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提携事例

行動認識AI開発で資本業務提携、セキュリティ分野のAI化など社会実装を目指す

公開日:2023年3月29日 / 執筆:ILS事務局

株式会社アジラとセコム株式会社は2022年9月、資本業務提携を結んだ。アジラ社が独自開発を進める行動認識AI技術を、セコムグループのセキュリティサービスにおける価値向上や、新たなサービスの創出につなげる狙いがある。現在、AIとセキュリティを組み合わせた領域を中心に、顧客からのニーズに対応した個別のサービス開発を進めている。

セコムの背景と狙い

セコムは社会ニーズの多様化に応えるため、社内外のアイデアと技術の融合に力をいれており、その延長線上としてオープンイノベーションに取り組んでいる。長谷川氏は「当社は安全・安心に資するサービスを世の中に提供しており、その対象はセキュリティのみならず、メディカル、防災、BPO・ICTなど幅広い領域があります」と説明する。

セコムがオープンイノベーションに取り組み始めたのは、「昨今は世の中の価値観が多様化する一方で、ロボットやAI、ドローンなど新たな技術が出てきて、社内の活動だけで新たな技術を取り込むには時間がかかりすぎる状況にあった」(長谷川氏)からだという。同社は2015年、オープンイノベーション推進担当という部署を横断した組織を新設し、活動を始めた。

セコムは安全・安心につながる社会課題を他社や研究機関、学生など様々な価値観を持つ方々と議論する場として、「セコムオープンラボ」を展開中で、社会の変化を探索しつつ外部との関係性を深める取り組みを進めている。「ILSもまさに関係性を深める取り組みの一つと考えています。いろいろな画像技術を持っておられる企業様の調査を継続していくなかで、“TOKYO CHALLENGE 100”※においてアジラ社から我々の募集テーマに応募を頂いたというのが出会いです」と話す。
※2021年のILSで開催された協業マッチングコンテスト

アジラの背景と狙い

アジラは2015年6月に創業し、日本に本社を、ベトナムに開発拠点を持つ。2022年1月にリリースした施設向けAI警備システム「アジラ」の開発・販売および行動認識AIソリューションの提供をしている。行動認識AIは通常行動から逸脱した「違和感行動」を検知するため、事件・事故の予兆をつかむことが可能だ。「当社の行動認識AIは、まだ世の中に知られておらず、どのお客様にどのようにフィットしていくのかが手探りだという課題を抱えていました」(木村氏)。自社の技術をサービス化したり、協力してサービスを販売したりできる先を求めていた。

さらにアジラは、スタートアップは小規模で知名度がないという悩みもあり、大企業と接点が持てるILSへの参加を決めた。木村氏は、「ILSは大企業の皆様の目的が明確で、私どもはそれを知った上で『この企業様とであれば、うまく協業できるかも知れない』という仮説をもってコンタクトできるので、話が盛り上がりやすく効率がとても良いです」という。

同社の行動認識AIの技術的優位性のひとつは、2017年から続けている、ベトナムの撮影施設における生身の人間がとった行動データの取得と蓄積、分析だ。AI技術の開発では、いかに質の高いデータを大量に集めるかが鍵を握る。コロナ禍にあっても、比較的行動規制が緩かったベトナムに撮影施設があったため、データ収集が滞らなかった。このため「基礎技術が世界トップクラスになっています」(木村氏)との矜持を持つ。こうした技術的な裏付けを基に、アジラは自社のAIを活用する先として、資本力があり多数の顧客を抱える企業を提携先として求めていた。そして同社は2021年3月、セコムに“ラブコール”を送った。

提携内容

アジラとセコムは2022年9月、資本業務提携を結んだ。セコムはオンラインセキュリティシステムをはじめ、さまざまな商品・サービスで、映像解析技術を活用。アジラが開発・提供している行動認識AIが高性能であるとともに、ロースペックなコンピュータや画像処理装置上でも動作する実用性を有している点を評価した。

セコムの長谷川氏は、「現在はアジラ様に出資をしていますが、両社の関係は出資ありきということではなく、新しいサービスを一緒に作っていくことが本質です。両社で新たな商品やサービスを生み出していきながら、社会の課題解決につなげていきたいと考えています」と提携の狙いについて説明。またアジラの木村氏も「セコム様とはいくつかの方面で、いろいろ話が進んでおりますので、今後はすごく楽しみです」と期待をにじませる。

行動認識AIで世界一を目指すアジラの技術について、長谷川氏は「アジラ様が研究されている技術を高く評価していることはもちろん、企業様として信頼できるパートナーだという想いがあります」と言うように、両社の協業は長期的視野に立っている。セコムとアジラは、定期的に技術部門で情報交換や技術交流を行いながら、顧客ごとの状況に合わせて、最適なソリューションの提案などを提供することを模索している。

例えば、「カメラとAIを組み合わせて新たな用途に使えないかという顧客からの要望があれば、両社で技術的な相談することもあり、実際にいくつかお話が進んでおります。また、個別のお客様向けに開発したサービスをブラッシュアップし、一般的なサービスとして商品化することも視野に入れています」と長谷川氏。アジラの木村氏は「私どもはセコム様から期待されている技術の部分に一点集中し、しっかり技術を向上させていきたいと考えています」と話す。さまざまな分野で高度なAI化を進めていくなど、最新技術の社会実装を目指していく。

セコムの提携ストーリー(ILS2021 TOKYO CHALLENGE 100)

TOKYO CHALLENGE 100

提案数※1

83

商談数※2

7

後日に再商談した社数
事業提携に至った社数

1

1

  • ※1) ILS2021 TOKYO CHALLENGE 100におけるスタートアップからの提案数。
  • ※2) ILS当日に、事前のリクエストによってマッチングした相手と商談した数。
セコム株式会社 企画部 担当部長 兼 オープンイノベーション推進担当 博士(工学)
 長谷川 精也 氏

ILSはまず、規模が大きいため、知り合える企業の幅が広いという特徴があります。また、エントリーされているスタートアップの方々は、いろいろな方が目利きをされて選抜された会社ばかり。このため、高い段階からお話を進められ、スタートアップ様からは、こちらの想像を超えた提案をされるなど、新しい気付きが得られます。

株式会社アジラ 代表取締役社長
 木村 大介氏

スタートアップは基本的に、社内のリソースが不足している状況にあるため、効率的に大企業の皆様とお話ができるのはありがたいです。しかも来て下さっている方にはオープンイノベーションを直接担っている方が多く、話が早く進みます。毎回、さまざまなお客様と情報交換をさせて頂いて、高い効果が得られていると実感しています。

アジラ社を推薦したILSアドバイザリーボードメンバー
三菱UFJキャピタル株式会社 執行役員 投資第三部長 清水 孝行