リーガルテックとは?導入するメリット・デメリットから活用事例まで紹介

リーガルテック アイキャッチ スタートアップ情報
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法務部門の効率化やリスク管理の高度化を実現する手段として、注目されているのが「リーガルテック(LegalTech)」です。契約書の作成やレビュー、登記・申請、法令リサーチなど、従来は手作業や属人的な対応が求められていた業務に対して、AIやクラウドなどのテクノロジーを活用することで、大幅な業務改善が可能になります。とくにコロナ禍やDX推進を背景に、電子契約や契約管理システムの導入が急速に進んでおり、少人数体制でも高品質な法務対応を実現する企業が増加しています。

そこで今回は、リーガルテックの定義や注目の背景から、代表的なサービスの種類、導入メリット・デメリット、さらには実際の企業の導入事例までを網羅的に解説しています。自社の課題に合ったツールを見極め、法務の効率化や標準化を進めるための第一歩として、ぜひ参考にしてみてください。


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  1. リーガルテックとは?
    1. リーガルテックの定義
    2. なぜ今リーガルテックが注目されているのか?
    3. 日本と海外におけるリーガルテックの違い
  2. リーガルテックの主なサービス種類
    1. 電子契約サービス
    2. 契約書のレビュー・作成支援サービス
    3. 文書管理・契約管理クラウド(CLM)
    4. 申請・出願・登記支援サービス
    5. 訴訟・紛争対応支援サービス
    6. 法令検索・リサーチ支援ツール
    7. 法律事務所・弁護士業務支援ツール
  3. リーガルテックを導入するメリット
    1. 業務効率化と生産性の向上
    2. コスト削減と印紙税の節約
    3. 業務の属人化を防ぎ、標準化を実現
    4. 法務ナレッジや契約データの資産化
    5. セキュリティ向上とコンプライアンス強化
  4. リーガルテックを導入するデメリット
    1. 導入コストと運用負担が発生する
    2. 取引先との連携や理解が必要になる
    3. セキュリティリスクと情報漏えいの懸念
    4. トラブル発生時の対応ルールが求められる
    5. 一部業務には非対応なケースもある
  5. リーガルテックの導入を成功させるためのポイント
    1. 導入目的と課題を明確にする
    2. 必要な機能と利用部門を整理する
    3. 導入前にトライアルや比較をおこなう
    4. 段階的な導入と社内教育をおこなう
    5. 他社事例や専門家の意見を参考にする
  6. 【分野別】代表的なリーガルテック企業
    1. AI契約レビュー分野
    2. 電子契約分野
    3. 契約管理・CLM分野
    4. 法務リサーチ・文献検索分野
    5. 登記・申請・商標出願支援分野
  7. リーガルテックの導入事例
    1. 契約インフラの整備で属人化を解消した事例
    2. 契約書管理と業務効率化を両立した事例
    3. 電子契約の導入でコストと時間を削減した事例
    4. スタートアップがAI契約レビューで法務体制を構築した事例
  8. リーガルテックを正しく理解して、自社に合った活用をはじめよう

リーガルテックとは?

近年、法務業務にテクノロジーを取り入れる「リーガルテック(LegalTech)」が注目を集めています。ここでは、リーガルテックの基本から活用の広がりまで詳しく解説します。

リーガルテックの定義

リーガルテックとは、「Legal(法律)」と「Technology(技術)」を組み合わせた造語で、契約書の作成やレビュー、文書管理、登記・申請、法令リサーチといった法務業務にテクノロジーを活用し、業務の効率化・自動化を図る取り組みのことです。

もともとはアメリカで発展した概念ですが、日本でもコロナ禍や働き方改革、少子高齢化による人材不足などを背景に、企業の法務部門や法律事務所を中心に導入が進んでいます。

なぜ今リーガルテックが注目されているのか?

リーガルテックが注目を集めている背景には、ビジネスのIT化や働き方改革の加速に加えて、法務部門の役割がますます重要になっていることが挙げられます。

とくにコロナ禍以降はリモートワークが急速に普及し、契約業務を非対面で行える電子契約サービスなどのニーズが一気に高まりました。これまで対面でおこなっていた手続きをオンラインで完結できる環境が求められたことで、リーガルテックの活用が広がっています。

また、企業活動では個人情報保護やデータ利活用に関するルールへの対応が複雑化しており、スピーディーかつ正確な法務対応が求められています。しかしながら、日本の多くの企業では法務部門の人員や体制が十分とはいえず、限られたリソースで高い品質を維持する工夫が必要です。

こうした背景から、業務効率の向上だけでなく、コンプライアンス強化や戦略的な法務体制の構築を支援するテクノロジーとして、リーガルテックへの期待が高まっています。

日本と海外におけるリーガルテックの違い

アメリカは、リーガルテックの分野で世界をリードする存在として知られています。契約書レビューにAIを活用したり、大規模訴訟で必要となる「eディスカバリー(電子証拠開示)」の効率化を図ったりと、実務におけるテクノロジーの導入が進んでいます。背景には、判例法主義や証拠開示制度の存在、そして訴訟件数の多さといった、膨大な法的情報の処理が求められるアメリカ特有の事情があります。

一方、日本では訴訟件数が比較的少なく、法制度や商習慣も大きく異なることから、リーガルテックの導入には慎重な姿勢が根強く見られます。現在、主に活用されているのは、契約書管理システムや電子契約、法令検索ツールなど、業務効率化を目的としたツールが中心です。AIの活用範囲もまだ限定的といえるでしょう。

加えて、日本では紙書類や押印文化が根強く残っており、リーガルテックの普及には業務フローや文化的背景そのものの見直しも求められています。

リーガルテックの主なサービス種類

リーガルテックと一口にいっても、その対象となる法務業務は多岐にわたります。ここでは、代表的なリーガルテックサービスの種類とその活用シーンをわかりやすく解説します。

電子契約サービス

電子契約サービスは、契約の締結から管理までをクラウド上で完結できる、リーガルテックを代表するサービスのひとつです。紙の契約書を使用せず、電子署名やタイムスタンプを活用することで、法的な有効性を保ちながら、非対面かつスピーディーに契約業務を進めることができます。

リモートワークの普及やDX推進の流れを背景に、多くの企業で導入が進んでおり、印紙税や郵送費といったコストの削減にもつながっています。また、契約書の保管・検索・分類といった管理機能を備えたサービスも多く、法務部門の業務効率化に貢献しています。

ただし、導入にあたっては、取引先の電子契約対応状況や、対象契約書の電子化による法的効力を事前に確認することが重要です。

契約書のレビュー・作成支援サービス

契約書のレビュー・作成支援サービスは、リーガルテック分野の中でも注目を集めている機能のひとつです。従来、契約書の作成やチェックは法務担当者や弁護士が手作業でおこなっていましたが、AIやテンプレートを活用することで、効率的かつ正確に対応できるようになってきました。

たとえば、AIによるレビュー機能を使えば、契約書とひな形との相違点や不利な条項の有無を自動でチェックし、リスクの指摘や修正案まで提示してくれます。これにより、法務の専門知識が十分でない現場でも、一定水準のリスク管理が可能となります。

さらに、作成支援機能を備えたサービスであれば、ユーザーが質問に答えるだけで契約書のドラフトを自動生成できるなど、法務リソースが限られた企業でもスピーディーに高品質な契約書を作成することが可能です。

文書管理・契約管理クラウド(CLM)

近年、契約業務の効率化やガバナンス強化の手段として「文書管理・契約管理クラウド(CLM:Contract Lifecycle Management)」も注目を集めています。契約書の作成から保管・更新・管理までを一元化できる仕組みで、法務部門に限らず、営業や経理など社内のさまざまな部署での活用が進んでいます。

CLMを導入することで、契約のライフサイクル全体をクラウド上で可視化・自動化でき、属人化の防止や進捗・リスクの一元管理が可能になります。契約書のバージョン管理や期限の自動通知、承認フローの設定、全文検索といった機能も備わっており、煩雑になりがちな契約業務の見落としやミスも抑えることができます。

さらに、基幹システムや既存ワークフローとの連携が可能な製品も多く、企業全体のDX推進にも貢献しています。

申請・出願・登記支援サービス

申請・出願・登記支援サービスは、登記や商標、特許といった各種手続きを効率化するリーガルテック領域のひとつです。これらの業務は定型的な書類作成や提出作業が中心であるため、デジタル化や自動化との相性が非常に高く、近年その導入が進んでいます。

たとえば、画面のガイドに沿って必要事項を入力するだけで、申請書類の作成や提出までを完結できるサービスも登場しています。過去の申請データを活用して書類を再利用できる機能もあり、作業の時短や入力ミスの防止に大きく貢献しています。

なかでも商標登録支援では、類似商標の自動検索や専門家による事前確認など、精度向上を図る機能も充実しています。これにより、知的財産に関わる申請業務の品質を高めつつ、企業の法務リソースをより戦略的な業務に振り向けることが可能になります。

訴訟・紛争対応支援サービス

訴訟・紛争対応支援サービスは、企業や個人が法的トラブルに直面した際に、その解決をテクノロジーでサポートするリーガルテックの領域のひとつです。従来、膨大な手間と時間がかかっていた訴訟準備を効率化・自動化できることから、法務部門の業務負担を大きく軽減する手段として注目を集めています。

主な機能としては、電子データの証拠開示を支援する「eディスカバリ」や、パソコン・スマートフォンなどの機器から証拠を抽出する「デジタルフォレンジック」、本人訴訟を支援する文書作成ツールなどが挙げられます。

近年では、企業内部の不正調査や海外訴訟への対応にも導入が進んでおり、戦略的な法務体制を支えるツールとして活用の幅が広がっています。

法令検索・リサーチ支援ツール

近年、法務業務のデジタル化が進む中で、法令検索やリサーチを支援するリーガルテックツールも注目を集めています。従来は法務担当者が手作業でおこなっていた膨大な法令・判例・ガイドラインの調査を、AIや高性能検索エンジンによってスピーディーかつ網羅的に実行できる点が特徴です。

たとえば、法律書籍や官公庁の資料を横断的に検索できるサービスもあり、短時間で信頼性の高い情報にアクセス可能です。また、特許性の評価をAIが自動でおこなってくれるものもあるため、出願準備の工数削減にも貢献します。

さらに、検索結果はコピー&ペーストやWord形式で出力できるため、そのまま社内文書や報告書に活用しやすい点も魅力です。

法律事務所・弁護士業務支援ツール

法律事務所や弁護士が抱える業務には、案件管理や進捗の把握、膨大な書類の整理など、多くの煩雑なタスクが含まれています。こうした課題を解決する手段として注目されているのが、法律事務所・弁護士向け業務支援ツールです。

これは、法務領域に特化して設計されたITソリューションで、リーガルテックの一分野にあたります。とくに多数のクライアントや訴訟案件を抱える中小~大規模の法律事務所では、案件ごとの情報管理やタスクの可視化といった業務効率化が大きなテーマとなっており、導入ニーズが高まっています。

ツールには、ダッシュボードを通じた案件進行状況の一元管理、クライアント情報やスケジュール・経費の記録、タスクのステータス管理などが搭載されており、業務全体の「見える化」と「自動化」を実現。これにより、作業負担の軽減と生産性の向上が期待できます。

さらに、電子契約サービスやクラウド文書管理ツールと連携させることで、ペーパーレス化やリモートワーク対応といった現代的な働き方にも適しており、属人化のリスクを減らし、組織全体の対応力を底上げできるのもメリットです。

リーガルテックを導入するメリット

ここでは、リーガルテックを導入することで得られる具体的なメリットをくわしく解説します。

業務効率化と生産性の向上

リーガルテックの導入は、法務部門の業務効率化にとどまらず、組織全体の生産性向上にもつながります。

たとえば、契約書の作成やレビュー、法令リサーチといった煩雑な業務をテクノロジーによって自動化・デジタル化することで、作業時間の短縮が可能になります。その結果、法務担当者はより専門性の高い判断業務に集中できるようになり、企業全体の対応力強化にも貢献します。

また、検索機能や進捗管理、期限通知といったサポート機能を活用することで、作業の見落としや属人化を防ぎ、業務の標準化・安定化にもつながります。

コスト削減と印紙税の節約

リーガルテックを導入するもうひとつのメリットが、契約業務にかかるコストを削減できる点です。とくに電子契約を活用することで、印紙税の負担を軽減できる点は見逃せません。

印紙税法では、紙の契約書には所定の印紙を貼付する必要がありますが、電子契約書は「課税文書」に該当しないため、印紙税の対象外となります。たとえば、請負契約書や金銭消費貸借契約書など、本来であれば数百円から数万円の印紙が必要な契約でも、電子化することでその費用を抑えることができます。

また、印刷費や郵送費、保管スペースの確保といった間接的なコストも削減でき、業務全体の経費圧縮につながります。

業務の属人化を防ぎ、標準化を実現

法務業務では、担当者ごとにナレッジや対応履歴が属人化しやすく、特定の人が不在になると業務が滞るリスクが生じます。これは、情報共有の不足に起因しており、組織全体の生産性低下にもつながりかねません。

こうした課題を解決する手段としても注目されているのが「リーガルテック」の活用です。たとえば、契約書の修正履歴や交渉の経緯、チェック項目といった情報をツール上で一元管理できるようになれば、担当者間でのスムーズな引き継ぎや共通認識の形成が可能になります。レビューサービスによっては、条文ごとのコメントや修正理由も残せるため、意思決定の透明性も高まります。

さらに、AIが契約書のレビューや管理を一定の品質で担うことにより、スキルや経験に依存しない業務の標準化が進みます。

法務ナレッジや契約データの資産化

リーガルテックの導入により、契約関連データや法務ナレッジの蓄積・活用も進化しています。従来は、契約書の修正履歴や社内のやり取り、過去の判例・法令といった情報が個別に管理されており、必要なときにすぐ参照できる環境とはいえませんでした。

しかし、契約管理システムやAI法務プラットフォームを活用すれば、契約にまつわる情報を体系的に整理・保存し、必要なときに即座に検索・分析できる体制を構築することが可能になります。

こうした情報を一元管理することで、業務の属人化を防ぎ、ナレッジの再利用性が高まり、業務スピードや意思決定の精度向上にもつながります。

セキュリティ向上とコンプライアンス強化

リーガルテックの導入は、法務業務におけるセキュリティ対策とコンプライアンス管理の強化にも貢献します。

たとえば、電子契約や契約ライフサイクル管理システム(CLM)を活用することで、アクセス権限の細分化や操作ログの記録といった高度な情報管理が可能になり、不正アクセスや情報漏えいのリスクを抑えられるようになります。

また、AIを活用したコンプライアンスチェックツールを導入すれば、最新の法規制に基づいたリスクを自動で検出できるようになり、人手によるチェックに依存しない監視体制の構築も実現可能です。これにより、属人的な対応から脱却し、より透明性の高い運用が期待できます。

さらに、GDPRや個人情報保護法といった国内外の法令への対応も強化され、企業全体としてのガバナンスレベルを底上げする効果も見込めるでしょう。

リーガルテックを導入するデメリット

リーガルテックは法務業務の効率化やリスク管理の強化に役立つ一方で、導入に際しては注意すべき点も少なくありません。ここでは、リーガルテック導入に伴う主なデメリットや注意点を解説します。

導入コストと運用負担が発生する

リーガルテックの導入にあたっては、初期費用や月額利用料などのコストが発生する点に注意が必要です。とくに法務専任者の少ない中小企業では、導入による効果と負担のバランスを慎重に見極める必要があります。

また、ツールを導入しただけではすぐに効果が得られるとは限りません。社内の業務フローを見直したり、関係部署との連携体制を整えたりする必要があり、従業員への操作研修やマニュアル整備といった追加の負担も発生します。既存の業務体制を大きく変える場合は、現場に定着するまでに時間がかかるケースも少なくありません。

こうした課題を乗り越えるには、まずはスモールスタートでの試験導入やトライアル期間を設けるのがおすすめです。

取引先との連携や理解が必要になる

リーガルテックを導入する際は、社内の体制整備だけでなく、外部の関係者である取引先などとの連携も欠かせません。たとえば、電子契約サービスを導入した場合でも、取引先が電子契約に対応していなければ、紙の契約書と併用せざるを得ず、契約管理が煩雑になる可能性があります。

また、操作性への不安やセキュリティ上の懸念から、電子契約そのものを受け入れない企業も一定数存在します。実際、JIPDECの調査によると電子契約の普及率は7割を超えているものの、すべての企業が導入しているわけではないのが現状です。

そのため、リーガルテックの導入にあたっては、自社の業務フローに適合させるだけでなく、主要な取引先の導入状況や方針も事前に把握しておくことが重要です。

参考:一般財団法人 日本情報経済社会推進協会「IT-Report 2023 Spring」

セキュリティリスクと情報漏えいの懸念

リーガルテックの導入は法務業務の効率化に貢献する一方で、セキュリティリスクや情報漏えいといった課題にも注意が必要です。とくにクラウドベースの契約管理や文書共有システムでは、不正アクセスやデータの流出、さらには内部不正といったリスクが常に存在しています。

こうしたリスクに備えるには、アクセス権限の細分化や、通信・保存データの暗号化、操作ログの記録・監視といったセキュリティ対策を徹底することが重要です。また、導入を検討する際には、サービス提供事業者のセキュリティ体制やISO27001などの国際認証の取得状況も事前に確認しておくと安心です。

さらに、誤操作やデータの持ち出しといったヒューマンエラーを防ぐためには、社内教育の強化や情報管理ルールの整備も欠かせません。セキュリティ対策が不十分なまま導入を進めてしまうと、かえって企業の信頼性やコンプライアンスを損なうリスクがあります。

トラブル発生時の対応ルールが求められる

リーガルテックは業務効率を高める一方で、システム障害や契約書の誤送信、データ消失など、予期せぬトラブルが発生した際の対応体制が整っていないと、かえってリスクを拡大させるおそれがあります。復旧対応や責任の所在が曖昧なままだと、業務の停滞や取引先からの信頼低下にもつながりかねません。

こうした事態を防ぐには、導入前後のトラブル発生時に対応するフローを構築し、備えておくことが重要です。たとえば、バックアップ体制や復旧手順の整備、緊急時の連絡体制の確保に加えて、社内規定での責任分担の明文化が欠かせません。

リーガルテックを有効に活用するには、日常の運用だけでなく、万が一に備えたリスク対応ルールの整備もセットで進める必要があります。

一部業務には非対応なケースもある

リーガルテックは、契約書レビューや電子契約などの定型的な法務業務の効率化に大きく貢献する一方で、すべての業務を自動化できるわけではありません。

たとえば、企業独自の商慣習に基づく非定型の業務や、社内外の調整・交渉といった人的な判断や対応が求められる場面では、テクノロジーによる完全な代替は難しいのが実情です。

また、リーガルテックツールはそれぞれ機能や対応範囲に違いがあるため、目的に応じて複数のツールを併用せざるを得ないケースもあります。その結果、ツール間での連携や情報管理が煩雑になり、かえって業務効率を損なってしまう可能性も否定できません。

こうした特性を踏まえ、リーガルテックの導入に際しては「自社のどの業務にテクノロジーが有効か」を見極めることが不可欠です。

リーガルテックの導入を成功させるためのポイント

リーガルテックは、法務業務の効率化やコンプライアンス強化に大きな効果をもたらしますが、導入すればすぐに成果が出るわけではありません。ここでは、リーガルテックを効果的に導入し、現場に定着させるための具体的なポイントをご紹介します。

導入目的と課題を明確にする

「なぜ導入するのか」「どのような課題を解決したいのか」を明確にすることが重要です。たとえば、「契約書レビューの時間を短縮したい」「属人化を解消したい」といった具体的な目的を定めることで、自社にとって必要な機能やサービスの方向性が見えてきます。

また、課題を正しく捉えるためには、現在の業務フローを可視化し、どこにボトルネックがあるのかを丁寧に洗い出すことが重要です。目的や課題が曖昧なままでは、導入後に「機能が使いこなせない」、「期待した効果が出ない」といったミスマッチが起こるおそれがあります。

必要な機能と利用部門を整理する

リーガルテックの導入効果を最大限に引き出すには、自社にとって「本当に必要な機能は何か」、「どの部門がどのように活用するのか」といった点を事前に明確にしておくことも大切です。

たとえば、契約書の作成やリーガルチェックは法務部門が担う一方で、実際の契約交渉や提出は営業部門が担当するケースも珍しくありません。こうした部門ごとの役割を整理したうえで、それぞれに求められる機能を洗い出すことが、導入後の業務フローをスムーズに構築するうえで欠かせないステップとなります。

あわせて、必要機能の洗い出しに着手する際は、まず現行の業務フローを棚卸しし、課題や非効率が生じているポイントを見極めましょう。そのうえで、既存のシステムやツールとの連携可否、情報システム部門の要件なども確認しておくと、導入後の混乱を避けることができます。

導入前にトライアルや比較をおこなう

リーガルテックを導入する際は、サービスの導入効果を最大化するためにも、事前の比較・検討が欠かせません。とくに操作性や機能が自社の業務に適しているかを見極めるには、実際に使ってみることが最も確実です。

多くのリーガルテックサービスでは、無料トライアルやデモ版が提供されています。導入後のギャップを防ぐためにも、現場の実務を担う担当者が自ら試用し、業務との親和性や使用感を丁寧に確認しておくことが重要です。

比較の際は、操作性だけでなく、価格体系やサポート体制、既存の社内システムとの連携可否といった点にも着目しましょう。複数サービスのスペックや利用条件を一度に比較できる資料や比較サイトを活用するのも効果的です。

こうしたトライアル期間を通じて使用感や機能性を見極めておくことが、リーガルテックを無理なく業務に取り入れるための第一歩となります。

段階的な導入と社内教育をおこなう

リーガルテックの導入を成功させるには、いきなり全社的に展開するのではなく、まずは小規模な範囲からスタートする「段階的な導入」が効果的です。たとえば、特定の部署や契約書の種類に絞って試験導入を行えば、現場の混乱を避けつつ、自社業務との適合性や実際の効果を見極めることができます。

また、導入にあたっては従業員への操作研修やガイドラインの整備も欠かせません。ツールの使い方だけでなく、その目的や利便性に対する理解を深めてもらうことで、現場での活用が進みやすくなります。

さらに、法務部門だけでなく、関連する部署も巻き込んだ教育体制やフィードバックの仕組みを初期段階から構築することが重要です。

他社事例や専門家の意見を参考にする

リーガルテックの導入を成功させるには、他社の取り組み事例や専門家の意見を積極的に取り入れることも重要です。業種や企業規模が近い事例を参考にすれば、自社の課題に合った導入のポイントや運用時の注意点を具体的に把握できます。

あわせて、弁護士や法務コンサルタントといった専門家の知見も有益です。中立的な視点から業務課題を整理し、最適なツールの選定や導入プロセスを設計するうえで、大きな助けとなります。

リーガルテックは「導入すること」自体が目的ではなく、あくまで「業務改善の手段」なのです。

【分野別】代表的なリーガルテック企業

リーガルテックは法務業務の効率化やリスク管理を支援するツールとして、さまざまな分野で活用が進んでいます。ここでは、リーガルテックの分野ごとに代表的な企業と提供サービスの特徴を整理し、自社に合った選定の参考になる情報を紹介します。

AI契約レビュー分野

近年、契約業務の効率化とリスク管理の両立を目的に、「AI契約レビュー」への注目が高まっています。AI契約レビューとは、契約書のチェックやコンプライアンス対応といった煩雑な業務を自動化・効率化するリーガルテック分野のひとつで、属人化や法務リソースの不足といった課題の解決に貢献します。

現在では、法務部門を中心に企業規模を問わず導入が進んでおり、とくに中小企業にとっては、法務体制を整えるうえで有効な選択肢となっています。条文のリスク検知やチェック基準の標準化により、契約実務の質的向上にもつながる点がメリットです。

以下では、AI契約レビューを手がける代表的な企業とその提供サービスを比較し、それぞれの特徴を一覧でご紹介します。

企業名提供サービス主な特徴
LegalOn TechnologiesLegalOn Cloud・契約書の自動レビュー機能・条文リスクの検出と修正提案・条文例との比較支援
GVA TECH株式会社OLGA・契約レビューから作成・管理まで対応・法務業務全体のDXに貢献
株式会社リセLeCHECK・弁護士監修の契約書ひな形を多数搭載・正確かつ高速なAIレビューが可能
FRICTIONLESS合同会社独自AIエンジン搭載・自然言語処理を活用した独自エンジン・属人性の排除とレビュー品質の標準化を実現

これらのサービスは、専門知識がない現場担当者でも一定レベルの契約チェックが行える仕組みを提供しており、実務の負担軽減とスピードアップの両立が期待できます。

電子契約分野

契約の締結や管理をオンライン上で完結できる「電子契約サービス」の導入も、企業のDX推進やコスト削減に貢献しています。とくに、紙の契約書に依存せず、クラウド上で契約を締結・保管・管理できる仕組みは、業務効率化と法令対応を両立できる手段として注目を集めています。

以下に、電子契約分野で注目されている代表企業とサービスの特徴を一覧にまとめました。

企業名提供サービス主な特徴
GMOグローバルサイン・HD株式会社GMOサイン・全国の自治体でも採用実績あり・高いセキュリティ水準と電子印鑑機能を提供
株式会社マネーフォワードマネーフォワード クラウド契約・会計・経費・人事と連携可能・バックオフィス全体の業務効率化に寄与
株式会社jinjerjinjerワークフロー・雇用契約の電子化に強み・人事SaaSと連携し、ペーパーレスと業務一元化を実現
freee株式会社freee人事労務(契約機能含む)・中小企業向けの統合型プラットフォーム・給与・勤怠・契約管理を一体化して提供
株式会社インフォマートBtoBプラットフォーム契約書・契約書から請求書・発注書までの一元管理に対応・企業間ネットワークを活かした多業種連携

クラウド型の電子契約サービスは今後も法改正や企業のDXニーズとともに進化が期待されており、導入を検討する企業にとっては、自社業務との親和性や他システムとの連携可否が選定のポイントとなるでしょう。

契約管理・CLM分野

契約業務の効率化と法務体制の強化を両立させる手段として、「契約管理・CLM」分野のリーガルテックツールも注目されています。契約書の作成からレビュー、締結、更新、管理までを一元化し、属人化の防止やコンプライアンス対応を支援できる点が評価されています。

以下では、代表的な契約管理ツールを提供する企業とその特徴を以下の表にまとめました。自社の契約フローや管理体制に適したサービス選定の参考にしてください。

企業名提供サービス名主な特徴
株式会社ContractSContractS CLM・契約業務の全工程を一元管理・柔軟なワークフロー設計と情報集約により、属人化を防止
株式会社LegalOn TechnologiesLegalOn Cloud・AIを活用した契約レビュー・管理機能を搭載・法務DXを推進する統合型プラットフォーム
株式会社リセLeCHECK/LeFILING・弁護士監修のテンプレートとAIチェック機能を備え、契約書のレビューと管理を効率化
ドキュサイン・ジャパン株式会社DocuSign CLM・電子署名との連携を軸に、契約ライフサイクル全体の可視化・自動化を実現・グローバル対応も充実
株式会社LegaledgeLegaledge・契約データの自動解析、構造化、検索に対応・条文単位でのナレッジ管理に特化

これらのサービスは、単なる業務効率化にとどまらず、契約リスクの可視化やナレッジ資産の蓄積といった面でも価値を発揮します。

法務リサーチ・文献検索分野

法務実務の効率化やナレッジ活用の高度化を目的にした場合でも、リーガルリサーチを支援するクラウド型サービスの導入が進んでいます。従来は紙の資料や複数のデータベースを横断して調査をおこなう必要がありましたが、最新のリーガルテックサービスでは法令・判例・実務書籍などを一元的に検索・閲覧できる環境が整いつつあります。

各サービスの概要は以下のとおりです。

企業名提供サービス名主な特徴
株式会社Legal TechnologyLEGAL LIBRARY・法律専門書、官公庁資料をデータベース化・横断検索により効率的なリサーチが可能
株式会社Legal Technology丸善リサーチ・会計、税務専門書を網羅した読み放題サービス・実務家による定期的な調査業務を支援
弁護士ドットコム株式会社LEGAL BRAIN・AIを活用した法律相談チャットやナレッジ提供により、調査や判断をサポート

法務リサーチの業務は、制度改正への対応や紛争リスクの事前把握など、企業活動のあらゆる場面で重要な役割を担います。

登記・申請・商標出願支援分野

会社設立や登記変更、知的財産の出願といった法務関連の手続きは、煩雑で専門性が求められる業務のひとつです。こうした業務を誰でもかんたんに進められるよう支援するリーガルテックサービスが登場し、法務の効率化を後押ししています。

たとえば以下のサービスは、法務部門の人手不足や申請ミスの防止にもつながり、企業法務の高度化を支える存在となっています。

企業名提供サービス名主な特徴
GVA TECH株式会社GVA 法人登記・商業登記の書類作成をWeb上で自動化・法務局に行かずに申請まで対応可能
GVA TECH株式会社GVA 登記簿取得・登記事項証明書のオンライン取得サービス・365日24時間いつでも申請可能
株式会社Legal TechnologyLEGAL LIBRARY・法令・判例・実務書籍を横断検索できるクラウド型リサーチサービス・商標出願前の事前調査にも活用可能

リーガルテックの導入事例

リーガルテックの導入は、契約業務の効率化やコンプライアンス強化を実現する効果的な手段として、多くの企業で進められています。ここでは、実際の企業がどのようにリーガルテックを導入し、どのような効果を得たのかを具体的に紹介します。

契約インフラの整備で属人化を解消した事例

契約業務の効率化や属人化の解消を目的として、CLMツールの導入が進んでいます。ある製造業の中堅企業でも、契約書の作成や管理が特定の担当者に依存していたことで、担当者が不在の際には業務が滞るリスクを抱えていました。

そこで同社では、契約書の作成から管理・更新までを一元化できるCLMツールを導入。契約の進捗がリアルタイムで可視化されるようになり、自動通知機能により関係者間の情報共有もスムーズになりました。こうした仕組みによって、業務の属人化を大きく解消することができたのです。

さらに、契約書ごとの修正履歴や承認フローもツール上で一元管理できるようになり、担当者の交代時にもスムーズな引き継ぎが可能に。結果として、社内の法務業務全体の透明性と効率性が飛躍的に向上しました。

契約書管理と業務効率化を両立した事例

あるスタートアップ企業では、契約書の保管場所が社内に点在していたことから、過去の契約内容を確認する際に毎回30分以上を要するという非効率な状況にありました。そこで同社は、AIによる全文検索機能や自動台帳登録に対応した契約書管理システムを導入。既存の電子契約サービスと連携することで、契約締結後の書類は自動で格納されるようになり、検索時間はわずか1〜2分に短縮されました。

さらに、更新期限の自動リマインドや関連契約との紐づけ機能も活用することで、契約管理業務全体の効率と正確性が大幅に向上。少人数体制でも属人化を避けながら高い管理品質を実現した事例として、業務の見える化を目指す企業にとって参考になります。

電子契約の導入でコストと時間を削減した事例

ある医療関連企業では、契約書の押印や郵送にかかる手間やコストが長年の課題となっていました。とくにリモートワークの普及により、紙ベースでの契約業務は非効率さが目立つようになり、締結までに2〜3週間を要するケースも珍しくありませんでした。

こうした背景を踏まえ、同社は電子契約サービスの導入を決断。PDF形式で作成した契約書に電子署名とタイムスタンプを付与することで、オンライン上での締結を可能にしました。

その結果、契約完了までのリードタイムは3〜4日以内に短縮。印紙税や郵送費といったコストも削減され、業務のスピードと効率が大きく向上しました。さらに、契約書の期限管理にはアラート機能を活用することで、締結後のフォロー体制も強化されています。

スタートアップがAI契約レビューで法務体制を構築した事例

あるスタートアップ企業では、これまで法務専任の担当者を設けず、契約書の作成や確認を各部門が個別に対応していました。その結果、契約条件の見落としや業務対応のばらつきが生じ、法務リスクの管理が大きな課題となっていたのです。

そこで同社は、AI契約レビューサービスを導入。自社ひな形との条文比較機能やリスクの自動検出機能を活用することで、法務知識が十分でない担当者でも一定の品質で契約書をチェックできる体制を構築しました。

さらに、契約書の自動保存や更新期限のアラート機能も取り入れることで、契約業務の属人化を防ぎ、作業時間の短縮とリスクの早期把握を同時に実現しています。

リーガルテックを正しく理解して、自社に合った活用をはじめよう

リーガルテックは、契約業務や法令リサーチ、申請支援など法務業務全体の効率化・標準化を実現する革新的な手段です。AIやクラウドといったテクノロジーを活用することで、少人数の法務体制でも高い業務品質を維持でき、属人化やリスクの見落としを防ぐ体制が構築できます。

とはいえ、自社に最適なツールを選び、現場に定着させるには戦略的な判断が求められます。そこでおすすめしたいのが、オープンイノベーションを支援する「ILS(イノベーションリーダーズサミット)」の活用です。協業実績のある大企業とスタートアップの成功事例やマッチングの最短ルートを無料レポートで確認でき、個別相談会も開催されています。リーガルテックを自社に最適な形で導入する第一歩として、ぜひ活用してみましょう。


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著者
ILS事務局

アジア最大規模のオープンイノベーションのマッチングイベント「Innovation Leaders Summit(ILS)」を開催。
ILSとは、大手企業のアセットとスタートアップのアイデアやテクノロジをマッチングし、グローバルイノベーションを生み出すことを目的に経済産業省後援のもと発足したプロジェクト。
毎年12月初旬に開催する事業提携マッチングプログラム「パワーマッチング」は、国内外の主力VCなどで構成する約100名のILSアドバイザリーボードが推薦する国内外の有望スタートアップ&研究室800社と大手企業100社が参加。毎回3000件の商談が行われ、約3分の1が協業案件となるアジア最大級のオープンイノベーションカンファレンス。

主催: イノベーションリーダーズサミット実行委員会(SEOU会、ドリームゲート/株式会社プロジェクトニッポン)
後援: 経済産業省/新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)/日本政策金融公庫
運営: 株式会社プロジェクトニッポン

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