ILSは、リアルでの対面が前提のイベントであり、短期間で深い議論が行えます。また、一般的な展示やイベントと異なり、ハードウェアや社会インフラといった骨太なテーマに取り組むスタートアップが多い点も特徴ですね。複数回参加することで、宇宙系の増加などスタートアップのトレンド変化も把握できるので、今後も継続的に活用したいと考えています。
公開日:2026年6月 / 執筆:ILS事務局
新明和工業株式会社は2024年12月のILS2024で、自走式ロープウェイ型都市交通システム「Zippar」を開発するZip Infrastructure株式会社に商談をリクエスト。タワーパーキングの設計・製造を行う事業部門を中心に連携の模索を経て、2026年2月に資本業務提携を締結。同システムを構成する要素である「車両基地」「充電設備」について、パーキングシステム事業で培った建築・機械技術および保守点検技術を活かし、構想段階から技術的に支援を行っている。
働く車や駐車設備、産業機械、水インフラ、航空機などの事業を通して社会インフラを支えるBtoBメーカーである新明和工業では、自社のアセットを生かせる新たな事業テーマ探索を進めており、ILSには2023年より参加。
従来は物流などを中心に検討しており、都市交通分野は明確な対象ではなかったが、外部のスタートアップとの接点を通じて新規領域の可能性を広げたい意図があった。パーキングシステム事業部では、新たに新規事業担当となった佐竹氏がILS2024に向け、スタートアップのデータベースを活用して「都市・環境・輸送」といったキーワードで探索を行う中でZip Infrastructureを探し出した。
商談リクエスト時点では具体的な協業構想まではなく、まずは技術や課題について話を聞いてみたいという意識だった。「Webサイトを見ただけで、渋滞問題やドライバー不足などの社会課題を解決したいという熱意が強く感じられました。その構想の実現に向けて、当社技術が何かしら役立つのではないかと思ったんです(佐竹氏)」
2018年創業のZip Infrastructureは、世界の都市部で多くの経済損失を生む渋滞問題の解決に向け、「ロープウェイ×EV」という既存の技術や製品の組み合わせによる次世代交通システムを開発している。
同社のZipparは従来モノレールの約1/5のコストで作れ、路線のカーブや分岐が可能なため柔軟に設計できる。自動運転なので運転手も不要。2023年4月には12人乗りテストモデル車両の走行を成功させており、今後、都市交通インフラという大規模かつ複合的な事業を推進するにあたり、設計・建設・周辺設備など多様な領域で大企業との連携が不可欠なため、ILSに参加した。同社の事業はインフラ全体の構築を伴うため、スタートアップ単独では開発・社会実装に限界があり、初期段階からパートナーを確保することが重要。
「これまでも戦略的に、まちづくりを志向するエネルギー会社や、交通インフラに強みを持つ総合建設コンサルタントなどと、資本提携を含めて連携してきています(河邉氏)」。また、将来的な公共交通としての社会実装が2030年代と長期に及ぶことから、その時間軸を理解し共に取り組める企業との出会いを得ることも重要な狙いであった。
両社の協業は、2024年12月のILSでの出会いを起点に進展した。当初、新明和工業は具体的な協業アイデアまでは描けていなかったが、対話を重ねる中でZip Infrastructure(以下、Zip)の事業においては、車両本体だけでなく格納・整備・充電といった周辺インフラの重要性が明確になった。
特にZip側が構想していた立体的な車両格納設備と、新明和工業が保有する機械式駐車設備およびEV充電技術が高い親和性を持つことが判明し、協業の方向性が具体化した。その後、新明和工業社内ではボトムアップで検討が進められた。ILS直後から特装車や航空機など他部門も巻き込んだ検討を実施。2025年初頭にはZip側を招いた説明会を開催し、技術的な議論や工場見学などを通じて理解を深めた。「基本的には各部門のビジネス側の担当者が集まって、ディスカッションを重ねました(佐竹氏)」。
一方で、複数部門での検討は時間を要し、最終的にはパーキングシステム事業部が主導する形で先行的に協業を進める判断がなされた。事業部内の計画に本案件を組み込み、事業部長への説明を実施。業務提携の内容は、まずは多台数充電設備の開発・提供を軸とし、将来的には車両格納設備全体への展開を視野に入れるものである。加えて、Zip側からの要請を受ける形で資本参加も実施された。新明和工業社内での稟議プロセスや社内調整には一定の時間を要したが、事業性や社会的意義が評価され、最終的にはトップ承認に至った。
2026年2月に資本業務提携契約を締結し、現在は具体的な設備設計に着手するフェーズに移行している。「空港ターミナル内などの大規模施設での移動手段など、まずは私有地での展開を構想しています(河邉氏)」
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ILSは、リアルでの対面が前提のイベントであり、短期間で深い議論が行えます。また、一般的な展示やイベントと異なり、ハードウェアや社会インフラといった骨太なテーマに取り組むスタートアップが多い点も特徴ですね。複数回参加することで、宇宙系の増加などスタートアップのトレンド変化も把握できるので、今後も継続的に活用したいと考えています。
当社のようなインフラ系で協業先が限られるスタートアップにとって、ILSは有力な大企業と効率的に出会える貴重な場です。特に、長期的な事業にも理解を示してもらえる企業と接点を持ちやすいと思います。参加のたびに新たな出会いや発見があり、当社のような複雑な事業においても具体的なパートナー形成につながる実効性の高いプログラムといえます。
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