×
事例一覧 > Partisia x Digital Platformer

提携事例

フィンテックセキュリティ先進国デンマークのスタートアップと業務提携、合弁会社を設立しフィンテックソリューションでの欧州進出を目指す

公開日:2024年9月11日 / 執筆:ILS事務局

Digital Platformer株式会社とデンマークのPartisiaは、金融セキュリティおよびプライバシー保護に焦点を当てたフィンテックアプリケーションの開発のため業務提携した。両社は日本市場において、Partisiaが持つ秘密分散,MPC(※)などの技術と、分散型IDを中心とするDigital Platformerの専門技術を統合。今秋にも欧州で合弁会社設立を予定している。

※ 秘匿マルチパーティ計算(MPC:Secure Multi-Party Computation)

Digital Platformerの背景と狙い

Digital Platformerは「お金の移動コストと移動時間をゼロにする」「DID/VC(※)の基盤を世界中に広める」という2つのミッションに基づき、ステーブルコインとIDの基盤を提供している。これまで、DID/VC基盤の展開においてブロックチェーンの秘密鍵管理等のユーザビリティの改善およびセキュリティの強化は重要課題であった。「今回のPartisiaとの提携によりこれらの課題を解決できると期待しています。本提携により、DID/VCにおけるトッププレーヤーとしての立ち位置を一層強化し、さらに欧州をはじめ海外にも展開したいと考えています」(松田氏)

※ DID/VC…(Decentralized Identifiers/Verifiable Credentials)中央集権的IDシステムのリスクを回避し、ユーザーが情報を分散保管・管理できる技術。

同社の松田CEOは欧州の状況なども踏まえながら、「情報を個人が管理する世界を私どもは作ろうと考えています。こうした中で、Partisiaが正にその根幹を作ろうとしていることが今回分かりました。それであれば、両社で何か一緒にできることはないかと考えたのがきっかけです」と明かす。

松田氏はILSアドバイザリーボードという立場でVCマッチング(※1)に参加してPartisia社と出会い、同氏の投資先でありCEOも務めるDigital Platformer社との相性の良さに着目し、ILS当日に訪日したPartisia社と対面商談を果たした。「Partisiaが取り組んでいる秘密分散やMPC(※2)、マルチパーティコンピューティングという技術は、今後ブロックチェーンの世界のみならず、セキュリティの世界でも重要になると思い、これらの開発力があるPartisiaと連携することは大変有意義だと感じました」(松田氏)という。

  • ※1)ILSにスタートアップを推薦する「アドバイザリーボード」の中で、その年により多くのスタートアップを推薦した一部のVCだけが特別に参加できるスタートアップとのマッチングシステム。
  • ※2)秘匿マルチパーティ計算(MPC:Secure Multi-Party Computation)

Partisiaの背景と狙い

Partisiaは、在日デンマーク大使館からの推薦を受けてILSに参加し、同社が持つ新しいテクノロジーが活用できる日本市場についてILSを通じて探っていた。Partisiaの取り組みは金融業界にとって画期的であり、銀行がリアルタイムに詐欺を検出するだけでなく、将来起こりうる詐欺行為を予測することも可能になる。これにより、セキュリティに関わる莫大な時間とコストを抑えることもできる。

同社は日本市場において、秘密分散に関する技術やMPCといった技術が必要になることを見越して、「それらの技術を実証実験としてではなく、実際に現場レベルで実装できるパートナーをこれまで探していた」(Mark氏)という。そして、日本市場へ参入する際には、日本にパートナーが必要だと考えていた。

PartisiaのMark氏は「Digital Platformerという日本企業が我々の価値創出について理解し、日本市場の開拓をうまくナビゲートしていけることは、我々の事業にとって素晴らしい機会となりました」と話す。そして、「日本市場に対する理解と、欧州側の規制や市場に対する我々の理解を組み合わせ、まったく新しい技術を市場に浸透することで、相互に利益を得ることができる組み合わせが実現しました。これは、素晴らしいことです」(Mark氏)。

提携内容

Partisiaは、世界をリードする暗号学者によって共同設立され、産業・金融分野でプライバシー保護を保証するMPCソリューションで、高度な暗号化技術を持つ世界的な先駆企業である。本提携により、分散型IDを中心とするDigital Platformerの専門技術を統合することによって、リアルタイムで取引データやプライバシー保護の機密性と透明性を両立する環境提供や、行動分析などによる金融詐欺予測を可能にし、併せて各国のトラスト規制に準拠したフィンテックソリューションを開発する。

両社はILSで商談をした翌月には、再度日本で対面した。5月にはParticia側から日本にエンジニアを派遣して、1週間をかけて徹底的な話し合いの場を持ったという。スタートアップ×スタートアップという組み合わせであるゆえ、スピード感をもって両者が密接な関係を作り上げることができたと言えそうだ。

日本ではまだよく知られていないが、デンマークはMPC技術等暗号技術における先進地域であることが今回のマッチングで見えてきた。昨今、世界を見回すと金融詐欺は巧妙化し、その犯罪手口は故意に複数の銀行を介して行われるにも関わらず、当局の規制では、各銀行が個別に詐欺を発見し検出することを求めている。

ただ、複数間の銀行を介す金融詐欺を検出するには、金融機関ごとの対応には限界があるため、各銀行間で協力することで、総合的に取引を把握し異常を検知することで詐欺防止に努めることが重要だとされている。本提携では、日本とヨーロッパの知見を持ち寄ることによって、金融詐欺問題の解決を目指す。今秋にはジョイントベンチャー設立を予定しており、欧州水準で技術を証明することで世界へ展開する狙いがある。

合同会社SARRの提携ストーリー(ILS2023)

VCマッチング

商談リクエスト数※1

197

商談数※2

12

後日に再商談した社数
協業に至った社数

4

1

  • ※1)VCとベンチャー双方からの商談リクエスト(商談依頼)合計。
  • ※2)ILS当日に、事前のリクエストによってマッチングした相手と商談した数。
Partisia チーフ・プロダクト・オフィサー(CPO) 
Mark Medum Bundgar氏

我々は今年のCEATECにも出展しましたが、CEATECでは既存のハードウエアといったものに対しての、新しい技術に関する話などは、よく出てきます。ところが現在進行形で開発しているような、もう本当に全く新しい世代のようなソフトウェアの話になると、少々話が進みにくかったところがありました。その点、ILSは次世代ソフトウェアの観点を求めている企業を招き入れる環境と、それを前進させるという考え方を完璧に組み合わせています。さらに新しい技術を欲しがっている企業がたくさん参加しているため、話がよりスムーズに、早く進みました。海外企業にとって日本企業とのコラボレーションは言語の壁などがあるが、ILSでは扉が完全に開かれている。イノベーティブな技術を持っているならILSを市場への踏み台として使ってほしいです。

Digital Platformer株式会社 代表取締役CEO
松田 一敬氏

私はILSが始まった時から参加させてもらい、立ち上げ当初からの投資家という立場のサポーターでありアドバイザーの1人だと自負しています。そんな私から見て、ILSは国策でもあり経産省がずっと後押ししていたオープンイノベーションというコンセプトを最初に具現化し、しっかり根付かせたイベントだと思います。VCとして参加しているとILSはとにかくたくさんの企業からお声がかかります。さらに、日本企業がグローバル展開をしていく上で、そのプロダクトがどんなにグローバルなものだとしても困難さがあります。その点、ILSにはしっかりとしたパートナー候補が海外にもいるところが、日本企業にとってはグローバル展開を進めていく上で心強いのではないかと思います。

Partisiaを推薦したILSアドバイザリーボードメンバー
Embassy of Denmark Akiko Kamigori 氏