共創でビジネスを推進する3つのポイントと国内大手共創の事例

オープンイノベーション

共創相手を探して、何か新しいものを生み出さなければならないのは理解していても、具体的なことがわからず、疑問をもつ方もいるでしょう。

実は、共創についての共有ポイントや関係性を押さえておけば、共創の具体的なイメージがしやすくなります。さらに、ILSを活用して自社とマッチングするのも可能です。事例を通じて具体的な共創の関係をこの記事では示しています。この記事を読めば、初めての共創ビジネスでも、何に気をつけて目的やどんな効果を期待できるのかわかるでしょう。ぜひ参考にして、共創ビジネス成功のカギを見つけてください。

共創とは

共創とは、コ・クリエーション(co-creation)とも呼ばれている、企業が新時代を生き抜くために必要な取り組みです。主に、企業がさまざまなステークホルダーと協働して共に新たな価値を創造することを指します。

共創ではステークホルダーの意味として次の3つを表します。

  • 「消費者」
  • 「協力関係にある企業」
  • 「社外人材」

(引用 https://nihon-kyousou.jp/cocreationology/vol1_no1/Cocreationology_1-1-11.pdf

しかし、企業の中には、共創を企業の方針や目標にするのは良いが、具体的に共創を通じた新たな価値を創造する具体的なプロセスや方法がわからない企業もあるでしょう。これを知るためには、共創を成功させている他社の事例や取り組みについて知ることが必要です。

共創とオープンイノベーションの違い

オープンイノベーションの意義は、自社内のイノベーションの効率化にあります。内閣府でも、オープンイノベーションは、自社内外のイノベーション要素を掛け合わせることにより、できるだけ短い期間で最大の成果を得ることと定義されています。

一方で共創はステークホルダーと協働することによってビジネスを創造することです。オープンイノベーションはイノベーティブなビジネスを生み出すことに特化した考え方なので、共創のほうがより広義な概念であると言えます。

オープンイノベーションについての詳細はこちらの記事を参考にしてください。

共創の目的と効果

共創の目的は、企業が経済活動の中で他社よりも一時的に優位に立つことです。市場が飽和状態にある現在、対立による競争が激化しています。そこで、「競争」ではなく「協力」の形で市場ニーズをとらえ、競争優位性を高めていくのです。

長期間に渡って優位を保つことは、ほとんどの企業にとって難しい時代(「競争優位の終焉」)といえます。(「競争優位の終焉」https://www.amazon.co.jp/dp/4532319382

そのため、一時的に優位に立つために、ビジネスのイノベーションや優位性の維持をするのが重要です。

例えば、ブランディング活動や他社との差別化、市場の安定した売上は、企業にとっていまや生命線ともなっています。しかし、1企業だけで優位に保ち続けるのは難しく、他社との共創が不可欠です。そこで、この優位な状態を続ける、もしくは優位な状態に戻すために、新たな価値を見出してステークホルダーと新事業を始め、結果を残すことが共創の目的となるのです。

また、SDGsなどの社会的意義を目的にする場合もあります。ビジネスのスケールは企業の利益範囲だけにとどまらず、地域や社会の貢献に対しても注目される時代です。
以上を目的として企業が共創に取り組めば、多くの効果が得られます。例えば、共創による気付きや発想が起爆剤となって新たな商品やサービスの市場が生まれます。それから、さまざまな情報の共有によって人材のスキルアップに繋がる効果も期待できるのです。

共創はなぜ必要?

共創が必要な理由は、変化が激しく、不確実かつ複雑であいまいな市場において新たな商品やサービスといった価値が生まれにくくなっているからです。そのため、このような厳しい状況において競争力を上げていくために「共創」は必要な取り組みといえます。

実際、1つの企業が可能とする事業の技術提供やスキル・ノウハウには限界があります。しかし、複数の企業が共創して事業を進めれば、これまでにできなかったことができるようになります。特に、事業を発展させるために課題となっている部分が共創することでブレークスルーとなり、新たなアイデアや事業視点を生み出すケースもあるのです。

上記は企業だけの話にとどまりません。いまや、顧客はさまざまな情報に触れて、あらゆる面で企業と顧客の関係性が強まっています。顧客との共創によるアイデアの創出や事業の関わり方を工夫すると新たな価値創造につながる事例も増えているのです。

共創を成功させるためには「関係性」がカギ

共創にはビジネスに活用するための3つの関係性があります。

対等(双方向)な関係

競争ビジネスを成功させるにはまず共創パートナーである企業同士が対等(双方向)に意見を出し合いながら新たなビジネスモデルを構築できる関係性が必要です。

従来のビジネスモデルでは、商品・サービスを提供する企業が顧客(企業や消費者)に対して、一方向の関係を築いてしまいがちでした。しかし、対等な関係を築く共創では、単なるビジネス相手としてではなく、新たな価値を想像するために必要なパートナーとしての関係を築きやすくなるのです。

また、SNSの台頭でも共創の対等な関係を築きやすい環境があります。いまでは顧客にも気軽にSNSを通じて意見交換の場が用意されています。

共有(オープン)の関係

共創は、共有(オープン)な関係性を築くことでビジネスに活用できます。共有の関係とは、企業や自治体、大学や研究機関などさまざまな事業体がコミュニティをなし、ひとつの課題やテーマに対して意見やアイデアを出し合い、それぞれの分野における価値を創造することです。

本来であれば1社では太刀打ちできない課題や問題でも、共有関係になることで情報を共有し、互いの技術や知見を持ち寄ったり、問題を解決したりを可能とします。その中で生まれた新しい価値観は全体に共有されて、同じ価値観をもつ関係を生み出せるのです。

1社で情報を独占しているだけでは、限界があるでしょう。もちろん、企業ごとに参加する人材がそれぞれで考えて、必要に応じたリーダーシップを発揮するのです。

連携の関係

共創は、連携の関係もビジネスに活用できます。連携の関係は、プロジェクト実行において不足している技術やアイデア、人材などを他社の協力によって補い、課題を解決する関係性です。

通常、連携の関係では上下関係を作ることをしません。大企業とスタートアップ、異なる業界同士の連携が多く、協力する側とされる側になりますが、その関係性に上下はないのです。互いが協力して情報・技術を共有しながら、共同で取り組む点に連携関係の真髄があります。

共創をビジネスにいかす3つの共有ポイント

共創パートナーと共有すべき3つのポイントがあります。

技術の共有

共創でパートナーと共有する1つ目は「技術」です。顧客やビジネス市場、社会にはさまざまなニーズがあり、それに対応するための技術力の蓄積が共創では可能となります。共創を通じて、社内外の技術者と協力し、新たな技術やスキルを共有し合い、企業全体の技術力を高めることが可能になります。

そのためには、優れた技術とそれを使いこなせる技術力のある人材の確保、もしくはその人材に代わるAIやIoTの活用が有効です。特に人手不足が深刻化する企業や業務効率化を課題とする企業には、AIやIoTの活用が大きな助けとなるでしょう。

経験の共有

2つ目は「経験」の共有です。共創を通じて過去の実績や事業内容を理解しあいます。そのため、不足部分を共有しながら体験・実感させることができます。

具体的には、事業のプロセスが進むにつれて、以下の各段階で経験として共有、自社にはなかったプロジェクトの体験が可能です。

  • アイデアの創出
  • 企画・開発
  • 事業の展開
  • 評価・フィードバック

また、経験それ自体は、社内外の人材が互いに学び、成長するために必要となります。これまでに得られなかった経験を通じて、新たな視点に気づいたり、価値を想像するための下地を築いたりするのです。このように、経験の共有により、ビジネスのイノベーションや問題の解決が期待できます。

価値の共有

最後は「価値」の共有が挙げられます。価値とは、そのまま価値観を意味します。価値観を共有して他社や顧客からの信頼を得ることが重要です。

まずは、共創に関わる全ての人たちが共通の目標を持ち、その価値を共有するのです。異なる分野や業界の企業と価値観を共有するため、事業が進めやすく、関係者とのコミュニケーションが円滑になります。

共創ビジネスの事例

共創ビジネスにはいくつかの事例があります。ここではILSで協業が実現した大手企業とスタートアップとの共創の事例を3つ取り上げます。

事例1.ブラザー工業とラトビアのスタートアップFitdex社の共創/

まずは、大手企業とスタートアップとが対等(双方向)な関係で消費者にアプローチする事例としてブラザー工業とFitdex社の共創が挙げられます。

ブラザー工業の欧州販売子会社は、スマホアプリによりユーザーの体型にあった服の型紙をダウンロードできる仕組みをもつラトビアのスタートアップであるFitdex社とパートナーシップを組み、ヨーロッパにおいて家庭用ミシンの普及を目的に共創ビジネスを展開しました。

【共創での取り組み】

  • ブラザーのブランド名で型紙の割引キャンペーンの実施
  • 「Sewing Competition」イベントの開催(Fitdexのアプリで作成した型紙で洋服を作り、SNSでシェア。優秀者にはブラザーのミシンを贈呈)

ブラザーにとっては、顧客が裁縫の楽しみを知り、機会を増やすことで自社の製品である家庭用ミシンの販売促進にもつながる相乗効果が期待できるのです。ブラザーだけではむずかしかったユーザーに合った型紙を作る技術的なアプローチがFitdexの技術により可能となっており、Fitdexから見れば欧州でも有名なミシンメーカーとのタイアップにより信頼度が増します。共創ビジネスの代表的な価値創造の例といえるでしょう。

ブラザー工業:洋服パターン生成スタートアップと完璧なパートナーシップを実現し、ヨーロッパ市場を開拓

事例2.セコムと行動認識AIの技術を持つアジラによるAIとセキュリティサービスの共創

2022年に株式会社アジラがセコム株式会社とセコムによるセキュリティサービスを始めた事例です。

以前より、セコムは社内外の技術共有を目指してオープンイノベーション推進担当部署を設置していた背景があります。アジラは施設内のAI警備システムをする「アジラ」をすでに提供していました。

そこで両社は資本業務提携を結んで共創に乗り出したのです。また、顧客からセキュリティに関する相談があれば両社で相談して決める(すでに商品化を進めている事例も)など、共有関係を築いて、課題に取り組んでいます。

セコム:行動認識AI開発で資本業務提携、セキュリティ分野のAI化など社会実装を目指す

事例3.SOLIZE×アラクノフォースによるVR技術の共創

SOLIZEと東京工業大学発のスタートアップであるアラクノフォースが技術的な提携によってVR技術を新しい教育ツール開発に活用した事例です。SOLIZEはすでに「SADOKU」というバーチャル空間で教育を受けられる体験型の製品・サービスを展開していました。また、アラクノフォースでは、力覚提示デバイス「SPIDAR」の開発・販売を進めていたのです。

そこで、共創の提携関係として、力覚提示デバイスで重さの感覚を実体験しながらサイエンス学習に活用したVR教材コンセプトを想定し、プロトタイプの開発に成功します。

【活用先・今後の目標】

  • 私立高校のサイエンスコース在籍(予定)の生徒に分子間力体感VR教材として提供
  • VRコンテンツやデバイスを他校に紹介、コンテンツやデバイスの販売につなげる

共創による企業提携で、新たな可能性やビジネスチャンスが生まれているのです。

SOLOZE:VR技術と力覚デバイスを組み合わせた教育ツールを共同開発

共創ビジネスを成功させるために

共創ビジネスの成功には、企業が協力して新たな価値を想像できる相手を探すことが不可欠です。相手は誰でも良いわけではなく、互いが信頼して技術情報や価値を共有し、高め合いたいと思えることが必要となります。

カギとなるのがマッチングの重要性です。企業は他社に警戒感を持っており、なかなかマッチングに必要な情報共有や話し合いの席に付くのが難しいでしょう。

アジア最大級のオープンイノベーションイベントを開催しているILSには、共創相手を探している国内の大手企業や国内外の精鋭スタートアップが多く集まっています。ILSを上手く活用して、共創相手を見つけてみましょう。

著者
ILS事務局

アジア最大規模のオープンイノベーションのマッチングイベント「Innovation Leaders Summit(ILS)」を開催。
ILSとは、大手企業のアセットとスタートアップのアイデアやテクノロジをマッチングし、グローバルイノベーションを生み出すことを目的に経済産業省後援のもと発足したプロジェクト。
2023年12月に開催したILS2023において、メインの事業提携マッチングプログラム「パワーマッチング」は、国内外の主力VCなどで構成する約100名のILSアドバイザリーボードが推薦する有望スタートアップ812社(内、海外企業266社)と大手企業113社が参加、3,121件の商談が行われ1,032件の協業案件を創出した。アジア最大級のオープンイノベーションカンファレンス。

主催: イノベーションリーダーズサミット実行委員会(SEOU会、ドリームゲート/株式会社プロジェクトニッポン)
後援: 経済産業省/新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)/東京都/日本政策金融公庫/オーストラリア大使館(第10回ILS実績)
運営: 株式会社プロジェクトニッポン

ILS事務局をフォローする
オープンイノベーション
シェアする
Innovation Leaders Summit
タイトルとURLをコピーしました