シリコンバレーで2社のユニコーン輩出に携わったギャリー・ファウラー氏直伝「成功するグローバルスタートアップを作る3つのマインド」

グローバルスタートアップの作り方

読者の皆様もご存知の通り、スタートアップは長い間、技術開発やイノベーションの原動力となってきました。世界中でイノベーション創出の試みは加速しており、スタートアップ企業やユニコーン企業の数は急増しています。

これまでイノベーションの文脈では、ソフトウェアエンジニアリング、ハードウェアエンジニアリング、ビジネスデベロップメントの専門知識を用いた製品やサービスを通して、ユーザーに新たな価値を提供することが「成功の鍵」だと言われてきました。これは間違いありません。

しかし、見落とされがちなのが、スタートアップを成功させるために必要なソフトスキルの重要性です。これは、「ハード」なスキルや専門知識の開発を推進する従来の学術的な方法では、開発が困難なスキルを示しています。

そこで、前回のコラム「シリコンバレーでユニコーンを2社創出したシリアルアントレプレナーを直撃インタビュー」に引き続き、シリコンバレー在住のシリアルアントレプレナーで、ご自身も2社のユニコーン企業の成長に貢献されたギャリー・ファウラー氏に成功の鍵を教えて頂きました。

前回のコラムでは「ユニコーン企業創出の鍵」について伺いましたが、本コラムではその前段階の「成功するグローバルスタートアップを作る3つのマインド」についてお伝えしています。読者の皆様にとって参考になれば幸いです。

成功するグローバルスタートアップを作る3つのマインド

長期的にスケールアップして成長できるスタートアップを設立するためには、成功へと導く3つの重要な要素の組み合わせが必要です。それは、Visualization(可視化)、Passion(情熱)、Optimism(楽観)です。

ここでは、スタートアップのアイデアを実現するためのソフトスキルの優先度を理解するのに役立つ、段階的な行動計画をご紹介します。

Visulalization (可視化)

スタートアップの創業者は、単に製品を見事に作り上げることができる専門家ではありません。起業家は、スタートアップがどこに向かっているのか、ゴールは何なのか、そして将来的にスタートアップがどのようにしてその地点に到達できるのかといった、道筋や未来を可視化できるビジョナリーである必要があります。つまり、スタートアップを成功させるための最初のステップは、会社がどこに向かっていくのか、顧客にどのような価値を提供したいのか、明確な心象風景を描くことなのです。

ある意味、スタートアップは「信じれば実現する」という自己実現的な予言のようなものと考える必要があります。他の自己実現的予言と同じように、起業家は自分の事業の将来的な成功を予測する必要があります。そして、スタートアップ創業者が、実際にその予測を実現するために必要なステップをこなしていくことで、スタートアップの成功に対する信念が確固たるものになります。成功への確固たる本物の信念が、潜在意識のレベルでスタートアップの成功を実現するための行動に影響を与えるのです。

見落とされがちですがさらに重要なことは、将来のユーザーやスポンサーなどに自分と同じ信念を持ってもらうために、明確なビジョンを伝えることができるかどうかです。多くの場合、ハードスキルや知識を使ってスタートアップを作ることができるだけでは不十分です。ソフトスキルの力によって、スタートアップの価値に対する信頼と確信を他の人々に伝染させ、成功への道を切り開くことができるのです。

Passion(情熱)

自分がやっていることが好きである必要があります。

モチベーションを高く保ち、より一層の努力を促すためには、楽観主義が重要です。しかし、自分が「何のために戦っているのか」その戦い自体を愛していなければ、どんな起業家も楽観的でいられず、人々を鼓舞することはできません。

収益を上げやすいスタートアップを目指すことが賢い選択だと思い込むことと、好きなことで実験的挑戦をし、経済的な利益を得ながら世の中の人々のために価値を生み出すことにコミットするのとでは大きく違います。

スタートアップの立ち上げは、多くの点で子育てに似ています。それは大きなコミットメントであり、長期的に取り組むことになります。だからこそ自分が関心を持ち、情熱を持って取り組めることに自分の時間とエネルギーを注ぐことが重要なのです。

情熱は、将来の投資家やユーザーの目に起業家としての信頼性を高めるものでもあります。伝染性のある熱意は、他の人を自分のアイデアの確固たる信奉者に変え、スタートアップチームを接着剤のようにまとめ、苦難や複雑な状況にあっても仕事に励む楽観主義に火をつけるのです。

Optimism(楽観)

半分まで水が入ったグラスを見て、「グラスには半分しか水がない」と思うのではなく、「グラスには半分も水が入っている」と信じることが必要です。

残念ながらほとんどのスタートアップが失敗に終わる世界では、成功確率がわずかだったとしても、楽観的に起業活動を続けることが重要です。

スタートアップの成否は、資金調達、キャッシュフロー、投資、損益など、純粋に財務的な要因に大きく左右されます。お金は大切ですがそれだけでは成功の原動力にはなりません。

むしろ、経済的苦難を乗り越え、チームメンバーの精神を支えてくれるのは「希望」です。自分たちのスタートアップが成功し、大きく成長するという希望を持ち、アイデアの価値を人々に認めてもらうことが重要なのです。

ギャリー・ファウラー氏について

プロフィール

Gary Fowler

President, CEO and Co-Founder, GSD Venture Studios

www.gsdvs.com

17社の企業と2社のユニコーン企業の経営に携わり、IPOの成功経験も持つ、数々の賞を受賞したシリアルアントレプレナー兼投資家。セールスフォースに13億5000万ドルで売却されたクリックソフトウェアのオリジナルマネジメントチームの一員であり、受賞歴のあるAI企業Yva.aiの共同設立者でもあります。現在は、30年以上のビジネス経験をもとに、GSD
Venture StudiosのCEO兼社長を務めています。

シリコンバレーに拠点を置くGSD Venture Studiosは、企業の運営上の役割を担い、その広大なグローバルネットワークと経験を活かして、企業がチャンスを最大限に活用するための支援をしています。
他にも、90以上の記事の執筆、グローバルAIエグゼクティブのトップ10への選出、講演者としても国際的に活躍するなど、精力的に活躍している。

関連情報

・今回のインタビューの原文(英語)は、以下のリンクにてご覧ください。

https://gafowler.medium.com/three-key-factors-for-global-startup-success-64b297fc04af

・前回のコラムシリコンバレーでユニコーンを2社創出したシリアルアントレプレナーを直撃インタビュー」では、ギャリー・ファウラー氏にユニコーン企業の創出について伺いました。以下のリンクにてご覧ください。

https://www.dreamgate.gr.jp/contents/column/interview-with-a-serial-entrepreneur

・ギャリー・ファウラー氏の番組「Silicon Valley Tech&AI」に、シリコンバレーベンチャーズCEOの森若幸次郎が生出演し、Entrepreneurship for Global
Innovationをテーマに対談を行いました。

対談の様子が、YouTubeにアップされております。以下のリンクにてご覧ください。

https://youtu.be/39R-oBsV8A0

著者
John Kojiro Moriwaka(森若 幸次郎)

世界と日本を繋ぐイノベーションプロバイダー、ゼブラ企業経営者、Nextユニコーン支援者、講演家、英語司会者、コラムニスト

株式会社シリコンバレーベンチャーズ 代表取締役社長兼CEO
株式会社モリワカ 専務取締役兼CIO
情報経営イノベーション専門職大学 客員教授
Startup GRIND Fukuoka ディレクター
Startupbootcamp Scale Osaka メンター
など多数

19歳から7年半単身オーストラリア在住後、ハーバードビジネススクールにてリーダーシップとイノベーションを学ぶ。約6年間シリコンバレーと日本を行き来するだけではなく、近年はイスラエル、インド、フランスなど世界中のスタートアップエコシステム10カ国以上を訪れ、英語での高い交渉力を活かし、グローバルスタートアップや大企業支援を行う。「日本各地でのスタートアップエコシステムの構築方法」や「どのように海外スタートアップと協業しオープンイノベーションを起こすか」を講演やコラム等を通じて発信。国内外アクセラレーター支援、ピッチ指導(英語・日本語)も行う。

著書「ハーバードのエリートは、なぜプレッシャーに強いのか?」

趣味:ラップ(Gifted名義で「Down Wiz Us(feat. Dirty R.A.Y.)」をリリースし、全国ダウンロード第一位)、絵画、詩、社交ダンス、将棋、家族との時間

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