば、うまくいくのでお互いを理解することが大事である。
ベンチャーとのオープンイノベーションはゴールを初めから決めているのか?
ベンチャーはある意味では手段である。大企業が何のために、何をしたいのかをイメージできずして、ベンチャーと組むことはできない。ゴールは作るが、ゴールも成長していく。やらなければ何が失敗なのかわからない。水脈をみつける人は多くいるが、井戸を掘る人がいない。大企業になるほどいない。失敗したくないので、考える側に立とうとする。現場で井戸を掘って、手にした水をどう加工するかを考える人が必要である。大企業が自らできないなら、そこをやるベンチャーととことんやることが大事である。そうすれば同じものを共感できる。共感することが何よりも大事である。
なぜ日本のベンチャーは世界に出て行けないのか?登壇している方々はどのようにして出て行けたのか?
自分は英語を全然話せない。先日のGITEXでは、TED風に感情豊かにプレゼンテーションをしたのがよかった。他の人と全く違うプレゼンテーションをしたことが評価されて、決勝に進むことができた。
過去の日本人がつくってくれた日本のブランドがある。日本というだけで信用力が増す。海外に出ていくには、経営者の覚悟が必要である。失敗を小さくして、そこから学ぶことが大事。失敗してもまた挑戦する。海外進出費用をマーケティング費用として経常してしまえば、たとえ進出に失敗したとしても得られるものはある。
海外進出を促進するために、政府は何を応援すればよいか?
圧倒的な成功事例が必要である。誰かがうまくいかないと自分ごとにならない。自分たちでもできると思える環境や空気感をつくることが大事である。お客様が日本と世界では違いすぎるので、日本にカスタマイズするほど世界で売れなくなる。海外進出のハードルの一つに顧客が違うことが大きい。
日本が海外で勝つためにはなにが必要か?
農耕民族と狩猟民族の違いが根付いている。それらを踏まえた教育も含めて、日本人の気質を変えていかねばならない。また英語力がなさすぎる。今の人たちは生まれたときから豊かなので、汗かいて井戸を掘ることをしない。やればいいことがあるというのを示していかねばならない。
ソニー、ホンダ、ヤマハのOBの方々は強いベンチャー精神で海外にでていっていた。大企業の先祖はやっていたのだ。そのような精神を社内でうまく共有することだけでも大事だろう。70-80歳くらいの人の話をきくだけでも価値がある。その精神を知ることが大事。
定量的にいえば資金が足りない。現状の資金では国内の競合に勝つ分しかない。また海外で苦しんでいるのは人の採用である。日本企業の商慣習のなかで、現地の人に払える資金は少ない。インセンティブでも勝てない。日本のCEOの給与は6割が給与、2~3割がボーナス、1割がストックオプションである。海外では全部逆。長期インセンティブでやるからこそ、一生懸命である。その点で日本は負けてしまっている。
ベンチャー精神を構築していくためにはどうすべき?
若いうちから失敗を恐れないこと。現場でやるということに対して、評価をすることが必要である。失敗しても、目的が間違っていなければ評価すべき。失敗は将来の創造力になる。創造できないことはできない。
最後に一言お願いします。
GITEXの時のJETROのサポートはすばらしかった。今後ももっと海外にでていきたい。
誰よりも早く失敗して、誰よりも早く挑戦することが大事。
先人のベンチャースピリットから学べることが多い。
一言で言えば「勇気」。志があっても勇気がないと行動を起せない。一人ひとりが勇気をもつこと。失敗は経験になる。