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提携事例

公開日:2022年6月7日 / 執筆:ILS事務局

エーアイシルク株式会社は2022年2月に、高機能な導電性繊維「LEAD SKIN®」を使用した繊維センサーのリファレンス・デザインとして、アナログ・デバイセズのインピーダンス測定用に設計されたアナログ・フロントエンド「AD5940」を採用し、繊維センサーソリューションの提供を開始したことを発表。今後も開発・製品化で協業を深めていく。

アナログ・デバイセズの背景と狙い

アナログ・デバイセズは半導体デバイスを製造するアメリカの多国籍企業で、Japanリージョンの拠点を1970年に設立。もともとR&Dを重視し、本社の方針としてスタートアップとの連携・協業にも注力するなか、日本法人でも日本発のビジネス/技術シーズの調査および事業化を目標に掲げている。ILSには2015年から参加し、その時々のトレンドに合わせて「ユニークなセンシング技術またはセンシングされたデータ分析を応用したビジネスやアイデア」などと募集テーマを設定。同社が得意とするのは、ICで微小な電気信号をデジタルデータに変換する領域であり、その前段のセンシング技術やデータ変換後の信号処理技術に長けたスタートアップとの協業を求めている。エーアイシルクとは2019年のILSでマッチング。「電極を要しない導電性繊維の実物に触ってみたかったのと、どのような応用が可能かを知りたかったので、ILS開催後すぐに仙台本社を訪問しました」

エーアイシルクの背景と狙い

エーアイシルクは東日本大震災の復興を目指す、文部科学省の地域イノベーション戦略支援プログラムから生まれた東北大学発ベンチャーで、2015年6月、仙台に設立。シルク素材と導電性高分子を組み合わせることで電気計測を可能とする、東北大学のシーズを元に、医療分野などでの応用・実用化を目指す。NEDOの研究開発型ベンチャー支援事業に採択された流れで推薦を受け、ILSには2016年より参加。技術のアピールと製品化に向けた他企業とのマッチングを求めてきたが、毎年のように人気上位100社に選出され、2022年にはNEDO厳選によるディープテック26社のデジタルヘルス・バイオテック編でピッチ登壇も果たすなど、着実に認知を高めている。同社の技術では、素肌から生体情報を取得する従来のウェアラブルデバイスに比べ、肌触りが良く、高い吸水性を保ち、低アレルギー反応ながら高い導電性を持つ繊維素材を実現して、ユーザーに優しいセンシングを可能にした。

提携内容

両社がマッチングした2019年秋は、伸縮型の導電性繊維素材「エーアイシルク」の活用法を求めていたタイミング。互いの技術や方針を共有した両社は週1回から月1回のペースで、リモートで議論を重ねた。そうして、アナログ・デバイセズのICを導電性繊維のセンサーにつなげ、取得したデータの電気信号をマルチチャンネルで計測できるデバイスを開発。さらにユーザーヒアリングをふまえて使いやすく、ワンパッケージに凝縮させ、5ミリ角のチップを搭載した名刺大のデバイスに仕立て上げた。サポート体制を含め、2021年春には提供体制がほぼ整ったが、オフラインでの発表のタイミングを図り、2022年2月のプレスリリースとなった。

また、エーアイシルクでは2021年10月に、より高機能な導電性繊維「LEAD SKIN®」の量産を開始。発表したデバイスもLEAD SKIN®対応となっている。このデバイスによるソリューションとして、たとえば自動車のハンドル本体に組み込み、グリップ部分をLEAD SKIN®でカバーすることで、運転者の心拍を取得。また、グリップのどの箇所に接触しているかのセンシングもできる。これにより、運転中の居眠りや体調変化を捉えるニーズに応えるハンドルという最終製品を実現した。さらに本デバイスは、シート状に加工して圧力を測定したり、接触/非接触センサーにも応用が可能なため、今後も医療・スポーツ、産業、ロボティクスなど、幅広い分野への展開が予想される。「プレスリリースを受けて、想定していなかった製薬業界などからも問合せがあり、可能性の広さに驚いています」と岡野社長。柿沼氏も「ヒューマノイドの皮膚に用いれば、より人間らしさを具現化できそうなど、個人的にも夢が広がります」と未来に期待を寄せる。

アナログ・フロントエンド「AD5940」搭載の繊維センサーデバイス

アナログ・デバイセズの提携ストーリー(ILS2019)

ILSパワーマッチング

商談リクエスト数※1

32

商談数※2

16

後日に再商談した社数
事業提携に至った社数

8

6

  • ※1) 大手とベンチャー双方からの商談リクエスト(商談依頼)合計。
  • ※2) ILS当日に、事前のリクエストによってマッチングした相手と商談した数。
アナログ・デバイセズ株式会社 ビジネス&オペレーショングループ エコシステム スタッフアプリケーションエンジニア

柿沼 淳氏

昨今はWebで多様な情報が取得できますが、そこでも探せないような企業や技術とILSでは出会うことができ、毎年開催なので、当社技術の成熟や世の中のトレンドにより、その年に求めるものも変えています。さらに長期スパンではスタートアップ側もより技術を進化させたり、新たに起業したりなどの広がりも得られています。外資系企業ですが、スタートアップとの協業を通じ、日本のものづくりに貢献できる手応えを感じています。

エーアイシルク株式会社 代表取締役/CEO
岡野 秀生氏

地方にいては難しいような大手企業との多様なマッチング機会が、ILSでは得られます。新幹線で東京から2時間の仙台でも情報の時差を感じることはあり、それを埋められる機会でもありますね。特に開発のキーパーソンと直接会えるので話が進みやすく、具体的な協業や投資が実現しやすいです。創業期にはネットワーキングや当社の認知率向上にもたいへん役立ちました。今後も継続して参加し、開発のパートナーを求めていきます。

エーアイシルク社を推薦したILSアドバイザリーボードメンバー
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 イノベーション推進部長 吉田 剛