オープンイノベーションの種類とは?種類ごとの事例や活用のポイント

オープンイノベーション

オープンイノベーションと言ってもその手法にはさまざまな種類があり、必要に応じて使い分けたり、組み合わせたりしています。

またオープンイノベーションを成功させるには、活用の仕方も把握しておくことが大切です。

この記事ではオープンイノベーションの種類を紐解くとともに、オープンイノベーションを成功に導くための活用のポイントも解説します。

オープンイノベーションとは

オープンイノベーションとは、自社はもちろん、それ以外の組織のリソースを活かすことでイノベーションを興すことを言います。それに対してクローズドイノベーションは、自社が持つリソースだけを頼りにイノベーションを興すことを指します。

これまでは欧米諸国と比べると、日系企業ではあまりオープンイノベーションは実施されてきませんでした。

しかし、昨今のグローバル市場の拡大とIT技術の目まぐるしい進歩、ユーザーニーズの多様化により、自社のリソースだけでビジネスを成功させることが難しくなりました。

こうしたことから、最近では日系企業によるオープンイノベーションの成功事例が増えてきています

オープンイノベーションには3つの種類がある

現在企業で実施されているオープンイノベーションの手法としては、次の3つが挙げられます。

  1. インバウンド
  2. アウトバウンド
  3. インバウンドとアウトバウンドを組み合わせたもの

企業は自社の目的に応じて異なるオープンイノベーションの手法を活用しています。

インバウンド

インバウンドとは、自社で不足しているアイデアや技術を外部機関から積極的に取り込み、補完することでイノベーションを実現していく方法のことです。

自社内の技術やノウハウだけではどうしても研究開発を行うのが難しい場合に、インバウンドによるオープンイノベーションを実施することで研究開発がしやすくなったり、スピード感をもって事業を進められたりします。

具体的なやり方としては、産学連携による大学との共同研究を行い、成果を自社で開発する製品に活用することなどが挙げられます。

ライセンス・イン(他社が持つ特許権などの導入すること)やコンソーシアム(複数の組織が「共同企業体」を組成し、一つのサービスを共同で実施すること)などもインバウンドによるイノベーションです。

現在行われているオープンイノベーションの中ではインバウンドが多いです。

インバウンドの事例(ライオン)

インバウンドによるイノベーションの成功事例としては、ライオン株式会社と株式会社LIGHTzによる歯磨き粉の共同開発が挙げられます。

ライオンが得意としている調香予測や官能評価に基づく「熟達フレーバリスト」のノウハウを、LIGHTzが持つAI技術によって新しい商品開発に応用しました

新しい商品開発のために、ライオンではイノベーションラボを設立して外部の人材やノウハウの活用を積極的に行ってきました。

その中でかねてより必要としてきたAIや機械学習のノウハウを持つLIGHTzとマッチングを行い、今回のオープンイノベーションに至りました。LIGHTz側としてもライオンが持つベテランの知見が共同開発の際に大いに役立ったとしています。同社による知見とノウハウの活用で、香料開発期間を半分に短縮することに成功しています。

具体的な事例は以下のリンクで紹介しています。

オープンイノベーションの事例 株式会社LIGHTz x ライオン株式会社

アウトバウンド

アウトバウンドとは、自社が持っている技術やノウハウを外部機関に提供することで新たなアイデアを広く募集する方法のことです。

たとえ商品開発につながるような技術があってもそれを具現化させるアイデアがない時は、外部機関に技術やノウハウを提供することで、新たなアイデアを募集し共同開発を行います。自社が持っている技術を公開するということにリスクはあるものの、外部に開放することにより、多角的なフィードバックを受けやすくなり、アイデアをすぐに集めることができます。

具体的なやり方としては、自社が保有するライセンスを外部でも使用可能にするライセンスアウトが挙げられます。他にも、プラットホームやコミュニティの形成パートナーシップの締結などもアウトバウンドによるイノベーションです。

アウトバウンドの事例(三井化学)

アウトバウンドによるイノベーションの活用事例としては、三井化学株式会社と株式会社Z-Worksによる介護支援システムの共同開発が挙げられます。

Z-Worksの介護支援システム「LiveConnect(ライブコネクト)®」において三井化学による線構造の張力センシング基材「PIEZOLA(ピエゾラ)®」をバイタルセンサーとして使うことで、精度を高めることに成功しています

これまで三井化学は柔軟性に優れたセンシングの新基材「PIEZOLA(ピエゾラ)®」を、ヘルスケア領域で応用できないかと模索していました。そこで医療分野よりも実用化にかかる期間が短い介護分野に注目し、介護支援システムを行うZ-Worksとマッチングし、アウトバウンドによるオープンイノベーションを実施しました。

三井化学では、オープンイノベーションを、「アウトサイドイン型」「インサイドアウト型」に明確に区別しています。

アウトサイドイン型とは、元々会社がバリューチェーンのある分野で、外部機関の技術を活かして事業創出を行うことを指します。それに対して、インサイドアウト型は、自社が持つ技術やノウハウをスタートアップなどの外部機関に提供し、支援を行うことを指します。

参考 NEDO オープンイノベーション白書

三井化学とZ-Worksの介護支援システムの共同開発は、インサイドアウト型に当てはまります。

具体的な事例は以下のリンクで紹介しています。

オープンイノベーションの事例 株式会社Z-Works x 三井化学株式会社

インバウンドとアウトバウンドの組み合わせ

インバウンドとアウトバウンドを組み合わせたもので、外部機関の技術やノウハウを自社に積極的に取り入れたり、自社が持つリソースを外部に広く提供したりする手法です。お互いの組織に不足しているものをそれぞれ補うことにより、大きな相乗効果をもたらすことができます。

具体的には事業連携やハッカソン(ソフトウェア開発の関係者が共同作業でサービスの公安やプログラムの開発を行い、技術やアイデアを競うイベントで、アイデアを競わせたり、ベンチャーキャピタルが出資対象の選定に利用したりする)などが挙げられます。

連携の事例

インバウンドとアウトバウンドを組み合わせたオープンイノベーションの事例としては、花王株式会社と株式会社ヘルスケアシステムズによる、「皮脂RNA」を用いた郵送検査サービスの開発が挙げられます。

このオープンイノベーションでは、花王が持つヒトの肌や毛髪などに関する検査技術と、ヘルスケアシステムズが持つ郵送検査事業の商流やノウハウを提供し合うことで、サービスの開発に成功しています

花王ではかねてより新しい分野に進出するには特定分野に強みを持つベンチャー企業との提携が必要と考えていて、今回のオープンイノベーションに至りました。両社で今後も郵送検査サービスの種類の拡充を行っていくとしています。

具体的な事例は以下のリンクで紹介しています。

オープンイノベーションの事例 株式会社ヘルスケアシステムズ x 花王株式会社

オープンイノベーション活用のポイント

やみくもに始めたのでは、オープンイノベーションを成功に導くことはできません。成功させるためには、活用のポイントを理解することが不可欠です。

オープンイノベーション活用のポイントは以下の2点です。

  • 目的と連携機関を考える
  • 活用リソースを考える

また事例や企業マッチングなども参考にするとオープンイノベーションが進めやすくなります。

アジア最大規模のオープンイノベーション祭典「ILS」では総商談数2,890件、その中から協業案件が969件創出されている実績(第10回ILS実績)をもとに、オープンイノベーション最前線レポートを無料進呈しています。以下から資料を取り寄せ、自社のオープンイノベーション活動に役立ててください。

オープンイノベーション活用ポイント1・目的と連携機関を考える

オープンイノベーションを実施する前に、まずは何を目的にどのような外部機関と連携するのかをきちんと考えましょう。

共同研究

企業が研究開発を行う際に連携する機関としては、大学をはじめとした学術機関や他企業などが挙げられます。

さらに共同研究を行う際には目的も重要です。連携先の持つ人事や技術の提供を受けながら、製品開発や研究を行うことがオープンイノベーションを成功させるためには必要です。

課題解決

課題を一つ一つきちんと解決していくこともオープンイノベーションを成功に導く上で重要です。自社の課題やテーマを設定し、解決手段を公募することで解決するスピードが早まります。

企業間では困難な場合には、個人のプロフェッショナルからも課題解決を狙うことも方法の一つです。自社で可能な限りあらゆる手段やリソースを活用しながら、自社が抱えている課題を解決していきましょう。

ILSでは自社の課題やテーマを公開し、国内外のスタートアップから広く募集を募ることができます。

詳しい資料は下記のリンクから請求することができます。

オープンイノベーション活用ポイント2・活用リソースを考える

オープンイノベーションを成功させるには、自社が活用できるリソースをきちんと考える必要があります。

人材

オープンイノベーションでなくてはならないのが人材です。オープンイノベーションを理解し、それを推進する役割を担う人材を固定しておくことが望ましいです。組織間の共同研究では頻繫に連絡をとるため、担当者が頻繫に交代してしまうと 事業の停滞やミスコミュニケーションが発生しやすくなります。

トップ層、 ミドル、 現場の各組織でオープンイノベーションを熟知している担当者を用意しておくとスムーズに進めやすくなります。そのためにも、多様な人材に目を向けることが大切です。

アイデアやマインド

各メンバー間で明確なアイデアやマインドを共有しているとオープンイノベーションを進めやすくなります。自社にない技術やノウハウが欲しいからといって、外部組織に依存しすぎると、自社事業の停滞を引き起こすことになります。

オープンイノベーションは自社のビジネスの成功が目的であると割り切って、トップから現場にかけて明確なアイデアやマインドを共有しておきましょう。また自社の成功事例や外部の事例を通してアイデアやマインドを取り入れることも重要です

技術

外部の研究開発機関と連携することで、時間やコストの削減になり、スピーディーな新製品やサービスを生み出すことができます。また他社に頼るばかりではなく、自社での技術の向上に力を入れていく必要があります。外部の技術やノウハウを参考にしながら、自社の技術を高めていけば、それをオープンイノベーションの推進に役立たせることができます

知的財産

オープンイノベーションでは自社が持つ知的財産を共同開発で役立たせることができます。他社から与えてもらうばかりではなく、自社が使用していない知的財産をどのように有効活用してもらえるか考えることもビジネスチャンスを得るためには重要です。ライセンスや特許などの知的財産を保護するという考え方から共有して新たなものを作り出す方向へ切り替えていきましょう。

市場開拓

オープンイノベーションの成功には、今まで気づかなかった新しい市場を開拓することも大切です。新たに生み出したものを展開していく市場を外部連携により獲得したり、その市場で新たなネットワークを確立したりすれば、オープンイノベーションが成功しやすくなります。

提携する外部機関とアイデアやマインドを共有すれば、これまで気づかなかった市場のニーズをつかみ、新たな顧客を見つけることができます。

オープンイノベーションを推進するために

オープンイノベーションの手法は複数種類あり、自社にどれが適しているかを考えて使い分けたり、組み合わせたりすることが必要です。

またオープンイノベーション活用のポイントやリソースをしっかり把握しておくと、成功しやすくなります。

アジア最大規模のオープンイノベーション祭典「ILS」では総商談数2,890件、その中から協業案件が969件創出されている実績(第10回ILS実績)をもとに、オープンイノベーション最前線レポートを無料進呈しています。以下から資料を取り寄せ、自社のオープンイノベーション活動に役立ててください。

著者
ILS事務局

アジア最大規模のオープンイノベーションのマッチングイベント「Innovation Leaders Summit(ILS)」を開催。
ILSとは、大手企業のアセットとスタートアップのアイデアやテクノロジをマッチングし、グローバルイノベーションを生み出すことを目的に経済産業省後援のもと発足したプロジェクト。
2023年12月に開催したILS2023において、メインの事業提携マッチングプログラム「パワーマッチング」は、国内外の主力VCなどで構成する約100名のILSアドバイザリーボードが推薦する有望スタートアップ812社(内、海外企業266社)と大手企業113社が参加、3,121件の商談が行われ1,032件の協業案件を創出した。アジア最大級のオープンイノベーションカンファレンス。

主催: イノベーションリーダーズサミット実行委員会(SEOU会、ドリームゲート/株式会社プロジェクトニッポン)
後援: 経済産業省/新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)/東京都/日本政策金融公庫/オーストラリア大使館(第10回ILS実績)
運営: 株式会社プロジェクトニッポン

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