株式会社ABEJA 代表取締役社長CEO&CTO 岡田 陽介氏(以下、岡田氏):株式会社ABEJAを2012年9月に創業し、2017年~2018年にかけてディープラーニングが活性化してきて、様々な方々とビジネスの創出をしていければと考えている。
株式会社NTTデータ オープンイノベーション事業創発室 室長 残間 光太朗氏(以下、残間氏):オープンイノベーションコンテストを世界20都市で開催している。5年前にオープンイノベーション事業創発室をつくり、AIでも様々な方と仕事をさせていただいている。
株式会社エイジング 代表取締役CEO 出澤 純一氏(以下、出澤氏):当社は、機械制御に特化したAIアルゴリズムを開発している会社で、デバイスのなかで学習できるようにする技術を持っている。現在、20数社と共同開発を進めている。
株式会社エクサウィザーズ 代表取締役社長 石山 洸氏(以下、石山氏):昨年まではリクルートで人工知能の研究所の責任者だったが、その後、現在の企業に入った。テーマは社会課題の解決にAIを活用することで、介護や医療、Fintechなど領域は広い。
まずは残間さん、大企業として自社データ活用の考え方について教えて頂きたい。
当社は仲介の立場であり、三井住友海上のビジネスプランコンテストを支援している。様々な業界のデータの掛け合わせにより、大きなビジネスチャンスになる。政府が保有している個人情報については、どう活用するかが問題であり、活用する仲介ベンチャーが出てきている。例えば、イスラエルでは、政府と民間を繋ぐ人達が出てきている。
エッジ側としては、AIにどのように関わっているのでしょうか。また、最近、日本でもAI契約ガイドラインのようななかで学習済みモデルの扱いが定義され始めているかと思うが、そのような点でも日本はそれが弱いのか。
学習してしまえば元データがいらない場合があり、出来上がった後の所有権は誰のものなのかが問題となるが、権利の存在に気づかないことが多い。出てきたものは誰のものなのか。政府のデータを日本企業以外が活用してよいのかは国益に関わることで、権利が関わってくると思う。契約の件は、定義は多数あり、法的にしばり過ぎるとガラパゴス化してしまうので、「守るところ」と「攻めるところ」のせめぎ合いが、日本を含めて世界的にまだ出来ていないのではないか。
政府データ系は民間とのコラボが進んでいるが、今後、どうビジネスを展開していこうとされているのか、ご紹介いただきたい。
自社内には前職の大企業でトランスポーテ―ションを経験した者が多い。自身の経験からすると後発でもデジタルトランスファーメーションをやっていればスタートアップでも成長できる。大企業のなかでデータの利活用は、どの程度、経営にインパクトを与えるのかと見ることに変わってきた。データ活用の手触り感の変化は、2016年に「AIで何ができるか」、2017年には「AIで何でもできる」であったが、最近は「AIで何がしたいのか」に変わってきている。この「何がしたいのか」でAI活用企業の間で差がつき始めている。現場担当レベルで、会社として決裁できるドライバーが必要である。
POCについて数百万円では限界だということもよく聞くが、AI活用のインパクトや経営に活かす方法がわからないのが実態で、大企業の覚悟が求められている。政府はガイドブック等により普及を図ろうとしていが、調整が難しくなってきている。
自社の取組みのなかで、どう連携して育成していければよいのかという観点で聞かせて欲しい。
比較的汎用的なマシナリーのインフラが整ってきたので、それをどう活用するかが、より重要となる。AI単体ではなく、インダストリーごとにドメインアドレスを持つなど、そのインダストリーに関係するようなデータサイエンティストとの融合が重要になってくる。例えば、ディープラーニングも得意だけども薬学博士をもち、創薬もできるなど、二刀流人材の育成の方法などが重要である。制度設計の面では、大企業で法務、知財系などにいたスペシャリストな人が、少しずつスタートアップに流れてきていると感じている。
確かにダブルディグリーが存在すると思う。自身は元CG専門であるが、現在ではディープラーニングに移行してきており、人材転向のスキームがつくれるのではないか。
自分は機械が専門であったが、ロボットを経て、ディープラーニングに関わっている。起業して2年だが、1年目は組込みエンジニアがいなかった。当社の場合は逆輸入のパターンで、ソニーの元PS開発者の方々が来られて、そこから急に加速した。やはり、いろいろな分野が混ざり合うことが大事である。また、育成に関しても学生を雇用している。学生でも半年くらいレクチャーすれば活躍できるまで育っている。
大企業の人材やノウハウがスタートアップに流れるということについて、どう考えるか。
確かに辞める人は増えている。AIに携わる方は、エンドユーザー側にいくと面白く、辞めることになるが、それは良いと思う。AIの人材を育てる際には、基礎的なことをやる人、ツールを使って応用する人、業務にどう活用するのかなどコンサル的なことをする人が必要で、大事なことは大企業にとって何をコアにするかということである。大企業の悩みは、AIで何をしてよいかわからないことで、そこに答えを出すようなコンサル人材を求めており、こうした人材の育成が必要である。
大企業からは、丸投げしたい会社があるかと聞かれることもあるが、止めた方がよいと言う。コラボレーションしていく領域はここなので、ベンチャーと組みたいなど、強い意志とストラテジーを持つことが必要で、そのなかでこうした人材を育成しようという話になる。また、大企業を辞めても、社会全体としてハッピーになればよいのでは。
大企業側としては、こういったベンチャー企業と付き合うとよいとか、成功や失敗談があれば教えて欲しい。
難しい問題でどのような企業がよいか、もわからない。AI分野のプレゼンはすごい企業は多いが、蓋を開けてみるとプレゼンに無理があることも多く、やってみることが重要である。実際は、多産多死で、やってみて効果を確認すべきと考えている。試さない限り真実はわからない。ただ、何でもかんでもやってみるということではなく、課題があり課題を解決するためにやってみて、うまくいったらどのような効果が期待できるかも考えたうえで取り組むことを意識している。ただし、実際のところ、大企業のビジネスユニットではそのやり方は馴染まない。そのやり方を変えるのは大変難しく、我々のような立場による仲立ちが必要である。
スタートアップ側からみてパートナー企業との付き合い方で気をつけられているところがあれば聞かせて欲しい。
20数社とつきあっているが、企業風土は面白いように分かれている。年間500社くらいの企業と合うが、そのなかで残る企業は、上から来ることはなく人間関係がつくれるところというのが第一関門である。その後は、組んだ企業とPoCをやるとオープンになるが、その後、クローズに変わってしまう。その後、法務部が出てきて「委託しない」とか、購買部が出てきて「安くして」とかのケースが少なくないが、総じて日本は捨てたものではないと思う。また、組織の特性があり、最近は社長直轄のCTO室などが増えてきて、こうした企業や小回りが効き、社内の事業部に対しても調整してくれる。
大企業と連携されて苦労しているところがあれば、聞かせて欲しい。
直轄部門だけでは不安であり、社長のコミットも必要だ。そうすると、スタートアップ側も交渉の場に如何に社長を引っ張って来れるかがポイントとなり、相手がどの程度の意思決定力があるのかをみるような時代になってきている。本当にイノベーションを生み出せる人は、0.1%以下であり、そういった人を如何に自分達のエコシステムに囲い込んでいくためのストラテジーを持っているかが重要である。
最後に、こんな企業に来て欲しいというものがあれば。
世界10都市でオープンイノベーションコンテストを開催しているが、世界210か所のマーケティング拠点を提供させていただくので、とくにかく利用グローバルに成長して欲しい。また、我々のチャネルをうまく活用して欲しい。J-Startup企業の方々に対してもサポートさせていただきたい。オープンイノベーションの基本は個人と個人の信頼関係であると考えている。
求める大手企業としては、対等に付き合える企業で、マーケティング面で信頼性の高い企業と付き合っていきたい。
世界の社会課題の解決テーマ「SGDs」に対して、二つのスローガンを掲げている。一つは、「未来へのトランスフォーメーションを組むこと」、二つは、「誰も置き去りにしないということ」で、特に二つ目は重要視している。全ての企業の方との付き合いのなかで案件化していきたい。