事例一覧 > 株式会社おいしい健康 x 東洋製罐グループホールディングス株式会社

提携事例

株式会社おいしい健康と東洋製罐グループホールディングス株式会社は、製品の共同開発を推進。その第一弾として、2020年2月、自然に減塩に取り組める3種類の豆腐容器「ソルトーフカップ(Salt Off Cup)」を発表した。今後も互いの、容器製造技術×食のデータ活用でシナジーを発揮して、容器や食シーンにおける新たな価値の創出および製品の提供を目指していく。

東洋製罐グループの背景と狙い

東洋製罐グループは1917年創業の、金属・プラスチック・紙・ガラスの素材を生かした総合包装容器メーカー。素材開発や成型加工、エンジニアリング技術に優れ、飲料や食品、生活用品メーカーを顧客として業界首位を誇る。しかし、そうしたメーカーからの市場ニーズに応えるだけでは新たな事業創出には結びつかず、潜在的な消費者ニーズに通じたスタートアップ企業との出会いを求め、2018年度のILSに初参加を決めた。

求めたのは、食品容器に従来期待された「保存力」「扱い易さ」「表示やデザイン」といった目的にとらわれず、容器をエコや健康、フードロス、バリアフリーなど、社会課題を解決するプラットフォームへと押し上げられるようなアイデアや提案力だった。また、同社の創業者の髙碕達之助氏は水産講習所出身で、食糧危機が危惧されていた当時、海洋国家の日本から水産缶詰で輸出産業を興すべく、安価で長期保存と輸送に耐えうる缶詰容器の製造を開始。その後もレトルトパウチを世界に先駆けて開発・実用化するなど、日本社会とその食卓を支えてきた自負がある。

「今まで当社が取り組んできた、必要な食糧を届ける事、利便性を上げる事、その次に解決すべき課題として『健康』がキーワードでした。同時に、『おいしさ』も両立する必要があるとというのが重要なポイントでした」と、イノベーション推進室リーダーの三木逸平氏はいう。「ですから、その両方が社名となっている『おいしい健康』との出会いは運命だと感じました」

おいしい健康の背景と狙い

おいしい健康は、クックパッドのヘルスケア部門の子会社からMBOを経て、2017年1月に独立。「誰もがいつまでも、おいしく食べられるように」を理念として、管理栄養士監修の約1万レシピから、AIでパーソナライズドされた献立を提案するサービスを提供している。糖尿病やがんといった持病に悩む患者から、健康意識の高い妊婦や一般人にまで、最適なバランスの食生活サポートが可能だ。そうして、医師や管理栄養士、医療機関、介護施設のスタッフなどを通じて、食の現場の声を蓄積してきた中で、外食や中食(惣菜や弁当)での食べやすさが課題として浮かび上がった時にILSを知り、食関連のソリューションやノウハウを持つ大企業との協力関係を求めて、2018年に初参加を果たした。

「食品容器でトップシェアを持つ東洋製罐グループにはかねてから興味があり、個人的に『食のプラットフォーマー』として注目していた」と、代表取締役CEOの野尻哲也氏。ILS会期中のパワーマッチングでは対面できる時間は20分程度だが、そこでは互いのビジネスへの思いや事業コンセプトを共有して、相性の良さを確認しあったという。

提携内容

容器を食のプラットフォームとして考えるというコンセプトは始めに2社で何度も深く話し合った。というのも、東洋製罐グループの技術領域が広範で、どこから手をつけてよいか分からなかったためだが、ここで両社の思いや方向性を共有し、同じボキャブラリーで話ができるレベルにまでなれたことから、スポット的な提携ではなく、まさに共に価値を創出していくパートナー関係が築けたという。

共同開発の第一弾となった、自然に減塩に取り組める豆腐容器「ソルトーフカップ(Salt Off Cup)」のアイデアは、いろいろ議論を交わすなかで、おいしい健康の野尻氏が口にした「腎臓病患者さん向けの料理教室で、豆腐の空き容器を使い捨ての計量カップ代わりに使っている」という話から始まった。厳密な栄養管理の必要な腎臓病患者が、毎日の調理を少しでも楽にできるようにという発想から生まれた工夫だ。

生卵や牛乳と並び、安価で日常的な白物三品の一つである豆腐の容器であれば、より多くの人に使われると期待して、「空き容器をゴミにせず再利用」「調味料を計量して減塩をしやすく」という方向で議論を深めていった。もちろん、腎臓病など厳格な食事療法が必要な患者にも取り入れやすいものとなる。また、おいしい健康の持つ、レシピサイトやアプリの検索ワードからも豆腐の日常的な人気が明確だったため、大手企業である東洋製罐グループでもプロジェクトのゴーサインが出しやすかった。

そうして、まず当初の使われ方に近い「大さじ1」などの目盛り付きの豆腐容器を作成。次にその発展形として、容器から出した豆腐に1・2・3の数字型のくぼみができる容器を作成。それぞれのくぼみで醤油が何ccかが分かる仕掛けだ。この際にも、おいしい健康がもつ食のデータから、調味料の平均使用量などが提供され、実用的な開発が可能となったという。これは、容器メーカーでは知りえないことであり、かつ、長年つき合いのある食品メーカーでも実は把握できていないもの。データを持ち、食の現場での生きた知見を有するスタートアップとの協業だからこそ、分かり、作れたものだといえる。

さらにくぼみを工夫して和柄にし、少量の醤油でも豆腐全体に行き渡るためにかける分量を「自然と」抑制できる容器が生まれた。これだと、通常150gの豆腐で6~7ccはかけるところ、醤油が下にこぼれず留まるので1ccで済むのだ。しかも、見た目に美しい。「この進化は大きかった」と、東洋製罐グループの三木氏はいう。「減塩を意識させずに、柄が浮かぶことで食卓を華やかにし、おいしさを惹きたてることになる。これこそが、ユーザー体験をうまくデザインすることができた好例です」。

この3種類の豆腐容器は2020年2月にプレスリリースを行い、反響も上々だったという。「バンドが曲を作っていくように、そこにいる全員がアイデアを出し合い、形にしていく理想的なプロジェクトだった」とおいしい健康の野尻氏が語る、この共同開発活動はその後も継続しており、第2弾、第3弾と新たな価値観による食品容器を手がけていく予定だ。

東洋製罐の提携ストーリー

ILSパワーマッチング

商談リクエスト数※1

27

商談数※2

23

後日に再商談した社数
事業提携に至った社数

15

5

  • ※1) 大手とベンチャー双方からの商談リクエスト(商談依頼)合計。ILSでは参加ベンチャー企業を様々な検索軸で検索し、リクエストを行う事が出来ます。また、ベンチャー企業からもリクエストがあります。この仕組みにより、事前に精度の高いマッチングが可能となります。
  • ※2) ILS当日に、事前のリクエストによってマッチングした相手と商談した数。
東洋製罐グループホールディングス株式会社 イノベーション推進室 リーダー
三木 逸平氏

当社はスタートアップ企業との協業経験はほぼなく、アプローチのし方すら分からずにいましたが、ILSで集中して約23社と面談したことで全体観が掴め、今後イノベーション推進室が活動していく上での指標ができました。会期後は2ヵ月ほどかけて各スタートアップ企業のヒアリング内容を、紙やガラスなど素材ごとに分社化されている74のグループ会社の中から10社の技術者に説明して回りました。すると多くの技術者の関心が得られ、5社のスタートアップ企業とのPoCにつながりました。こうして社内で革新的な知見を凝縮できたのは大きなメリットでしたし、特に「おいしい健康」とのプロジェクトでは通常業務とは異なる刺激となったと見え、様々なグループ会社から15名以上のメンバーがプロジェクトに参画しています。コロナ禍で、技術者が自宅に3Dプリンタを持ち帰って試作したものを持ち込むなど、毎回自発的かつ意欲的に参加し、ホールディングスとして理想的な一体感が醸成できたのは大きな成果です。

株式会社おいしい健康 代表取締役CEO
野尻 哲也氏

スタートアップにとって大手企業との協業というのは、「出島」で行う特別なものではなく、主要業務の一つであり、当事者意識を持って取り組むべきものといえます。また、人材などのリソースに限りのあるスタートアップでは、そうした協業をいくつも同時進行はできません。ですから、これと見込んだ大手企業とは、まず互いのビジョンを語り合い、しっかりと共有することが大事でしょう。そうすれば単発の協業で終わることなく、真のパートナーシップが築けると思います。その点で、ILSでは、他のイベントでは出会えないような「本気でパートナーを求めている大企業」との真剣なお見合いができました。そして、イベントにはぜひCEO自らが赴き、真剣に相手探しに没頭するのをお勧めします。貴重な時間を割く価値が、ILSにはありますから。