事例一覧 > 株式会社Z-Works x 三井化学株式会社

提携事例

株式会社Z-Worksと三井化学株式会社は、三井化学が開発したフレキシブルな極細同軸線構造の張力センシング基材「PIEZOLA(ピエゾラ)®」を、Z-Worksの介護支援システム「LiveConnect(ライブコネクト)®」でバイタルセンサーとして用いることで精度を向上。実証試験を経て実用化を果たし、2020年10月には介護施設等での本格展開を開始した。また、Z-Worksは2020年3月に三井化学より資金調達(金額非公表)も受けている。

三井化学の背景と狙い

1912年に開始した石炭化学事業を起源とする三井化学は、モビリティ・ヘルスケア・フード&パッケージングを成長3領域として、次世代事業・新製品開発を通じて新たな顧客価値の創造を目指している。そこにマッチするスタートアップを求めて、2017年よりILSに参加。Z-Worksとの出会いは2018年のことだった。

三井化学はテーマのひとつとして、高感度で柔軟性に優れたセンシングの新基材「PIEZOLA(ピエゾラ)®」の活用法を求めており、自社ではぬいぐるみや椅子に内蔵して心拍数・呼吸数をとれるものを試作、応用用途を探索していた。

特にヘルスケア領域で実用化に資する用途を探していたところ、ILSでの懇親会にてZ-Worksの小川氏からアプローチを受け、同社の介護支援モデルに関心をもち、協業を開始することとなった。決め手は、薬事承認等で実用化まで時間がかかる医療系モデルに比べ、介護系モデルであれば社会実装をより早期に実現できると期待したことと、当時、次世代事業開発室(現・新事業開発センター)を率いていた善光氏自身も家族の介護を経験しており、Z-Worksの提唱する「がんばらない介護」に共感したことであったという。

Z-Worksの背景と狙い

2015年創業のZ-Worksは、IoTをより簡単に実現するため、独自のクラウドサービスを提供しているスタートアップ企業。代表取締役/共同経営者の小川誠氏自身が長年の介護経験により「がんばらない介護」を実現する介護支援システムの開発を志すようになり、以来、「IoTデバイス」「インテリジェンス」「統合プラットフォーム」で構成されるサービスの提供を行い、介護施設への導入を進めている。

この介護支援システム「LiveConnect(ライブコネクト)®」は赤外線による人感センサー等を介護施設の居室に設置し、介護職員による昼夜の見守り業務の負担軽減と高齢者の事故防止を図るもの。だが、当初使っていたレーダーによるバイタルセンサーの精度に難があり、より良い材料を探していた。

そこで、2018年に初参加したILSで出会ったのが、三井化学だった。Z-Worksの場合は、すでに製品となるシステムはほぼ構築されていたものの、実用化のために最後のピースを探しているという、スタートアップ企業にありがちな難局にあり、システム全体の性能向上のためには優れた材料と出会う必要があった。

提携内容

より高精度のセンサーを求めていたZ-Worksに対し「PIEZOLA(ピエゾラ)®」が提供され、Z-Worksが用意した検証用スペースに三井化学の技術者も張り付いて改良を重ねたが、実用化には約2年を要した。

「PIEZOLA(ピエゾラ)®」自体のセンシング精度は高くても、高齢者特有の呼吸の浅さや体重の軽さ、生活の場であるベッド上に乱雑に置かれる生活用品等の重み、居室内で介助する介護スタッフの動作による振動ノイズなど、現場のさまざまな要素をクリアする必要があったためだ。さらに、当初はベッド全体に7本のセンサーを配したが、介護施設が導入しやすいようコストを抑える必要や設置の簡便さのため、最終的には1本で求めるデータ取得を可能にさせた。このような検証と改善は、このセンサーの専門家である三井化学と、介護現場に知見があるZ-Worksの協業だからこそ可能だったこと。

そうして、呼吸・心拍数などの安定的なデータ取得が可能になり、解析して睡眠深度の可視化まで成功させた「LiveConnect(ライブコネクト)®」は、2020年10月に全国展開を開始。同年末時点で、45施設750床に導入されている。さらに、コロナ禍により換気を頻回に行うため室内気温データが重宝されたり、翌朝6時時点で直前の夜間帯データを一覧し、他日との比較も可能にするなど、現場の声に応えて引き続き改良が行われている。この夜間帯データでは睡眠時間や覚醒回数を正確に取れるため、たとえば医師が睡眠導入剤の処方内容が適否判断に用いるなど、新たな活用法も生んでいる。「これはPIEZOLA(ピエゾラ)®のおかげ」と、Z-Worksの小川氏はいう。「センサーとしての性能が高いので、体動が安定的に取得できるようになったからこそです。三井化学との協業なしには、ここまでシステムを改良できませんでした」

三井化学の側でも、協業による成果は大きかったという。「現場に深く入り込んで声を聞き、スピーディーに改善していくという、アジャイルな仕事の進め方はたいへん刺激になりました」と語る善光氏。「大手企業にありがちなことですが、当社製品の性能には自信があっても、完成品として実用に耐えられるまで改良を重ね、極めるのは当社だけでは不可能です。介護現場の身になれば、アラームが鳴って行ってみたが検知ミスで無駄足だったりすれば、折角導入したシステム自体が使われなくなるでしょう」。実際、以前のセンサーでは80%と5回に1回は外れだった検知率が、PIEZOLA(ピエゾラ)®によって今では99.8%と、ほぼ間違いないレベルまで改善されている。「こうした成果を協業で叶えられ、当社の技術者たちも大きな達成感を得ています。特に若手の研究者にはこのような機会を通じて、自分が手がけたものが製品化され、世の中の役に立つことを実感してもらいたいですね」

PIEZOLA(ピエゾラ)®

三井化学の提携ストーリー

ILSパワーマッチング

商談リクエスト数※1

28

商談数※2

24

後日に再商談した社数
事業提携に至った社数

20

8

  • ※1) 大手とベンチャー双方からの商談リクエスト(商談依頼)合計。ILSでは参加ベンチャー企業を様々な検索軸で検索し、リクエストを行う事が出来ます。また、ベンチャー企業からもリクエストがあります。この仕組みにより、事前に精度の高いマッチングが可能となります。
  • ※2) ILS当日に、事前のリクエストによってマッチングした相手と商談した数。
三井化学株式会社 理事 新事業開発センター長
善光 洋文氏

当社では、2025年度に営業利益2000億円を目指す長期経営計画のなかで、新事業・次世代事業も注目されており、CVCも含め、スタートアップとの協業を積極化。そこで、ピッチイベント等にも精力的に参加をしていますが、それらだと一方的なプレゼンテーションで質疑応答も時間が限られるのに対し、ILSは集中的に3日間で500社超のスタートアップと、ブースやパワーマッチング、懇親会などで時間をかけてコミュニケーションが行えるのがメリットです。また、毎年大規模に開催されるため、同窓会的な交流の場ともなっていて、直接提携や出資をしてはいないスタートアップとも顔なじみになっていけるというのは、他のマッチングイベントにはない魅力といえるでしょう。

株式会社Z-Works 代表取締役 共同経営者
小川 誠氏

ILSは短期集中で、一気に目的を達成できるのが良い点だと思います。当社も2018年以来、毎年参加していますが、ブースは出さず、パワーマッチングと懇親会を活用していました。今年(2021年ILS)はTOKYO CHALLENGE 100という協業マッチングコンテストがあり、スタートアップが大手企業各社に自社のアイデアや解決策を直接提案できるので、期待しています。また、コロナ禍のため、懇親会の開催は難しいと思いますが、スタートアップ同士の交流の場でもあり、気になる大手企業とのコミュニケーション機会でもあるので、何らかの形で同様の交流ができればよいですね。