事例一覧 > 株式会社スペースマーケット x 東京建物株式会社
提携事例
不動産の新しい活用や提案の推進に向け資本業務提携の締結
株式会社スペースマーケットは2018年11月に、大手不動産デベロッパーである東京建物株式会社と資本業務提携を締結。スペースマーケットのシェアリング事業におけるノウハウと、東京建物のデベロッパーとしてのノウハウを相互に提供し合い、不動産の新しい活用や提案を推進していく。
東京建物の背景と狙い
東京建物は明治29年(1896年)に創業、旧安田財閥の流れをくみ120年の歴史と伝統を誇る総合不動産の大手。創業時より明治時代の近代化を不動産の分野で先導すると、戦後の復興を経て、その後は住宅からオフィスビル、都市開発から街づくりへと、多角的に事業を展開してきた。
現在、業績や事業環境は安定的な一方で、社内ではある種の危機感が、自然発生的に生まれていたという。人口減少や不動産供給量の増加、価値観やライフスタイルの多様化などを踏まえた、次の時代に向けた新たな施策を検討しておく必要があるという意識が強まっていた。現場の有志の間では、スタートアップとの連携も含めた新たな取組みを模索する動きが広がっていた。
そういった流れを受けて、コーポレート部門に正式に「共創イノベーション推進チーム」が発足。次の変化を見据えたオープンイノベーションによる事業開発が、全社的な活動として検討が始まった。古澤氏のチームを中心に、広くスタートアップとの連携模索に乗り出したところだった。
スペースマーケットの背景と狙い
株式会社スペースマーケットは、同名のサービスである「スペースマーケット」を運営するシェアリングのスタートアップ。お寺から野球場、会議室から住宅まで、多種多様なスペースを1時間単位から貸し借りできるという、レンタルスペースのマーケットプレイスだ。取扱スペースも1万件を超え(2019年時点)、シェアリングエコノミーの代表格として順調に規模を拡大中である。
代表の重松氏が、初めて東京建物と出会った2017年当時は、これから事業拡大にむけてまたもう一段階アクセルを踏もうという時期。プロダクト・マーケットフィット(製品の実効性の検証)を終えると、ベンチャーキャピタルから追加の資金調達も行い、あとはいかにして規模拡大を図るかというタイミングであった。そのためには供給の問題、つまり貸し出すスペースの在庫をいかに増やすかというのが事業上のキーファクターであった。
そこで重松氏がとった戦略のひとつが、パートナー戦略である。「不動産の時間貸し」という新しい選択肢を、もっと当たり前にするには、既存市場を牽引する各業界大手と組んで、一緒に市場を創造することが必要だと考えた。中でも、不動産大手との連携は重視しており、ILSに参加すると東京建物に商談リクエストを送った。
提携内容
東京建物の様々な事業との連携を目指す中ではあるが、両社はまず、東京建物が管理する物件を、スペースマーケットで貸し出すことから提携を始めている。マンションのモデルルームの定休日や、再開発地域の未利用物件といった、本業では一時的に遊休状態になってしまうような時間や場所でも、プラットフォームに乗せて稼働させることで有効活用に取り組んだ。
そこから発展し、現在は両者が有する機会やノウハウを持ち寄って、新しいビジネスモデルの開発に取り組んでいる最中だ。
言い換えれば、この協業は東京建物にとって、新しいビジネスモデルと付加価値向上の実験場になっている。従来の「固定の顧客へ、長く貸す」という賃貸の事業モデルに対し、「多様な顧客へ、短く貸す」試みである。スペースマーケットも「相手が資本提携まで踏み込むからこそデータやノウハウが出せ、腰を据えて新しい商品開発に取り組める」(重松氏)と評価する。
両者が新商品の開発に注力するのも、「場所はいずれ、体験やサービスと一体で提供されようになる」というビジョンを共有するから。例えば大勢でライブビューイングを楽しむには、場所だけでなくAV設備、通信や映像配信、コンテンツやフードが必要になる。そこには「不動産、ハウスメーカー、家電、通信からエンタメまで、あらゆる業界がオープンイノベーションで商品を開発していく余地がある」(重松氏)。今後は2社だけでなく、多くの企業と協業機会を広げていきたいと戦略を描いている。
普段はマンションギャラリーとして営業するスペースを、曜日限定で貸出す
東京建物の提携ストーリー
- ※1) 大手とベンチャー双方からの商談リクエスト(商談依頼)合計。ILSでは参加ベンチャー企業を様々な検索軸で検索し、リクエストを行う事が出来ます。また、ベンチャー企業からもリクエストがあります。この仕組みにより、事前に精度の高いマッチングが可能となります。
- ※2) ILS当日に、事前のリクエストによってマッチングした相手と商談した数。
東京建物株式会社 企画部 事業開発グループ 共創イノベーション推進チーム 課長 古澤 嘉一氏
今回の業務資本提携が進んだのは、現場同士が積極的になれたおかげです。特にスペースマーケットのご担当者が、東京建物のコーポレート部門から事業部の現場担当者に至るまで、各セクションに提携の働きかけをして頂いたことで、多くのメンバーの共感を得られました。そのようなキーマンの存在が大きいですね。
協業は現場が動いてこそ。私もコーポレート部門のスタッフですが、昨年まで事業の現場にいました。コーポレート部門で窓口を担い、事業部につなげ、現場の仲間を巻き込んでいく。そのような取り組み方で、スタートアップとの協業に臨んでいきます。
株式会社スペースマーケット 代表取締役/CEO 重松 大輔氏
今後も引き続き、新しい時間貸しのチャレンジに取り組みます。テーマ性、ストーリー性のある物件の開発や、新しい使い方や文化を創造したい。そのために、引き続き事業会社と組んでいきたい。
ILSではさまざまな業種の大企業と会えるのが良い点です。提携がうまくいくかどうかは、社風の相性もありますが、何よりも人。互いに共感する人と、出会えるかどうかだと思っているので、積極的にアプローチを続けていきたいと思っています。