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提携事例

植物油製造過程で廃棄されていた未利用バイオマス資源の有効活用にむけた共同開発を開始

公開日:2024年5月22日 / 執筆:ILS事務局

ファイトケミカルプロダクツ株式会社と横河ソリューションサービス株式会社は2023年7月、植物油の製造過程で発生する副産物で、これまで廃棄されてきたバイオマス資源から、機能性成分やバイオ燃料の主成分を抽出する製造技術の確立に向けた共同開発契約を結び、協業を始めている。現在は、仙台市にあるファイトケミカルプロダクツのベンチプラント(試験用工場)で技術検討と実証実験を行なっている。

横河ソリューションサービスの背景と狙い

2013年4月に、YOKOGAWAの制御事業の国内営業・エンジニアリング・保守・サービス機能を統合して発足。計測、制御、情報の技術を軸に事業展開している。「主に、エネルギー企業や化学企業に向けて、プロセスの状態を計測し制御する技術を通して、生産性向上、環境負荷の低減、エネルギー効率利用を実現する製品・ソリューションを、長年提供してきました」(横河ソリューションサービス 高橋氏)。

横河ソリューションサービスが属するYOKOGAWAグループは2050年に向けて、Net-zero emissions、Well-being、Circular economyといった観点から、サステナビリティ貢献宣言を発表。「当社が持つ技術をどのように新分野へ展開するのかを考えた時に、当社はプロセスの状態を測ったり制御したりという技術に強みを持っていますが、再生材そのものを作り出す技術は保有していません。そこでサステナビリティに資する技術を持つスタートアップさんと協業しながら、YOKOGAWAの強みを活かしパートナーとして新たな領域で事業を伸ばしていこうと、協業先を探していました」(高橋氏)という。

そこで、横河ソリューションサービスは、ファイトケミカルプロダクツの持つ未利用資源の活用というコンセプトに着目。同社が持つ複雑な生成物の製造プロセスの商用化や自動化において、自社の持つ計測や制御に関する技術やプラント構築などに関するノウハウが役立てるのではないかと考え、ファイトケミカルプロダクツに商談依頼をした。

ファイトケミカルプロダクツの背景と狙い

東北大学発ベンチャーであるファイトケミカルプロダクツは、水処理の分離剤として利用されてきたイオン交換作用を持つ合成樹脂を用いて、植物油の製造工程において有用な成分を抽出する独自の技術をもつスタートアップ企業。同社はイオン交換樹脂法に関する技術の工業化や社会実装に向けた研究に取り組んでおり、その根底には「資源循環に関する世間の注目度が高まる中で、既存の産業で使われていなかったり捨てられていたりする部分を有効利用できないか、という考え方があります」とファイトケミカルプロダクツ代表の加藤氏は語る。

イオン交換樹脂法は、植物油の副産物を原料とした有用成分の抽出にあたり、イオン交換プロセスだけで成分の抽出ができる。さらに既存の技術と比較して高温・高真空下環境を必要としない省エネルギーな手法となっている。ビタミンEなど熱に弱い成分も安定して抽出できるため高収率な抽出を可能にし、既存の手法で用いられてきた劇物を必要としないため、安全性にも優れているという。

「自分たちの技術を将来的な商業生産に繋げていくためには、制御や自動運転などを課題としていました。そういった時に、ILSを通して横河ソリューションサービスさんからお声がけをいただき、とんとん拍子に提携の話が進みました」(加藤氏)。

提携内容

横河ソリューションサービスは、計測・制御・情報を軸として、さまざまな分野の工場向けに、生産制御システムや計測器、高効率で安全な操業を実現するソリューションを提供してきた。今回の協業により、両社は、ファイトケミカルプロダクツが所有するイオン交換樹脂法を用いたベンチプラントで実証実験を行っている。

横河ソリューションサービスは、ファイトケミカルプロダクツがもつ、分離・回収工程における計測データに関する知見を参考にしながら、生成物のリアルタイムの成分分析・推定、計測手段の検討を行い、YOKOGAWAグループが有するモデリング技術も応用しながら、未利用油の分離・回収工程の自動化とプロセスの最適化を目指す。

両社は共同開発契約を結び、段階的に事業化を目指している。具体的には24年6月までにベンチプラントでの技術検討・実証を終え、パイロットプラントでの技術実装を経て、26年度には商用プラント向けにイオン交換樹脂法のプロセスライセンスと計測技術、モデリング技術を顧客に提供していく予定としている。
「現在は、ファイトケミカルプロダクツ様のベンチプラントで、YOKOGAWAの制御や計測技術などを適用してプラントの自動化を検証しています」(高橋氏)。次の段階としてパイロットプラントが建設された時には、YOKOGAWA制御システムを導入することを検討している。

一方で、ファイトケミカルプロダクツは「横河ソリューションサービスさんからアドバイスを頂きながら、デバイスを改良していきたいと考えています」と、提携によるメリットに期待感を示す。横河ソリューションサービスはプラントの自動化などに関してニーズを吸い上げ、商用フェーズにおいて環境負荷、オペレーションコストの低いプロセスライセンスを訴求し、販売面での協業にもつなげていく意向だ。

横河電機としては第1回のILSから毎回参加し、最新技術のインプットの場として活用してきたが、「今回の提携事例をモデルケースとしてYOKOGAWAのオープンイノベーション活動を進めていきたい」と横河電機の山本氏は語る。

横河ソリューションサービスの提携ストーリー(ILS2022)

ILSパワーマッチング

提案数※1

27

商談数※2

13

後日に再商談した社数
事業提携に至った社数

4

2

  • ※1) 大手とベンチャー双方からの商談リクエスト(商談依頼)合計。
  • ※2) ILS当日に、事前のリクエストによってマッチングした相手と商談した数。
横河ソリューションサービス株式会社 ビジネスマーケティング本部 イノベーション事業推進部ディベロップメントグループ長 高橋 以都子 氏

ILSに参加されているスタートアップは質が高く、企業探索の量も確保できていると感じています。質の面では、VCや金融機関が推薦した会社しかマッチングに参加できないので、商談に入りやすいです。また、対面商談だと4日間にわたって一気に商談できるというところは、とても魅力的だなと思います。スタートアップとの協業については、ILSを基準に事業企画を考えようとしています。

ファイトケミカルプロダクツ株式会社 代表取締役CEO 加藤 牧子 氏

ILSは、スタートアップ側から見ると、大手の企業と直接話ができる貴重な機会となっています。今までは自力で大手企業とコンタクトを取ろうとしても、うまくいきませんでした。ILSは大手企業様が目的意識を持って参加されているので、心強いですね。また、大企業の役職付きの方と直接対話をさせてもらえるため、話が進むのが早いと感じています。