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提携事例

風況観測・予測ソリューション開発で資本業務提携、ゼロエミッション事業を推進

公開日:2022年7月11日 / 執筆:ILS事務局

株式会社商船三井(MOL)のCVCである株式会社MOL PLUSは、風況観測・予測ソリューションを提供する、京大発ベンチャーのメトロウェザー株式会社に2022年4月、出資を発表。商船三井による、風と水素で走るゼロエミッション船の実証実験で、海上における風況実測の共同研究に取り組んでいる。

MOL PLUSの背景と狙い

商船三井は創業から130年以上、鉄鋼原料・石炭・木材チップなどを運ぶ各種専用船、原油を運ぶタンカー、液化天然ガスを運ぶLNG船、自動車船、さまざまな製品を運ぶコンテナ船など、多彩な分野で時代の要請に応えてきた。
さらなる成長に向け、ポートフォリオ戦略・営業戦略・環境戦略を3本柱として、毎年ローリングプランを策定している。そうしたなか、MOLグループ社員提案制度「MOL Incubation Bridge」を通じて阪本代表が商船三井100%出資のCVCを発案。中長期的な視点で、海運業のビジネスモデル変革や新規事業創出を実現し得る国内外のアーリー、ミドルステージのスタートアップ企業を中心に幅広く投資を行う目的で、MOL PLUSが 2021年4月に設立され運営を開始している。
ILSには、MOL PLUSによる投資・業務提携の可能性を探るべく、商船三井として2021年より参加。「海運業自体に風穴を開けるべく、多様なスタートアップとの出会いを期待して参加を決めました」

メトロウェザーの背景と狙い

メトロウェザーは、計測・制御・通信等の知識を活用したレーダー観測技術の研究に従事していた、京都大学生存圏研究所元助教授の古本氏が、リモートセンシング技術を応用した大気計測装置(ドップラーライダー)を開発するために、同僚である東 邦昭氏と2015年に共同創業。「風を制し、空の安全を守る」をビジョンとし、小型・軽量・低価格のドップラーライダーで風況ソリューションを提供することで、各産業における課題解決やドローン運行管理システムにおける風況情報の提供を目指している。
ハードウェアの開発に資金を要するため、設立してすぐNEDOの研究開発型ベンチャー支援事業に申請し、採択が決まる。その際に、NEDOが協賛していた縁で2015年開催のILSに初参加し、以来、ILSの常連スタートアップとなる。技術的にもノウハウを蓄積していき、2020年4月にオリジナルのドップラーライダー初号機をローンチ。実証実験フェーズに入っていた、2021年3月のILSで商船三井と出会った。

提携内容

2021年のILSパワーマッチングで面談を行った後、オンラインや互いの訪問でディスカッションを重ね、事業連携の意向を双方に持ちながら、具体化に向けて話を進めていった。商船三井グループの技術研究所も連携にコミットし、2021年秋には、商船三井ですでに開始していた「ウインドハンタープロジェクト」の実験船、ウインズ丸に、メトロウェザー社のドップラーライダーを搭載し、海上での風況実測の共同研究に着手。同プロジェクトは、洋上風エネルギーを利用する帆の技術と、この風エネルギーで造った水素による安定エネルギー活用技術を組み合わせたゼロエミッション事業であり、温室効果ガス(GHG)の排出削減に大いに貢献するもの。1本帆によるGHG削減効果は、日本~北米西岸航路で約8%を見込んでおり、将来的には複数の帆を実装し、他のGHG削減対策と組み合わせて有力なソリューションへ発展させることを目指している。

メトロウェザー社のドップラーライダーによる風況観測・予測は、この帆のより効率的運用を可能にすることが期待される。進行中の実証実験では移動する船舶上のため、ドップラーライダーに慣性航法装置をつけて速度や体勢などをリアルタイムで補正していくが、地上での運用と異なる発見が多く得られている。2022年4月にはMOL PLUSが出資を行っている。阪本代表は「将来的には、洋上風力発電における設置場所選定などにも応用を進めたい」と語る。古本社長も「島国である日本にとって命綱といえる海上輸送に、SDGsの文脈で貢献できるというのは、当社にとって大きな発見であり、スタートアップ冥利に尽きます」と、矜持を語る。

株式会社商船三井(MOL)の提携ストーリー(ILS2021)

ILSパワーマッチング

商談リクエスト数※1

58

商談数※2

16

後日に再商談した社数
事業提携に至った社数

10

2

  • ※1) 大手とベンチャー双方からの商談リクエスト(商談依頼)合計。
  • ※2) ILS当日に、事前のリクエストによってマッチングした相手と商談した数。
株式会社MOL PLUS 代表 
阪本拓也氏

ILSの参加スタートアップはVCの推薦等を受けているため、安心感があり、具体的な協業へのステップが描きやすいです。また、単に面談をセッティングするだけではなく、参加企業各社が目的意識を持って参加できるように仕組み化されているため、ステップごとの目的や心構えなどを、タイムマネジメントを含め、見てもらえるのが良いですね。CVCとして、事業側も巻き込んでコミットしてもらうときに、そのような体制が役立ちました。

メトロウェザー株式会社 代表取締役社長
古本淳一氏

ILSでは、創業期でも大手企業を相手に、壁打ちの機会を多数得られたのが大変有難かったです。特に、プロダクトが形になる前の数年間にも、多様な事業とのユースケースがイメージしやすかったことで、プロダクトの方向性や開発自体にも大変参考になりました。当初はNEDOに採択された、トロフィー的な気持ちで参加を捉えていましたが、回を重ねるごとに、毎年ILSの会期に向けて技術を磨くようなベンチマークにもなっています。

メトロウェザー社を推薦したILSアドバイザリーボードメンバー
日本政策金融公庫 中小企業事業本部 新事業室 新事業・ベンチャー支援総括課長 荻布 靖