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提携事例

睡眠総合サービス「Sleep Styles」開発における業務提携

帝人株式会社は2015年3月18日より、「眠り」をサポートする睡眠総合サービス「Sleep Styles」を立ち上げ、サービスを開始した。この取り組みにおいて、プロジェクト企画協力として株式会社メディシンク、日誌形式の睡眠記録アプリの開発パートナーとしてウンログ株式会社、マルチデバイス対応睡眠記録アプリのプラットフォーム提供元を株式会社プラクテックスと、それぞれ業務提携を結んでIT×ヘルスケアの融合領域での新規事業の立ち上げを進めている。

帝人の背景と狙い

帝人では研究開発を先行してから市場参入・事業展開というシーズ発想型のプロセスを取ることが多かったが、そうした従来の進め方ではユーザーニーズとのミスマッチが起きがちだという事から、今回のIT×ヘルスケア領域での新規事業の取り組みでは、まずユーザーに無償で使っていただいてから、後に収益につながるサービス・ソリューションの開発を進めるというアプローチにトライしている。

2015年3月に立ち上げた「Sleep Styles」は睡眠に特化したプロジェクトで、既存の商品・サービスの販促という目的ではなく、睡眠を軸に新しいソリューションを作りたいという狙いがある。厚生省の発表によると、国民の5人に1人は、睡眠で困っているという。そうした人達に向けたサービスやソリューションを開発することで、収益化を目指す構えだ。

メディシンクの背景と狙い

株式会社メディシンクは2006年に設立されたヘルスケアベンチャーで、メディカルとエンターテインメントの融合をコンセプトに事業を行っている。同社代表の八村大輔氏は1996年から「明るく楽しく自発的かつ継続的に健康増進していく社会の創出」という構想のもと活動を続けてきた。しかし、市場自体が新領域で未開拓ということもあり、なかなか大きな投資が進まないという課題があった。しかし、近年急速に普及したスマートフォンや専用アデバイスの登場など、様々な企業がヘルスケアに注目するようになってきた。同分野への投資意欲が高まる中、総務省のスマートシティにおける健康見える化実証事業の受託経験もある同社の知見への期待感が高まってきており、今回の帝人との業務提携に至った。

プラクテックスの背景と狙い

株式会社プラクテックスは2010年に設立されたベンチャーで、創業者の児玉 知浩氏は新日本製鉄の新規事業部門をへてベンチャーに転じ、複数のベンチャーの役員、金沢工業大学社会人大学院客員教授(アントレプレナーシップ特論)等を務めてきた。プラクテックスは様々なメーカーのヘルスケア・データを統合できるプラットフォーム「ヘルスプレイヤー」を展開している。これはパソコンにおけるOSのようなもので、メーカー間を跨いで簡単にデータ連携が出来るというものだが、肝心のヘルスケア・デバイスとサービスの普及が成功の鍵だ。そのため、同ブラットフォームを如何に大手企業様に担いで頂くかというのが課題であった。

ウンログの背景と狙い

ウンログ株式会社は2013年8月に設立されたベンチャーで、うんちで健康管理をするアプリ「ウンログ」を開発・運営している。事業収益としては、アプリで集まった排泄物に関する統計データの販売。こうしたデータは今までなかったもので、食品や製薬、保険会社などから幅広いニーズがある。ただ、ベンチャーは「信用力」が課題となり、大手企業との取引が進まない課題があった。しかし、帝人との業務提携発表後は他の大手企業からの問合せも増えているそうで、また日経新聞に取り上げられるなど、着実に信用力を増してきている。

提携内容

帝人がIT×ヘルスケア領域への進出を決めたのは、2014年6月。中期経営計画の見直しに伴い、同領域への進出が決定された。背景には、今までと違うビジネスモデルを生み出さないといけないという危機感があった。プロジェクトの責任者として、帝人のグループ会社インフォコムで経営企画室長だった濱崎洋一郎氏が抜擢され、ITヘルスケア・プロジェクトが立ち上がった。同プロジェクトは社長直轄チームとして、帝人社内としても今までにない取り組みとしてスタートした。

事業化にあたっては研究開発からではなく、先にユーザーから集めるという戦略で、メディアやアプリの立ち上げを先行することになった。メディアやアプリを成功させるには、機能性だけではなく「エンタメ要素」が重要となる。そうした領域はセンスによる部分が大きいため、外部のベンチャーと組むことで「センス」を取り入れた。

また、ヘルスケア・データを扱うシステムも自前で開発していては時間がかかるとの判断で、既に実績のあるベンチャーと取り組む事になった。いずれも、これまでB2Bの事業が主体であった帝人にとって初めてともいえる取り組みばかり。まさにオープンイノベーションによる新規事業の立ち上げとなった。

帝人の提携ストーリー

ILSパワーマッチング

商談リクエスト数※1

-

商談数※2

12

後日に再商談した社数
事業提携に至った社数

6

3

  • ※1) 大手とベンチャー双方からの商談リクエスト(商談依頼)合計。ILSでは参加ベンチャー企業を様々な検索軸で検索し、リクエストを行う事が出来ます。また、ベンチャー企業からもリクエストがあります。この仕組みにより、事前に精度の高いマッチングが可能となります。商談リクエストは第2回ILS以降の仕組みのため、第1回ILSで提携に至った場合は「-」と表記しております。
  • ※2) ILS当日に、事前のリクエストによってマッチングした相手と商談した数。
帝人株式会社 ITヘルスケア・プロジェクト プロジェクト・リーダー 濱崎 洋一郎 氏

メディシンク、プラクテックス、ウンログの3社は、いずれもILSでつながったベンチャーです。プラクテックスとは第1回ILS(2014年1月)で商談をしていましたが、その時はインフォコムと話をするという事になったのですが、ITヘルスケアを帝人本体でやることが決まってからは、一気に具体的な話を進めていきました。また、メディシンクとは第2回ILS(2014年9月)で商談し、そこからウンログも紹介してもらいました。

メディシンク、プラクテックス両社に10月からコンサルとして入っていただきました。この時点で業務提携に向けた大枠での基本合意は出来ていたと思います。その後、2014年末にアプリ開発のパートナーとしてウンログにも参加していただき、「Sleep Styles」として発表したのが2015年3月という流れです。「Sleep Styles」には他にも株式会社ねむログというベンチャーや、メディアジーンとインフォバーンというWebメディアのプロにも参画してもらっています。

株式会社メディシンク 代表取締役社長 八村 大輔 氏

デジタルヘルスケアについては20年前から取り組んでいますが、最近ようやく注目され始めたので嬉しいです。これまで様々な国内企業との仕事で感じるのは、未開拓領域で確立していない市場に対し、速い意思決定が出来なかったり、投資判断は難しいという反応が多い事でした。しかし、前例主義ではイノベーションは生み出せませんので、今回、帝人さんが新規領域に果敢に挑戦され、当社のようなベンチャーへのお声掛けには、強く感銘を受けています。ゼロから市場を創るには、「ムードメイク」が最も難しく、そして最も大切なポイントだと考えています。短期間ではなかなか成果が出にくいのが新規事業の常ですが、特に健康・医療分野などの規制業界は、長い視点で捉えて戴くと果実も大きいと思っています。

株式会社プラクテックス 代表取締役 児玉 知浩 氏

帝人とは第1回ILSで商談させていただきました。その時はインフォコムというグループ会社と話を進めるという事になったのですが、その後、濱崎さんが帝人のプロジェクト・リーダーになられて以降、話が急ピッチで進みました。当社は2014年10月から開発プロジェクトに参加させて頂きました。

当社の強みはヘルスケア分野の各種デバイスを横断して扱えるプラットフォーム・システムを持っていることです。たとえば、オムロンのデバイスとタニタのデバイスでは、それぞれデータが異なりますが、それを連携させることが出来ます。デバイス横断という意味では、パソコンにおけるOSの立ち位置に近いですね。帝人にもこのプラットフォームをカスタマイズしたものを提供しています。当社にはヘルスケア分野のいろいろな情報が集まりますので、帝人から見て「出島」のような存在であると思います。

ウンログ株式会社 代表取締役 田口 敬 氏

「Sleep Styles」に参加した経緯としては、もともと当社の創業メンバーでもあるメディシンクの八村さんからのお誘いでした。帝人との商談・交渉が具体化してきたところで、アプリ開発のパートナーとして推薦して頂いた形です。

当社は「オハログ」という睡眠日誌作成アプリの共同開発を行いました。大企業相手に、期限のある仕事をしたのは始めてでしたので、あらゆるネットワークを駆使して、なんとかやり切れました。

アプリは、リリースしてからが本番です。ユーザーに喜んでもらえるように、改善を繰り返していきます。