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提携事例

再エネ導入の推進にむけ資本業務提携

公開日:2022年6月21日 / 執筆:ILS事務局

デジタルグリッド株式会社は2021年12月、三井化学株式会社から出資を受け、日本の再生可能エネルギー導入推進に向けたデータソリューション型ビジネスの強化に乗り出した。デジタルグリッドは発電事業者と需要家間で直接、電力取引ができるプラットフォームサービスを提供しており、三井化学は2021年8月にオンライン診断サービスを始め、短時間での発電性能診断や期待発電量予測を可能にした。三井化学の診断・予測ノウハウとデジタルグリッドのプラットフォームの連携を進める。

三井化学の背景と狙い

三井化学はもともと、太陽光パネルに使われる樹脂製の封止材を製造してきた。20年近い事業経験から、どのように太陽光パネルが劣化していくのかといったデータを蓄積。三井化学はこうした知見を活かした太陽光発電診断事業を立ち上げた。更なる事業の拡大を検討する過程で、2017年より参加しているILSを通じて、パートナー企業を探していたという。

素材メーカーである三井化学は、「これまでの素材の製造販売に重きを置くビジネスモデルからの方向転換を考えていくなかで、太陽光発電の性能診断や、期待発電量を予測するサービスを事業化した」(井上氏)。これにより、短時間で正確な発電性能診断や期待発電量予測を可能にしている。こうしたタイミングで、デジタルグリッドが大企業との協業を求めていることを知り、デジタルグリッドのプラットフォームサービスとの親和性が高いと判断した。

再生可能エネルギーの中でも、太陽光発電は天候により出力が不安定になりやすく、需給調整のコスト削減に寄与する簡便で低コストな取引の仕組みが必要とされている。三井化学は、デジタルグリッドのプラットフォームが、その有効な手段の一つと考えており、連携により太陽光発電の安定的な発展・運用に寄与できるとしている。

デジタルグリッドの背景と狙い

デジタルグリッドは、「電力を生む発電家」と「電力を買う需要家」が直接売買できるシステムを備えたプラットフォーム「デジタルグリッドプラットフォーム(DGP)」を提供するスタートアップとして2017年に創業。同プラットフォームは、再生可能エネルギー電源や通常電源など多種多様な電源と電力需要を結びつけられるが、同社CEOの豊田氏は「これまでの電源は火力がほとんどだった」と話す。

太陽光でつくった電気は主に、再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)により大手の電力会社によって買い取られてきた。ところが2022年度から段階的に、一定期間が経ったものからFITが終了し、市場価格にプレミアムを付けて販売する「FIP制度」に移行している。FIP制度に移行した発電家が市場で電気を売るために、プラットフォームを活用することが見込まれている。

デジタルグリッドのプラットフォームでは、電力取引の専門資格やシステム投資なしで取引でき、再生可能エネルギーだけを選んで購入することも可能。さらに需給調整などの煩雑な業務をAIで自動化した。デジタルグリッドは取引の場を構築しているため、プラットフォームへの参加者を増やす目的で、発電量などを高精度で予想できるパートナーの必要性を感じ、2021年に参加したILSで三井化学を協業先として希望した。

提携内容

デジタルグリッドと三井化学の両社が連携により目指すのは、日本の再生可能エネルギーの導入推進に向けたデータソリューション型ビジネスの展開だ。具体的には新規投資する発電所の事業性を判断する際に、「三井化学さんは、発電実績が十分になくても発電量が予測できるようなサービスも立ち上げられており、新設する発電所に投資をしたいというお客様に対し、指針を示すことがきます」(豊田氏)という。

近年、太陽光発電所の立地をめぐっては、景観や地域住民などへの配慮から、大型施設が建てにくくなっている。太陽光発電所の小規模化が進む中で、再生可能エネルギーに関わる事業者には、デジタル技術を活用した業務の効率化が求められている。そこで三井化学は、オンラインでより手軽に事業性が診断できるシステムを開発した。

それまでは「その都度調査員が現地に出向いて、時間をかけてレポートを書いていましたが、状況をお客様に入力して頂くことによって、即座に予測できるサービスをスタートしています」(井上氏)。三井化学にとって、人員を増やさずに事業を拡大させるにはビジネスモデルをアナログからデジタルへ変えていく必要があり、デジタルグリッドとの協業が事業のデジタル化を後押しすることにもつながっている。

FIT制度からFIP制度への移行が徐々に進む中で、太陽光発電に参入する民間事業者間の競争が激しくなっている。特に資金余力がない中小事業者にとっては、採算性が見込まれるにも関わらず、金融機関からの借り入れが難しいケースもある。三井化学による事業性評価が、いわば金融機関向けの”お墨付き”となれば、事業者の資金調達にとってはメリットとなり、新たな投資の促進につながる可能性がある。顧客開拓についても、両社の商流を相互に活用することによるシナジー効果も見込めた。

また、三井化学はグループで再生可能エネルギー事業にも参画し、太陽光発電所と風力発電所を他社と共同で運営している。グループで培った発電所のノウハウや知見の活用も期待できる。

三井化学の提携ストーリー(ILS2021)

ILSパワーマッチング

商談リクエスト数※1

58

商談数※2

29

後日に再商談した社数
事業提携に至った社数

6

3

  • ※1) 大手とベンチャー双方からの商談リクエスト(商談依頼)合計。
  • ※2) ILS当日に、事前のリクエストによってマッチングした相手と商談した数。
三井化学株式会社 新事業開発センター 副センター長 
井上佳尚 氏

オープンイノベーションを使いながら三井化学の新しい事業を作っていく目的で、当社のアセットと組み合わせながら、コラボレーションできるようなパートナー企業様を探索するために、ILSの場を活用しています。
2021年に当社が発表した新しい中期経営計画のなかで、カーボンニュートラルに貢献するということを掲げました。この事業はまさに、カーボンニュートラルへの貢献の一つと考えていますし、DXも絡めながら進めていきます。我々の新規事業としては好事例だと言えるのではないでしょうか。

デジタルグリッド株式会社 代表取締役社長 
豊田祐介 氏

これから作る再生可能エネルギーに投資をしたいというお客様が、大勢いらっしゃいます。私どものプラットフォームで売電単価はお示しできるため、三井化学様の発電量を予測するサービスとコラボできることは、本当にありがたいですね。
三井化学様とは定期的にエンジニアのチームの方とやりとりさせて頂いております。当社としても、名だたる大手企業が参加されているILSに参加させていただき、今回は三井化学様に申し入れを快諾いただいたことをうれしく思います。
スタートアップとしては、なかなか大手企業にお声がけをする立場ではないため、ILSはスタートアップに寄り添ったシステムになっていると感じます。