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提携事例

VR技術と力覚デバイスを組み合わせた教育ツールを共同開発

公開日:2023年3月28日 / 執筆:ILS事務局

アラクノフォース株式会社とSOLIZE株式会社はSOLIZEがもつVR技術とアラクノフォースが開発した力覚提示デバイスを組み合わせた、新たな教育ツールの開発を共同で始めた。両社は既に私立高校などに向け、新たな教育ツールの導入提案を進めている。今後は、製品の改良を進めながらツールの販売を目指し、資本提携も視野に入れつつ事業シナジーを高める探索をつづける。

SOLIZEの背景と狙い

SOLIZEは自動車を中心とした製造業向けに、デザイン、3Dプリンティング、変革の3つの事業領域で事業活動を行っており、3D技術と1000人を超えるエンジニアリング人材を強みとしている。2021年から、3Dエンジニアリング技術を基に、これまで社内でエンジニアを育成してきたノウハウを活かす形で、VR技術を活用した教育学習サービスの提供を始めた。

現在、私立高校などとVR学習を導入するプロジェクトを進め、国立大学とのVRを用いた学習手法の共同研究にも着手。SOLIZEは「VRは感覚を刺激しリアリティや高い没入感を生み出す技術だが、視覚・聴覚へのアプローチが主で、学びのための体験量をさらに増やすためには、触覚デバイスとの連携の必要性を強く感じていた」(増田氏)という。

そのため新しい教育ツールの共同開発の可能性を模索していたところ、「力触覚の研究をされており、デバイスとして実装されているアラクノフォース様にILSで商談を申し込みました」(増田氏)。同社はソフトウエアについて社内のリソースでまかなえる自信は十分にあったが、デバイスを含めた機器(ハードウエア)については、技術力のあるベンチャー企業との協業が不可欠だと考えていた。

アラクノフォースの背景と狙い

東京工業大学発ベンチャーであるアラクノフォースの本多氏は、「我々は腕や手首にかかるような力の感覚を、振動や触覚はもちろんのこととして、物体同士が当たったり離れたりしたときの力の強さや弱さが伝わるような、力覚提示が可能なデバイスを長年研究してきました」と話す。アラクノフォースの力覚提示デバイスは、例えば3次元空間上で仮想の物体を触った際に、振動で伝えるブルブルと震えるような擬似的な感覚ではなく、物体に当たったときやなぞったときの実際の感覚が再現され手に伝わってくる。

こうしたデバイスは大きく、ロボットアームのような操作部を持って操作するリンク駆動型と、アラクノフォースが手がけるワイヤ駆動型の2種類に分類される。リンク駆動型は操作部が重いのに対して、ワイヤ駆動型は持ち手を軽量にでき、高精度な力覚提示と装置自体を小型化できるというメリットがある。

同社はかながわサイエンスパーク(KSP)のアクセラレータープログラムに採択され、「その一環としてKSPから推薦して頂き、ILSに参加しました」(本多氏)と明かす。研究開発型企業のアラクノフォースにとっては、ILSへの参加により、大手企業と協業できれば、自社製デバイスの用途開拓やマーケティングが進むのではないかという期待感があった。

提携内容

SOLIZEは、バーチャル空間で学習コンテンツを提供する製品・サービス群を、「SADOKU」という名称で展開。SADOKUは、XR(VR/AR/MR)技術を用いた体験型コンテンツで、「利用者の学びの体験量を増加させ、苦手を克服して可能性を広げ、最終的には主体的な学びへの行動変容を促すような学びを目指している」(増田氏)。一方、アラクノフォースは、VR/AR世界において力の感覚(力覚)を提示する技術に長年携わってきた。この技術を活用することにより、力覚提示デバイス「SPIDAR」の開発・製造・販売とソリューション事業を行なっている。

両社はSOLIZEのVRに関するソフトウエア技術と、アラクノフォース力覚提示デバイス(機器)を組み合わせ、人間が仮想空間上でモノがぶつかる感覚や重さなどを感じながら学習できる教材コンセプトを構想し、プロトタイプを開発した。2022年9月には、私立高校のサイエンスコース在籍予定の生徒に向け、分子間力を体感できるVR教材として提供するなど、実践授業にも乗り出した。

増田氏は「当社とアラクノフォース様がもつ技術の相互理解の上で、当社としてはVRコンテンツ・デバイスを他校に紹介するなどして、コンテンツやデバイスの販売につなげていきたいです」と説明する。SOLIZEはデバイスの価格やサイズ感などに関して学校からニーズを吸い上げたり、学習効果についてヒアリングをしたりして、販売面での協業にもつなげていく意向だ。 アラクノフォースは「SOLIZE様からコンテンツやインターフェースを含めて、使いやすいような設計などについてアドバイスを頂きながら、デバイスを改良していきたいと考えています」と、提携によるメリットに期待感を示す。

SOLIZEの提携ストーリー(ILS2022)

ILSパワーマッチング

商談リクエスト数※1

59

商談数※2

36

後日に再商談した社数
協業に至った社数

9

2

  • ※1) 大手とベンチャー双方からの商談リクエスト(商談依頼)合計。
  • ※2) ILS当日に、事前のリクエストによってマッチングした相手と商談した数。
SOLIZE株式会社 ビジネスインキュベーション事業部xRクリエーション部 部長
増田秀仙氏

当社が登録している募集内容に応じて、さまざまなスタートアップ企業から提案を頂けるのが有り難いです。私どもが興味のある企業以外からのリクエストをいただく機会もあり、とても多様性を感じられるようなプラットフォームだと感じています。さらに商談時にはILSから通訳サービスが提供されるので、海外のスタートアップとの協業の可能性も広がります。

アラクノフォース株式会社 代表取締役社長
 本多健二氏

さまざまな業種や、こちらが想像してなかったような業種からも、お声がかかったりすることが驚きでした。このため、当社は2年連続で参加させて頂いております。また他にはない規模の大きさもILSならではですね。会社やプロダクト自体の周知にもつながり、ILSに参加していなかったら繋がってなかったであろう大手企業とも接点がもてるのが魅力です。

アラクノフォース社を推薦したILSアドバイザリーボードメンバー
株式会社ケイエスピー インキュベート・投資事業部 統括課長 栗田 秀臣