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提携事例

運動機能計測事業開発に関する業務提携

公開日:2021年11月15日 / 執筆:ILS事務局

株式会社ジースポートと旭化成株式会社は、旭化成がウェルネス分野で新たな市場へのアプローチを図るアイデアのもと、ジースポートの持つバイオメカニクス領域の知見やノウハウを生かすことで、運動機能計測を基盤とした運動支援サービス事業の開発を連携して推進。2022年には、まず旭化成社内でPoCを行い、早期の事業化をともに目指す。

旭化成の背景と狙い

1922年創業の旭化成は「マテリアル」「住宅」「ヘルスケア」の3つの事業領域を持つ総合化学メーカー。グループとして「昨日まで世界になかったものを。」をスローガンに掲げ、これまでも時代の要請やニーズに応えて、事業ポートフォリオを積極的に転換してきた。中期経営計画「Cs+ for Tomorrow 2021」においても新規事業創出を目指して、2019年4月には全社横断のマーケティング&イノベーション本部を設立。また、グループ内の領域間や他企業、行政やアカデミアとの連携強化を打ち出している。

そうした機運のもと、ILSには2016年より参加して、国内スタートアップ企業との協業機会を探ってきた。バイオメカニクス領域を専門とするジースポートとも2016年ILSで出会ったものの、当時は顔合わせに留まっていた。それが、2019年に社内でウェアラブル関連の新事業が模索され始めたことで協業イメージが具体化し、同年秋のILSで再会。プロジェクトが始動することとなった。

ジースポートの背景と狙い

ジースポートは、動作解析技術のビジネス化を目指して2000年に設立されたスタートアップ企業。ヘルスケア領域で身体機能をデータ化した分析とソリューション提案を得意とし、東京大学でのバイオメカニクス・AI・ビジュアリゼーション研究を基盤に、アライアンスにより日本やアジア市場の「医療」「健康・スポーツ」「介護・福祉」「人間工学」分野に展開。

そうして、研究所や大学研究室、クリニック、整骨院、フィットネススタジオなどに製品・サービスを提供してきたが、より大きな市場を目指すチャンスを求めて、2016年よりILSに参加。同年、旭化成とも面談機会を得たが、当時は両社の持つ技術をどう組み合わせられるかといった、シーズ同士のマッチングを図ったものの実らず。旭化成側で事業化イメージが提示された2019年のILSでは、旭化成のニーズとジースポートのシーズを掛け合わせるところからのスタートで、スムーズにプロジェクトに入ることができた。

提携内容

当初から決まっていた共同事業の方向性は、「健康長寿社会の実現」。そのために、従来の旭化成のヘルスケア領域での医療関連とは異なる「運動」がテーマとなった。そこで、2020年度はジースポートが運動機能系のアドバイザーを務め、旭化成にとっては未知の運動関連の業界動向や技術についてアドバイスを提供。週1回3~4時間の定期ミーティングで仮説検証を重ね、複数の事業アイデアについて事業化の可否の判断材料を提供していった。

ジースポートでは「これまでの協業では製品技術や研究成果を求められることが多かったのですが、今回は事業性の評価が目的なので、当社としても新鮮な経験でした(黒田氏)」という。「社内には全く知見のない領域だったため、当初は素朴な質問をジースポートの方たちにぶつけ、まさに先生と生徒のようでした」と根本氏が語る旭化成では、そうして得た知見をもとに社内での承認作業を推進。2020年度末には事業方向性が、「安心、安全に楽しみながら効果的に体力年齢を向上させるための運動支援事業」と固まった。「社内のリソースだけでは、ここまでたどり着けなかった」と佐々木氏。「壁打ちしてもらったことで、より現実的な案を社内で進めることができました」

2021年度には、ジースポートが事業化パートナーとなる形で両社が契約。「動き」と「筋力」の可視化をベースとしたアプリケーションの開発を進めている。「ジースポートが従来手がけてきた想定ユーザー数とは桁が違うため、開発工程ではより精度が求められます」と山口氏。一方、旭化成では想定顧客層へのヒアリングを重ね、製品・サービスのブラッシュアップに尽力。2021年度中のプロトタイプの完成を目指し、2022年度より旭化成社内での実証実験を進める予定だ。

旭化成の提携ストーリー(2019ILS)

ILSパワーマッチング

商談リクエスト数※1

22

商談数※2

24

後日に再商談した社数
事業提携に至った社数

6

3

  • ※1) 大手とベンチャー双方からの商談リクエスト(商談依頼)合計。ILSでは参加ベンチャー企業を様々な検索軸で検索し、リクエストを行う事が出来ます。また、ベンチャー企業からもリクエストがあります。この仕組みにより、事前に精度の高いマッチングが可能となります。
  • ※2) ILS当日に、事前のリクエストによってマッチングした相手と商談した数。
旭化成株式会社 マーケティング&イノベーション本部 ウェアラブル新事業プロジェクト プロジェクト長(当時)
根本 謙治氏

当社では2011年にシリコンバレーでCVC活動を開始して、オープンイノベーションに注力してきました。国内のスタートアップ企業との協業は2016年のILS参加により深化した。ILS自体がマッチングイベントとして老舗であるため、社内外から注目を集めていると感じます。また、初回の面談から事前リクエストに基づき、スタートアップの代表者と直接話せるため、判断がスピーディーなのも良い点といえます。

株式会社ジースポート 代表取締役
黒田 篤氏

ILSは大企業とフェース・トゥー・フェースで出会える貴重な機会。自社だけでは想定できなかった大きな市場に向けた開発を実現できたのは、ILSなしには考えられません。実際に協業することで自社の潜在的な可能性に気づくこともできました。また、ILSに参加するスタートアップ企業同士の交流も増えており、そこでの協業なども、今後できるとよいですね。