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提携事例
データドリブンな地域活性化活動で連携。北海道でデジタル周遊パスを発売
公開日:2023年3月27日 / 執筆:ILS事務局
データドリブンで都市開発や観光体験創出を行うscheme verge株式会社は、SIerであるTIS株式会社の出資先企業、tance株式会社のコーディネートにより、北海道の交通インフラ会社等と協業し、2023年2月にデジタル周遊パス「とかち帯広バス旅きっぷ」を発売した。今後も両社は、地域への提案活動などで連携していく予定。
TISの背景と狙い
1971年創業の大手システムインテグレータ、TIS株式会社では業界に先駆けてインキュベーションセンターを設置。新規事業提案制度のピッチ通過者の活動支援やグループのインキュベーション施設運営のほか、CVCやスタートアップと事業会社をつなぐビジネスマッチングプラットフォーム、スタートアップや事業会社の新規事業担当者、社内起業家のアイデアの事業化を目指せるスタジオを備える。こうして同社の新規事業創出とその活性化を支援し、スタートアップや事業会社と共にオープンイノベーションを通じて新しいビジネスの創出に取り組んできた。
ILSにも2015年から参画して、NDA以上のマッチング実績は40件近く、協業の実績も数多い。毎回ILSの日程に合わせて社内のニーズを集めており、具体的にスタートアップに向けて募集テーマを提示している。ILS2022では、その一つの「tance社(TISと日本カードネットワークの合弁会社)の店舗向けプラットフォームや販路を通じて、飲食小売店舗の業務改善」というテーマに、scheme verge社が手を挙げた形となった。
tanceの背景と狙い
店舗運営を行う事業者に対し、決済端末などのデバイスを介してさまざまなサービスを提供し、店舗運営をサポートするtance株式会社は、キャッシュレス決済ネットワークを提供する日本カードネットワーク社とTISの合弁会社として2020年11月に設立。JCBグループでもあり、その強みを事業展開に活かしている。今回、ILS2022の段階では、北海道・札幌に拠点を置き、北海道各地に高速バス路線をもつ地域交通事業社である北都交通株式会社(以下、北都交通)の案件で、商談を進める中で非決済系のサービスに関心を持たれていたところ、ちょうどILS2022でTISに提案のあったscheme verge社を紹介され、当該案件に加わってもらうこととなった。
scheme vergeの背景と狙い
2018年設立のscheme vergeは、都市工学とデータサイエンスを組み合わせて事業に落とし込むノウハウを活かし、エリア活性化に関わるプロセスの再現性向上と、データにより改善判断の効率化・自動化に取り組む、東大発のスタートアップ。地域に入り込んで、地元の民間企業やDMO(観光地域づくり法人)などと連携して潜在的かつ良質なコンテンツ情報を集めるという地域連携力や、それらを磨き込むための顧客データ収集・連携・活用まで一貫して取り組める技術力を強みとしている。そうして、潜在的なニーズに合わせた周遊パッケージの構築や、取得データに基づくコンテンツマネジメント・改善、それらを踏まえた宿泊施設や地域拠点の再整備などで実績を重ねてきた。
さらなるスケールを目指し、複数の地域事業者に対してデジタルで問題解決を行っていくことを求めて、ILS2022に初参加。事前に参加企業を検索するなかでtanceの存在を知り、TISにリクエストを行った。
提携内容
2022年2月のILSでscheme vergeとマッチングを行ったTISが、3月にtanceを紹介。4月にはNDAを交わして打ち合わせを開始。ちょうど5月より始まった、tanceと北都交通の新規事業検討会にscheme vergeも参加した。北都交通が課題としていたのは新千歳空港発着のバス路線における札幌エリア以外の振興であり、具体的に空席率を改善できるよう、ポテンシャルのある地域の提案とその誘客やプロモーションなどにおける訴求施策が求められた。そこで地域のコンテンツマネジメントに長けたscheme vergeが、十勝・帯広エリアで提案を行ったところ採用となった。
その後、tanceが他のバス事業者やグループの株式会社ジェーシービー(以下、JCB)などとの連携をコーディネートし、2023年2月にデジタル周遊パス「とかち帯広バス旅きっぷ」を発売した。このパスは、scheme vergeが提供する「Horaiアプリ」で購入が可能。同アプリは、その地域ならではの体験をキュレーションした周遊パスやモビリティの決済、旅程立案などの機能を持ち、インバウンドにも対応している。そこにtanceが非決済系サービスとしてJCB加盟店の特典などもうまく絡め、パスをバリューアップさせた形。
tance清水氏によれば、「北都交通は道内で初めて各種クレジットカードのタッチ決済を空港連絡バス全車両に導入するなど、MaaSの取り組みに積極的。そこに対して、交通系の実績豊富なscheme vergeの提案がうまくマッチした」という。「当社単独では、北都交通が抱えるような地域の課題を見つけ出すことは難しく、今回、tanceと協業できたのは今後の展開も含め、大きな成果でした。地域の課題に対する提案力を示すこともできたといえ、よい事例ができたと感じています。(scheme verge嶂南氏)」。
TISの提携ストーリー(ILS2022)
- ※1) 大手とベンチャー双方からの商談リクエスト(商談依頼)合計。
- ※2) ILS当日に、事前のリクエストによってマッチングした相手と商談した数。
TIS株式会社 テクノロジー&イノベーション本部インキュベーションセンター 主査
中村雅春氏
ILSは、約600社ものスタートアップのリストを見てアプローチができ、スタートアップからもリクエストが出せる、双方向のマッチングシステムです。その数も内容も、ILSならではのもの。事前に社内の各事業の当事者が直接、店舗DXなどのキーワードを入れて検索できるのもメリットで、社内のインキュベーションセンターで独自にスタートアップを見出して事業部に紹介するよりもニーズを合致させやすく、具体的な動きにしやすいと思います。
tance株式会社 Business Development / Business Director
清水郷太氏
ソーシングに関しては、日頃からリテールテックなどの展示会やセミナーに参加するなどして、機会を得られるよう努めていますが、不特定多数の事業者と出会っても効率は決してよくありません。それに対し、ILSでは使う時間が圧倒的に短くて済み、確実にニーズに合った、あるいはその可能性の高いスタートアップと出会うことができますね。
scheme verge株式会社 CEO / Urban Engineer
嶂南達貴氏
当社もいろいろなアクセラレータプログラムなどに採択されてきましたが、そういうものだと参加企業の数も一定程度で、提案内容の自由度が限られてしまうといえます。ですが、今回初めてILSに参加してみて、参加企業がこれだけ多いと、当社のソリューションが役立つ案件が何かしら見つけられる手応えを感じました。そうして接点のなかった企業や部署の方とコミュニケーションができるわけで、想定以上の成果を得ることができました。
scheme verge社を推薦したILSアドバイザリーボードメンバー
株式会社サムライインキュベート 代表取締役 榊原 健太郎 氏