ベンチャー創造協議会設立カンファレンスの冒頭では、小渕元経済産業大臣による「ベンチャー創造協議会」設立宣言がされた。小渕元大臣からは「大臣になってからベンチャー経営者、特に女性の経営者に会ってきた。こうした人達が持つチャレンジスピリットを全国に広げ、意識改革のきっかけにしたい」との挨拶があった。
続いて、経済産業省 経済産業政策局 新規産業室 佐々木啓介室長より同協議会の概要説明があった。「新しい時代を担う企業群を形成し、『新しい力』で経済を再生するために、ベンチャー創造の好循環を実現する」と協議会設立の目的をスライドを用いて説明した。
協議会は企業・個人・団体等で構成された緩やかな連携組織として、事務局は新規産業室に置くとともに、「2014年度内に日本ベンチャー大賞(内閣総理大臣賞)を設けて、第1回の表彰をしたい」と概要を発表した。
この後、経済同友会ベンチャー創造委員長・学校法人 グロービス経営大学院学長 堀義人氏とサイバーエージェント代表取締役社長 藤田晋氏によるビデオメッセージが紹介され、それぞれ「大企業とベンチャーの連携が雇用とイノベーションを生み出す」「挑戦する人が増え、1人でも多くのヒーローが生まれることを願っている」とのコメントを紹介した。
株式会社 WiL 共同創業者
株式会社AsMama
代表取締役
KDDI株式会社
代表取締役執行役員専務
新規事業統括本部長
経済産業省
経済産業政策局長
キャスター
千葉大学客員教授
日本のベンチャー企業を取り巻く環境についてのパネルディスカッションが行われた。
登壇者は、株式会社 WiL 共同創業者 伊佐山 元氏、株式会社AsMama 代表取締役 こうだけいこ氏、KDDI株式会社 代表取締役執行役員専務 高橋誠氏、経済産業省 経済産業政策局長 菅原 郁郎氏の4名。また、キャスターで千葉大学客員教授の木場弘子氏がコーディネーターを担当した。
伊佐山元と申します。今はWiLという会社の共同創業者で、代表を務めさせていただいております。WiLはアメリカのシリコンバレーに本社を置き、今日のテーマである、大企業とベンチャー起業の橋渡しをするために、今年の1月に設立した新しいベンチャーといえると思います。
WiLを始めるまでは、アメリカのシリコンバレーに私は2001年から在住しているんですけれども、それこそ始めはGoogleという会社、渡米した当時はGoogleって大学生が使っている非常によく分からないツールだったんですけど、それが大きなベンチャーになり、ちょうどアメリカのベンチャーキャピタルを卒業する頃にはFacebookという会社が上場して、我々の生活を変えたという現場を目の当たりにしました。
その前に日本興業銀行でいろんな事業支援をしてきたんですけれども、この経験で私の問題意識として何があったかというと、アメリカに私が住んでいた10年ちょっとに、1兆円を超えるような事業会社が10社以上生まれているんですね。逆に日本で2000年以降、1兆円を超えている会社があるかというと、それは当然なくてですね、その経済にそんなに違いはない、人の交流にそんなに差もない。でも、日米ではこれだけの大きな差ができていると。
なぜなのかということを、ずっと考えていたんですけれど、一言でいうと私の結論は、日本は大企業に人も巻かれている、ベンチャーに必要な要素3つ全てが眠ってしまっているんじゃないかと。つまり日本というのは大企業が強い。だから日本ではベンチャーというものが社会で役立つ役割ってほとんど無くて、大企業の優秀な人材、もしくは技術、お金でいろんなベンチャーが既にできていたのが、日本の逆に言うと強みなんじゃないかなという発見でした。
ただ、まさに今日本がおかれている状況は何でもかんでも自前主義ではうまくいかない。つまり予測可能なビジネスをやってるうちはいいんですけど、これだけ世の中が変わってしまっていて、現状を打開しなくてはいけない。これからの世の中の動向を読みながら、新しい技術を立ち上げるということは、今までのやり方ではうまくいかない。そうするともう少しベンチャーというものを活用しなくてはいけないということが、私の問題意識で、これの実行部隊としてWiLという会社を設立したという経緯です。
まさに我々は大企業のチェンジエージェントになろうということで、私は事業を始めたんですけれども、やろうとしていることはかっこいい言葉でいうとオープンイノベーションを促進して、その活動を通じて新しい産業を作るような企業に携わっていきたいということで、日本の錚々たる大企業から出資を受けて、出資したお金をベースに、彼らが根を付けるべきベンチャー企業、これは日本だけじゃなくてアメリカも含めて、投資したり、もしくは大企業が既存の事業以外に新しい事業を作る時に、これを自分の社員だけでやるんですか、それとも外部の人と連携した方がいいんじゃないですかということで、我々がビジネスクリエイションという事業を、我々のチームがそれをアシストして、うまく内部の人と組みながら新規事業を立ち上げる。ということをビジネスとして手がけております。
3つめはこの投資事業であるとか、ビジネスを立ち上げる事業というのは現場でいろいろ入り込んでやる訳ですけど、それをいろんな事業会社や大企業、中堅の人にも体験してもらう。資本前に来てもらって、私のオフィスで1年間一緒に研修する。もしくはベンチャー企業とのコラボレーションを実際現場でやってもらう。ということを通じて教育する。そのような事業をやっております。
日本というのは大企業に多くのものが集中していて、それでこれまではうまくいっていたけれど、それだけじゃ伸び悩むし展開も無いから、ちょうど今変わらなくてはいけないギリギリの過渡期みたいな捉え方でいいのでしょうか。
それもあってWiLという会社を、今までいた組織を抜け出して始めたんですけれども、もうすでにこういうチャンスっていうのは滅多に訪れるものではなくて、タイミングというのはあると思いまして、こういったイベントが開かれているというのもご縁という風には思ってますし、逆に大企業がそれだけの力もお金も人材もいるので、これを今後、今までのやり方で10年続けたら危ないんじゃないですか、というのが今の問題意識です。
今日のディスカッションでは危機意識をかなり明確にしていただければと思います。
ありがとうございます。
では続きまして、こうださん。明るいTシャツですが、それはトレードマークでしょうか。
はい。全国で活躍する同じ仲間たちが同じユニフォームを着て、頑張っています。AsMama代表のこうだけいこと言います。私どもは顔見知り同士が子供の送迎や託児を代わり合える環境つくりに取り組んでいます。子育てを支援したい人と支援したい企業、それから子育てを支援して欲しい子育て世帯が、出会うリアルな交流の場作りを、全国で150社くらいの大きな企業さんと連携させていただきながら作るとともに、そのイベントを開催する告知プロセスやイベント現場で、ママサポーターと呼ばれる託児研修ですとかコミュニケーション研修を受けた人達の子育てシェアというネットの仕組みのご紹介をしております。
顔が見える地域交流の場作りを作ろうと思ったのが、大事な子供ですから、顔も知らない子供を預かったり、預けたりするのはやっぱり怖いよね、というのが一般大衆のお母さん方の考えなんですね。ところが地域コミュニティが希薄化している中で、ご近所同士の方々が顔を合わせる機会が無いと。同じ企業の中で子育てをしながら働き、同じ悩みを共有している人達がたくさんいても、会社の中で子育ての悩みを共有しながら、子育てを頼り合おうという機会が無いと。そういったところにママサポーターという地域のお世話役の人達が出かけていって、子育て世帯にPRしたい施設や商材をお持ちの企業様、それから女性の就労支援ですとか、子育て世帯の活躍をしたい企業様のメッセージを、イベントや現場で代わりに子供を抱えてお世話をしながら伝えさせていただく。
その時にいくら顔見知りになっても、いくら親しくなっても、2時間寝たいから子供を預かってとか、忘年会や新年会があるから夜遅い時間まで預かってとは言いにくい。そのなかで都合のつく人を、瞬時に気兼ねなく見つけられるようにするためにインターネットを活用しようと。こういった取り組みをしています。
こういった支援したい人と、支援されたい人が安心して気兼ねなく出会える場や仕組みがあれば、子育てしやすい社会というだけではなく、支援する方が支援をして対価をお礼としてもらい、支援される方は安心して気兼ねなく子育てを頼り、社会で活躍することによって世帯収入が増えます。そうすることによって日本経済の活性化、経済が活性することによって第2子を産みたいなとか、地域コミュニティが活性化することによってシニアの方達のセカンドライフの活躍、虐待の防止、そういった社会課題の根本解決につながるのではないかと思ったのがこのAsMamaを2009年に創業したきっかけでした。
少しだけ簡単に自己紹介をさせていただきますと、私自身は大阪生まれ、大学3、4年を米国に留学をして、これからどんな生き方をするかという周りのアメリカ人の学生に感化され、自分のポジションをあげて、自分のキャリアアップを目指して、社会で活躍するということばかりを考えて20代から30代前半を過ごしました。
環境事業団入社し役員秘書及び国際協力室と二部門兼務。その後、インターネット時代の到来とともにニフティという当時一番大きかったISPの会社に務めさせていただいて、海外事業部の立ち上げですとか、それから同社の上場の担当をさせていただきました。同社を務める間、結婚・出産を経験し、それでも子育て以上に仕事に傾倒して、ベンチャー投資会社に2007年広報IR室長として転職します。
信じて疑わなかった右肩上がりのキャリア一直線だったんですが、会社都合で2009年1月に退職することになりました。上場会社だったんですが9割の人間を解雇すると、こういうことをある日突然社長が発表したこともあって、会社を辞めることになったんですね。
世の中を見てみると、助けて欲しいと思いながら助けてくれる人がいないから、会社を辞めざるおえない人がたくさんいる。一方で夫婦から子供が二人も産まれない時代です。子供が小さいうちは子育てに一杯愛情や時間を注ぎながら子育てをしたいと思っている方もたくさんいる。そういう方々が頼り合えることによって、社会は良くなるんじゃないかと思って起業した訳ですが、何をどうしたらそんな社会課題が解決できるかというのを分かりませんでした。
これまでは名刺一枚でもある程度どんな受付でも通していただけたのに、株式会社AsMamaという全国で頼り合いのプラットホームを普及させたいという会社ですと名刺を渡しても門前払いを受けたりとか、これまで前職、前々職で付き合いがあった大企業さまともなかなかお目にかかることができないという状態でした。
ところが、本当に企業が上手くいくというのは人ですね。AsMama自体もこういう人に会った方がいいよ。こういう機会があるからぜひパネルとして出てください。この人に相談すると何か力になってくれるかもしれないよ。そうやって紹介していただくのは、だいたい大企業の本当に人のネットワークのある方々で、そういった方々がじゃあちょっと試しにウチでやってみるとか、ウチのリソースを使ってみるといって、声をかけていただいて、ようやく創業して5年、子育てシェアという年間1万5千人くらいが口コミで登録をしていただけるようなところまできました。まだまだ手探りで、100m走なら50cmくらいしか進んでない感じなんですが、今ここに座らせていただいている状況です。
ありがとうございます。お話を聞いていて、すぐに入会したい気持ちになりました。女性に社会進出してくれとか女性が輝く社会とおっしゃる割には、なかなか受け皿というものが用意されていなくて、女性が自分のライフプランを描きにくいところがございますよね。私ももう息子は20歳になりますが、彼が2歳くらいから働きだした時に保育園の150人待ちが9年続いて、やっと解消された時には中学に上がる歳で、それでも私は市役所に言い続けましたけれども。ところで、システムについてですが、お知り合い同士の中で、お支払いはワンコインでよろしかったんでしたっけ。これで気持ちよくできるものですかね。
そうなんです。どうせ子供を見てもらうのに、チョコレートを持っていったり、シュークリームを持っていったりしなくちゃいけないんですけど、お母様方は悪気無く、この間どこそこの子供を見てあげたら高級チョコレートをもらっちゃったとか言っちゃうんですね。そうすると、私この間見たもんって言っちゃったみたいな。みたいなところでまたそれが、変な噂や気遣いになったりするので、そこは1時間500円、登録料も手数料も何もかからない、ありがとうの気持ちを込めて支援してくれた人に直接渡そうと、いうことで運営しています。
ベビーシッターを呼んで時給2000円とか2500円支払ったら、自分が働いてもマイナスになっちゃったりしますものね。
何よりいいのが、子供が知らないおばさまが来るというのではなくて、お友達のお家に遊びに行く感覚なんですね。見てくれているお母さんも、これまでは専業主婦だったのに、周り近所の人を助けてちょっとした収入が入ると。お礼が入ると。それなら子供に見せてあげられると。という風な昔ながらのご近所同士のつきあいを、いまの時代に合わせてチューニングできていると思います。
では続きまして、高橋さんお願いします。
私はKDDIで新規事業をやっていまして、この会社が10人くらいの時からおります。そういう意味ではベンチャーだったのに、こんな大きな会社になっちゃったというのが今の状況なんですけれども。
実は今日、虎ノ門ヒルズにお邪魔して、ここが第二電電の創業の地と分かったんです。昔、虎ノ門に34森ビルというのがありまして、そこがDDIの創業地なんですね。ちょっと驚いています。
我々も携帯電話を始めてからずいぶんたちますが、自分たちだけのサービスでは駄目ですね。いろんな人といろんな人達とお客様にアプローチしていかなきゃいけない時代というのが、実は1999年頃から始まっています。携帯電話がインターネットとつながった時代から、そういうことがスタートしています。
それでコンテンツプロバイダの方と一緒に、お客様に新しいサービスを提供していこうと考えました。世界で初めて起った大企業とベンチャーのイノベーションだと僕は思っています。それがそこから10数年たって、携帯電話がスマートフォンに代わって、いろんな海外の事業者が入ってきて、いろんなプレーヤーの人達がお客様にアプローチするようになった。全ての端末にインターネットが入ってくる時代に、スタートアップ企業が果たすべき役割は非常に大きいんだろうなと思うんですね。
その人達を支援できる仕組みを「KDDI∞Labo」を11年にスタートしたんです。渋谷のヒカリエの中に集まっていただいて、いろんなことができるような、そういった施設を作っています。
大企業としてベンチャーとの連携を積極的にやっているということですが、KDDIさんもベンチャー精神が旺盛と思ってよろしいでしょうか。
そうですね。80年の電気通信自由化がありましたが、その時に元々あったNTTさんとか大企業さんの役割が非常に重要だった。それから新規の参入を育ててあげようという大企業がいて初めて競争が活性化されていったと思います。
続いて、菅原局長、お願いします。
簡単に自己紹介をさせていただきます。私は1981年、昭和56年に通商産業省に入りました。この時はどういう時かというと、バブルの絶頂期でした。日本経済がイケイケドンドンで、ジャパン・ナンバーワンという本が出て、日本経済はこのまま突き抜けるんじゃないかと、経産省の予算も右肩上がり、税制要求は何でも通るというような時代でありました。
その後バブルがはじけて、1990年代の後半にはアジア金融危機を始めとして、その後にリーマンショックも起きているというところで、今から振り返れば、まさにデフレの失われた20年、デフレ後の15年間というところで、いろんなことをやりますけれども、打つ手がなく日本経済はここまできたというところだったのだと思います。その中でここ数年間、研究開発の局長をやって、その後製造担当の局長をやって、その時は日本経済の光明が見えないという状況でございまして、リーマンショック、その時には東日本大震災、福島第一原子力発電所の事故も起きたというなかで、むしろ悲観的な状況に陥っていた。いろんなことがありましたけれども、政権交代、自民党の再建に一昨年12年12月に、自民党政権下である意味で、日本経済このままでは駄目になると思っていた時に、政策の転換を果たせるチャンスが来たというところで、たまたま私も経済政策を担当するポジションにいたということが重なりまして、今経産省の局長と合わせまして、いろんな経緯で甘利大臣のもと内閣官房の日本再生事務局長というのをやっておりまして、骨太と成長戦略を担当している局長を兼務しております。
その中で総理や官房長官甘利大臣、経産大臣茂木さん、次は小渕さんですけれども、考えは皆さん一緒でして、日本経済のラストチャンスじゃないかなという想いは、本当に強く持っています。その意味では今までの延長線上に答えがない以上は、大胆なことをやっていく必要がある。しかし、国ができることは限られている。我々ができることの最大のことは経済の実際のテコ入れというよりは、皆さんのマインドを変えるしかないんじゃないかと。第一の矢、大二の矢、第三の矢といいますけれども、あの本質は、デフレでまさに下を向くしかなかった時代から、前に向かってマインドをチェンジすること。というところが政府最大の役割ではないかと。第一から第三の矢の本質は全て、まさにそういうことであると。
その中で、これもみんな想いが一緒だったんですけれども、やはり天啓はベンチャーじゃないかと。マインドの変化で日本経済が本当に変わっていくのを図るとすれば、株価なんかじゃなくて、ベンチャー企業がどれだけ元気になれるか、もしくはベンチャー企業を目指す人がどれだけ増えるか。こここそがリトマス紙ではないかと。もちろん最初のうちはベンチャーは小さくしか経済に影響を与えないかもしれませんが、1980年以降に設立した会社がどれくらい占めているのかというと、ここにあるようにアメリカは優良企業の3分の1は全部新しい企業。日本はそれが8分の1。これでもかなり下駄を履いた数字です。 世界に冠する従業員をいっぱい抱えている企業のうちで、この30年間で生まれた日本企業というのは本当にわずかでして、先ほど伊佐山さんが言いましたけれども、思い起こせば日本の大企業は昔、かなりのところがベンチャーだったんです。
やはりこの流れが停まっていると。これはもう一度ある意味で起動させることができるかどうか。というところが本当の日本経済がここ25年間の停滞から立ち直れるかの唯一の案です。まさにそれをやることこそが政府に与えられた、ということでみんな始めております。
今のところベンチャーと考えるとですね、いろんなことやってると思うんですけれど、4つくらいに分類するとすれば、おそらくネット系とストリートファイター系、これは今盛んなベンチャーとしてかなり生まれつつあるし、これまで引っ張ってきた。おそらくこれからはこれ以外のところがどれだけ本格的に日本で立ち上がるのか。
例えばインフラ系ですとか、まさにここが日本の生産性が低い部分、大企業病と言われる特質といっていいものです。
ここに新しいベンチャーの人達がインフラ系であれ、小売りですとか食品、アパレル含めて、こういうところで大企業でできなかった新しいベンチャーを作れるかどうか。少子高齢化のなかで、むしろ新しいビジネスチャンスが生まれるのではないかと。おそらくもう大企業は設計してますので、大企業とベンチャーの連携というのは、ここから必要性が出てくるのかなと。
もう一つは大学発ベンチャー、テクノ系なんですけれども、これは正直に言ってどうなるか分からない。リスクがどうなるか、ビジネスモデルがうまくいくのか、ここについては残念ながら、大学発ベンチャーがあれだけ言われてもなかなかものにならない。あと民間の中でもベンチャーそのものではなかなか生まれてきていない。あとここには技術系の大企業、みんな壁にぶち当たってます。日本人にはものすごい能力が潜在的にあると思いますので、これらが一緒になって大きくできるような。そういうある意味ベンチャーのエコシステムを作っていけるかどうか、これからのポイントじゃないかなと。
冒頭でこれだけしゃべりましたので、僕が言うことは尽きましたので、あとはお三方が気持ちよくしゃべれるように、サポートしていきます。
ありがとうございます。国の最前線で改革をやってこられた、力強いお言葉でありました。伊佐山さん、本題に入る前に、今の菅原さんの説明に関連して、ITサービス系は活発ですけれども、他がいま一つというところで、何かアイディアはありますか。
日本の場合、ここに集約してしまったという理由があると思うんです。1つは、リスクキャピタル、投資する原資というのが日本は圧倒的に少ないんです。例えば、この直近の四半期、1年分の日本でのベンチャーの投資ってだいたい700億弱だったんです。アメリカはどうだったかというと4兆円近いんですよ。ものすごく差がついている。57倍くらいですね。さらに、3年目くらいのベンチャーに2兆円くらいお金を出すんですね。そうすると6兆対700億の差、100倍はいかないんですけど、それくらいの差が1年間でついている。
だからアメリカではお金がある訳ですから、インフラ系のベンチャーから、飛行機や宇宙旅行というベンチャーもありますし、ストリートファイター系やら、アパレルや外食をやろうというベンチャーもあります。また、それこそシリコンバレーに代表するテック系などは、いくらでもお金を出す人がいるんですね。
日本の場合は、出したいと思っている人がいても、最後には誰かがリスクを負わないと。そこには何も生まれないんですよね。
今は政府がいろいろファンドを立ち上げて、そういう動きを支援している訳ですね。 これからだんだん変わると思うんですけど、現時点で見てしまうと、思っている以上に日米で差がついてしまっている。ということが1つの大きな要因になっているんじゃないかと。
それでは自己紹介が終わったところで、最初のテーマに入ろうと思うんですが、最初はやはり、ベンチャーと大企業の連携をいかに強化していくか、ということについてアイディアをいただきたいと思います。
ベンチャーという新しい挑戦をして、機動的に行動ができるけれども成長するに際しては、資金、人材、取引先などをめぐって壁にうち当たってしまうところがある。一方逆に大企業は、資金、人材、取引先はあるけれども、斬新なアイディアの創出が苦手で新規事業開発にも悩みを抱えているという。こういうジレンマがある感じですけれども、もっとベンチャーと大企業が繋がっていけば、大きなイノベーションが生まれてくると言われております。そこで、どうしたらいいのか。
先ほどの伊佐山元さんの自己紹介にもございましたが、アメリカではGoogleやFacebookがベンチャーをM&Aしながら大きく成長していると聞きましたが、日米のベンチャーと大企業の関係について差がありますか。また、こういうことに関してWiLはどういう風にアプローチしているか、この辺りお願いします。
我々WiLは、シリコンバレーのメソッドを全部日本でやれって上から押し付ける訳ではありません。例えば中国なんかは2000年くらいからアメリカの資本主義をうまく導入して、ベンチャーをどんどん増やしてうまくやっているんですね。
ただ日本には日本のオリジナルのやり方があると思っていて、いきなり大企業にM&Aもっとやってくださいと、役所が言ったところでやれる訳はないし。先ほども申し上げましたようにM&Aするというのは、人材だったり技術を買う訳ですから、大企業が外に、自分たちのところよりセンスのいい人間がいて、自分たちよりいい技術を持っている会社がなかったらM&Aやれると言われても、弾がない訳ですよね。アメリカの場合は、優秀な人材が大企業に就職せずに、ベンチャーに行く訳だから結局M&Aが多いのは当たり前と言えば当たり前の話であって、別にアメリカがすごい訳でもなんでもなく、単純に言えば教育も含めて、アメリカでは優秀な人が名のないベンチャーだとか中小企業に行って、経験を一杯積んで、大企業に買収されるというモデルを良しとしている社会。日本の場合は優秀な人が大企業にどうしても行ってしまうので、そうそうM&Aと言っても材料がないからそんなにいいM&A先と言っても数もないし、まだそういう構造になってないというのが問題だと思うんですね。でも日本の場合はこういうことをやっても、ベンチャーと大企業の壁って埋められないんじゃないかという議論になってしまうので、私なりに今回意識しているのは、大企業の中に面白い斬新なアイディアがないわけではなくて、実際あるんですよね。それが何らかの形で顕在化していない。それは意地悪な上司がいるところですね。経営が全然聞いてくれない。
いろんな理由がある訳ですけど、そこにうまく僕らが入ることができれば、もしかしたら大企業の中に眠っている面白いアイディアだとかビジネスのアイディアというのも、いちいち社内の決済の内容を通さずに、我々が手伝ってあげるというのができるんじゃないかというのが、1つの日本的なベンチャーの育て方。
大企業のなかにベンチャーを作ろうという動きもありますが、組織の中で社員がやっているから、かなり制約があると思うんですね。ベンチャーというのは、いかに中立的な立場の人が、非常にドライな目で、儲かるかどうかを判断して、これが技術的に面白いかどうかを判断して、投資する。
事業会社がやった場合、ドライな目では見れない構造になっていますから、我々のような第三者的な組織があって大企業とベンチャーをつなぐ。もしくは大企業の中で非常に面白いアイディアがあるんだけど、自前で新規事業にするといろいろと潰されちゃうんで、我々に預けてもらったほうが早くうまくいくんじゃないか。当たり前のことをやっている訳ですけど、いろんな大企業の人と話してみると、それをちゃんと実行部隊として形としてできているのは少なくて、意外と皆さんこういうのやらないといけない、やっぱり自前でやろうか、他人にやるのはやっぱり不安だとかですね、技術が流出するとか。いろんな理由があるんですけど、本当に実行している会社は意外と少ない。我々が信頼できるアウトソースのパートナーもしくはイノベーションを外から刺激を与えるための組織として、なんとかベンチャーと大企業を結びつけようということで動いているんですね。
なぜベンチャーにこだわるかというと、1つの良い事例があるのは、先ほどちょっと申し上げましたが、日本の場合、ベンチャーはまだ小さい。1兆円を超えるような売上があるベンチャーってほとんど出ていない。中国はどうかというと、アリババがニューヨーク証券取引所に上場したんですね。時価総額で言うと25兆円くらい。これはどういう規模かというと、たぶん世界最大の上場だった。アメリカだけじゃなく、世界最高の時価総額で上場し、2兆円以上の資金を調達してデビューをした。
この会社は、中国にいた英語の先生が始めた会社なんですね。1999年に彼が自分のアパートに彼の奥さんと仲間を10何人集めて、自分たちのなけなしのお金600万を出して作った会社。彼が15年ほどでトヨタを超える会社を作っちゃったんですね。しかも別にものすごい会社で修行した訳ではなくて、二浪して外国語の学校に行って、コーチを学んだ。
その人が中国からグローバルカンパニーを作ろうといって、自分のアパートで大号令をして、コイツ何言っているんだと、皆に思われながら始めた会社が、15年経ってみたら25兆円の会社としてアメリカでデビューした。ということが起きている訳ですね。
僕はそこに実際に投資していた孫さん、孫さんは実はうちの32%の会社を持っているんですけど、それがすごいなって思ったんですけど。
ベンチャーのすごさっていうのは、そういった意味で、別に高尚な技術を持っていなくても、ある1人の個人のパッションで人が引っ張られて、10年15年という非常に短い単位でそれだけの大きなインパクトを与えることができる。というが僕が学んできたところで、中国には実はこういう話っていっぱいありまして、せっかくなのでお話ししました。
これは日本でできない訳はないと思うんですね。今回も、ベンチャー創造協議会、こういう組織、過去にもいっぱいできましたけれども、10年後に少なくとも1社くらい、大企業が振り向くぐらいのベンチャーが生まれないと、かっこ悪いかなという想いで、私は今1企業としてベンチャーの支援と仲立ちというのをしていきたいと思っています。
ありがとうございます。中国の例もありましたけれども、日本の大企業というのは変わりたいという気持ちは持っているけどそれが具現化されていないということと、やはり決済を通していくとどんどんスピード感が落ちて、その間に良いアイディアを他が使ってしまうということもある。また、ドライの反対の情の部分が大きくて、そういうしがらみの中で取引をしていて、そこから抜け出せないような。そういうところが変わらないといけないんでしょうね。
やはり一対一で変えられる限界ってあるので、我々みたいな者に任せる、失敗したらあいつらのせいだで、成功したら俺らのもんだ、っていう風にやっていった方が安いんじゃないですか。我々は思う存分トライさせていただく。という風に役割を分けていくべきかなと思う。
続いて、こうださんに伺いたいと思いますが、AsMamaの事業を展開していく中で大企業との連携もありそうですが、苦労されたこと、反対に嬉しかったことなど。
一番苦労したのは1年目で、そもそもベンチャーって何だという話なんですけど。誰もやったことがない事業をこれから経済的に収益を得ながら、やっていこうというパイオニア的な存在をベンチャーと勝手に思っているんですが、初年度は実績がないんですね。なので、これからこういう社会を作っていきたいんだ、こういうサービスを展開したいんだということを申し上げても、実績あるの?と。その実績がない。この実績がAsMamaでやっていても、大きな企業様と組み始めた時に、そこがやっているんだったらうちもやろうかな、うちもやってみようかな、みたいなことがドンドン芋づる式に広がってくるというのがあるので。本当にベンチャー企業を立ち上げようと思ったら、お金より先に実績を持たせて欲しいとすごく思いますね。
もう1つは、私自身大きな会社の中で新規事業をたくさんやらせていただいた訳なんですけれども、大きな会社の場合は、目先の利益は、リターンは、成果は、効果はとそんなすぐには聞かれないので、半年、1年くらいは失敗しても見守っててもらえる。そういう期間があります。
ベンチャーもやはり失敗するんですね。こういう成果が出せると思います、という仮説をたてたものをやってみたら失敗すると。その失敗をある程度の期間、ぜひ見守っていていただきたい。
ただ見守るだけではなくて、もっとうまくいくようにするにはこうしたらいいんじゃないか、ああしたらいいんじゃないかという大企業様だから持つ知恵・知識・ノウハウというものを費やしていただくことによって、立ち上がりってものすごく早くなります。
KDDIがやられているコンソーシアムみたいな形で、大企業様がメンターとなってベンチャー企業に実績を持たせてやろうという、入れるものなら私も入りたいと今からでも思うくらいです。本当にそういう機会があることで、ベンチャー企業というのはこれからもっともっとチャレンジしたいと、もっともっとやれるんじゃないかというような存在になっていくんじゃないかと思っています。
ありがとうございます。それから先ほど控え室でお話を聞かせていただいた保険の話をぜひ、ご紹介下さいますか。お子様を預けた時のケガですとか、アレルギーのあるものを食べたとか、そういう時に保険が心配だったのですが。これもご自身の粘り強い交渉で初めての保険を獲得したということで一言いただけますか。
そもそも支援したい人と支援されたい人が安心して気兼ねなく出会う、プラットフォーム、インフラを作りたいといった時には、すごくおこがましいですけど、全員が全員、10人が10人、100人が100人、この人は馬鹿なんじゃないかと言いました。
特には大事な子供を預かったり預けたりして何かあったら、他人事では済まないというのが私自身もすごく思っていましたから、創業したのと同時に、ありとあらゆる保険会社さんに片っ端から電話していくと、皆さん仰るのは、会員1人あたり年間1万円ほどの保険料ですよと。そうすると500人だったら500万、1000人だったら1000万、1万人だったら1億円みたいな。どベンチャーが1億円の保険料を支払える訳ないじゃないですか。本当にもうしつこくしつこく、丸3年半、暇さえあれば保険会社さんを回ってですね、イギリスにも保険会社にまで電話をかけて、保険を作って欲しいみたいな話をして、でも相手にされず。
でも最後はやっぱり人ですね。前職のつながりである損害保険会社の方が横浜に赴任されるという連絡をもらったのをいいことに、就任のご挨拶と伺って、そしてお願いがございましてということで、直談判をしに行きました。顔見知り同士だからこそ本当にお互いを大事に思って、頼り合い支えたいと思うんだと。ただそこに保険がないことで、手を差し伸べられない人がたくさんいるんだということを語ったところ、その事業部長さんがなんとかすると言ってくれまして。なんとかするから、ちょっと待てと。というところから3ヵ月半、おそらく無理を通して作っていただいて、おそらく日本で初めて、すべての支援者に最高5000万円までの保険が適用できるという、そういう仕組みができたという経緯があります。
AsMamaに入る際に保険があるとないとでは大違いで、安心感として大きな差になりますよね。人のやらないことをやるということは大きなことですし、それから信念ですね。これをやり通すんだというのが非常に伝わってきます。
さて、お待たせしました高橋さん。KDDIは先ほどの∞Laboのお話をもう少し伺いたいのですが、成果が出てきて他の会社も参入してきてということで、非常に上向きな感じでございますね。
伊佐山さんも、大企業が終わりまでやるなよ、全部俺に任せろというお話でしたが、我々も一生懸命に苦労してきましたという話なんですよね。結局、もともとベンチャーさんとお付き合いするために、企業側がやっちゃいけない部分というのが、シナジーを急ぎすぎることなんじゃないかなと思うんです。
企業側がシナジーをもったベンチャーをM&Aしてもらうにしても、すぐに我々の会社にとっての利益はいくら儲かるのか、ということを一生懸命、取締役会で言うんですよ。これが一番大変なことなんだろうなって思うんですね。例えば通信会社でいうと我々のシェアが3割あります。ある企業さんに投資をかけますと、この投資をかけた会社に「auのユーザーにとって一番いいものを作ってくれよな」って言った瞬間に、彼らの市場は3割になっちゃうんですよ。だってauユーザーっていうのは3割しかいない。これをシナジー効果を急ぐっていうということだと思うんです。
ただ、役員会などでシナジーがない投資なんて認められないだろうみたいな話になってくるのが、一番の課題だと思うんですね。
それが1つと、やはりどうしても、自分たちの事業の発展のためにって感覚でいますよね。
その感覚のままだと、昔のコーポレートベンチャーファンドが全て自分達のシナジーにしようとして、どんどん撃沈して行ったようなことが、また起るんじゃないかなと思うんです。
そういう意味で、当社はKDDI∞Laboを作ってみて、いろんな大手企業の方もいらっしゃいましたけど、来ていただく時の条件は、シナジーを優先するんだったら入らないでください、というのが基本的な条件です。
こうした取り組みというのは他社との差別化というかブランディングというか、かっこいいことやってるな、という評価にもなるのでは。
そういうブランディングにも当然繋がると思うんですね。ただベンチャー企業に投資するという意味は、その会社も大きくならないと意味がないじゃないですか。最終的にはいつか自分たちのところにも返ってくる。ちょっと長い目で見た投資をやっているんだと。
なかなか長い目で見られないものですがね。
それができるのが大きな会社の利点なんじゃないかと。それを逆説的にみたら我々の企業としての役割というのがあるし、結果的に我々にもプラスになるんじゃないかなと思っています。
伊佐山さんからも一言あるようですね。
高橋さんがおっしゃっている大企業の心と、ベンチャーキャピタルの間って、まさにそれが理想像だと思うんです。
今日このイベントに参加されている大企業の方を含めて、コーポレートベンチャーというと、どうしてもシナジーとか、うちにどう役立つかとか、完全に上から目線のアプローチが、圧倒的に多いんですね。それはいろんな理由があって、別に現場の人が上から目線でやっている訳ではなくて、やっぱり社内の稟議を通すためには、そういうロジックがないと役員会通せないとか、すぐ見える、うちにとってプラスになるということが説明できないと、いきなりお金を出すことはできない、といろんな理由がある。結局、形で入っちゃって、これがまさにベンチャーの成長を妨げる大きな要因になるということは考えられます。
高橋さんが仰っているように、そういう形でのコーポレートベンチャーの場合はだいたいがうまくいってない。逆にコーポレートベンチャーでうまくいっていると言われていたアメリカのGoogleベンチャー、あとIntelがやっているIntelキャピタル。自分たちの事業とは全然関係ないんだけど、世の中を変える技術、とにかく自分たちでも分かんないやつを探してこいということで投資するんですね。
分かりやすい例で言うとFacebookとかTwitterとかがベンチャーだった時のことは、多分ここにいる会社の人は誰も知らなかったし、完全にあんなの若者の遊びだと言って馬鹿にしていたと思うんですけど、Facebookだって今や10兆円を超えている会社な訳ですし、Twitterもしかり。要は実際にビジネスになっている訳ですよね。結局、ベンチャーというのは、大企業の常識、もしくは頭がいい人がいっぱい集まって議論したものの外に飛び出ないと駄目なんで、そういう意味ですぐに役立つとか、すぐにシナジーって言う観点だけではなくて、自分たちの常識を超えるような視角を持って、ベンチャーのモチベーションのあり方だとか、ベンチャーのファンドを運用しない限りは、僕は正直そんなにおもしろいものは出てこないと思うんです。
日本の大企業が変われば、もっともっと日本の大企業から面白いベンチャーとか、新規事業が生まれるはずなんですけれども、残念ながら私が知らないというのは、そこまでちゃんと理解している大企業というのはまだ少ないので、ぜひお手伝いさせてください。
ありがとうございます。菅原さんはいかがでしょうか。
私は商売をやっていないものですから、そういった意見は言えないんですけれども、経産省に長くいると、いろんな業種の経営者の人、現場で働いている人と話す機会が異様に多いんです。その中で感じるのは、大企業とベンチャーの出会いといった時に、大企業の経営者の人と話して、大きく二つのことがあります。
1つは、ベンチャーのことは、私は関係ありませんからという。今までのやり方をしっかりとやり抜くことが、会社が今後生きて行く唯一の道だと思いますと。脇道はいかないし、脇目もふりません。これも1つの哲学だと思います。
もう1つは、そこからまた2つに分かれるんですけど、中途半端に危機感を抱いている経営者の方がものすごく多くて、その経営者の考えというのもベンチャーとの付き合いどうしますかと聞いた時に2つに分かれるんですけど、ベンチャー使ってやろうかな、ちょっとのぞいてやろうかな、いいものがあったらうちの会社でも活用してやろうかな、というぐらいの危機感を持つ人と、もう1つのケースの人は、ベンチャーに会社全部じゃないですけれども、賭けようかなとというくらいの危機感を本当に感じている人。
ベンチャーに賭けようと思っている会社と、ベンチャーを使ってやろうかなというのでは、経営者と現場の人とで2層構造になるのでパターンが分かれてですね。要するに現場の人はものすごい危機感なんでベンチャーに我々は賭けるしかないんだと、さっき言った社内稟議を通すだけでも必死にやるんだけれども、経営者が使ってやろうかなと、うちに取っては何の足しにもなるんだというので潰れてしまう。そんな風に考えています。
逆に社長がものすごく危機感を感じて、事業に対して俺達と組めるベンチャーをお前ら命がけで探してこいと言うんですけど。今度はその現場の人に危機感が全くない。それこそサラリーマンですけど、社長・会長にあげる前に現場の人が詰め潰してしまって、結局うまくいかない。
今回、ベンチャー協議会にいろんな出会いを我々は期待しているんですけど、今言ったような、経営者も現場も直接ベンチャーと話をする人も、ある意味で危機感を感じていれば社長から現場まで1つの通った筋をいくつか通すことによって、現場の人にも刺激を与えればいいし、いろんな各層、各レベルで意識変化が起こるようなことを、このベンチャー協議会を通じてやれるといいなと期待しています。
どうもありがとうございます。さて、次のテーマ、これは大きなテーマですけれど、やはり大企業のジレンマというか、大企業発のベンチャースピンオフ促進について伺いたいと思います。メインテーマの割には後15分ほどしか時間がありませんので、少し飛ばしてまいりたいと思うのですが、ちょっとこちらをご覧いただけますか。
経済産業省の調査で、日本の大企業は新規事業を模索しているけれども、現状の新規事業開発に満足している企業は全体の3割にも満たない、ということで本日お集りの大企業の新規事業の皆様方も、新しい事業を提案しても市場規模が小さいと言われたり、主力事業とバッティングするから駄目だと言われたり、既存組織で対応できる人がいないと言われたという理由で、さまざま採択されずにご苦労をされている方もいらっしゃると思います。こういった大企業の中には有効活用されない人材も埋もれているのではないかという風に思いますけれども、これをもっとスピンオフして独自の意思決定権を与えて外の資源と結びつければいいのでは、という風に皆さんお考えだと思います。
さて、この大企業発のベンチャーを促進するためにはどうすべきかということについて、こうださんに伺いたいのですが、こうださんは大企業で働いた経験もあり、大企業の中で新規事業をやろうというとベンチャーが立ち上げる新規事業とはだいぶ様相が違うということでしょうか。
全然違いますよね。やってる本人自体の意識も全然違ってですね、やっぱりベンチャーで事業であるためには、収益を上げなきゃいけない。その収益を上げるということに、どこまでストイックになるかというのは、外に出てみて初めて本気にならざるを得ないというところは、すごくあったなという風に思います。
ありがとうございます。高橋さんに伺いますが、KDDIの中ではこの辺りどのような取り組みをなさっているのでしょうか。大企業がイノベーティブであり続ける、新規事業をうまく創出し続ける、こういったことの方策というのはございますか。
新規事業にも色々な形があると思うんですけど、今気になる再生型エネルギーであるとか、そういう新規事業というのは、社内で考えていかなくてはいけないと思うんですけど。そういうのはやっぱり経営のコミットだと思うんですね。
我々の会社の場合、例えば新規事業を作る時に、本社から離れた新しいオフィスを作ってあげて、そのオフィスは何をやっているかというと、ベンチャーと同じ目線で話ができる環境をまず作らなくてはいけないと思うんです。
KDDI本社だと、まず会社に入る時に受付を通らないといけないわけで、そこには来て頂きづらいじゃないですか。ちゃんと同じような時間帯・フレックス的に働いて、カジュアルな格好をして、それがいいばっかりではないんですけど、同じ目線で働けるような環境を作って、そういう企業に、先ほど菅原局長がおっしゃったように、新しいベンチャーと組んでいくことが、企業の成長にしっかり繋がっていくんだということを、コミットできるかっていうのが大きな点です。
そういう環境づくりが大事だということですね。人と人が接するということ。
同じテーブルの中に、こっちはスーツをバシッて着ていて、ラフな人もいて。どうしても目線が混乱しちゃうじゃないですか。そういうのがベンチャーの人って一番嫌で、提案書を持って行ってOKだったら、すぐに帰ろうっていう会社になっちゃうと思うんですよね。だから同じ目線で、来ていただいたらすぐに応接間に通して話を聞く環境にする。こういうことってすごく大事ですよね。
こういう配慮をしてくれる会社って少ないでしょうね。だからベンチャーってTシャツっていうイメージがあるんですね(笑
さて続いて伊佐山さんにお伺いしますけれども、先ほど最初のところで、WiLさんでは大企業の新規事業の担当者あるいはコーポレートベンチャーの担当にシリコンバレーに駐在してもらって、ベンチャーの本場でオープンイノベーションの真髄を身につけてもらうという話があったんですが、これはどんな事業かもう少し詳しく教えていただけますか。
発言に出た企業って実はシリコンバレーに拠点を持っている会社が多いんですね。今回ポイントだと思うのは、ソニーさんにしても、日産さんにしても、研究所とか営業の拠点を持っているんですけど、どうやって社内でもうちょっとイノベーションを起こすかとか、スピーディーに新規事業を立ち上げるかっていう、今まではアメリカで営業したいとか、アメリカで調査したいとか、全然違うミッションでやっていたと思うんですけど、違う観点で今我々のオフィスに人が短期で調査や駐在で来たりということをやっているんですね。これのポイントはベンチャーと大企業の差だったんですけど、いくつか経験があってですね、大企業の場合というのは大企業の看板ですとか守られている環境で色々な仕事をしているんで1回は外に出て、2回目はベンチャーがきつい状況で非常に人も金もモノもない中で、いかに悲惨な状況でやらされているかというのを同じ気持ちになってくださいというのが1つですね。
これは現場を見ることができれば、WiLが出資した会社にしばらく行って、丁稚奉公してくださいみたいなことができると一番いいんですけど。そういったことを今後やっていきたいと思っています。
これは結構大変で、ベンチャーを知らない人が受け入れるなんてそんな暇はないですから、我々がちゃんとした人をスクリーニングして、この人はきっとこのベンチャーに行っても役に立つんじゃないかみたいなところをウィットして捌かなくてはいけないという問題点はあるんですけど、もっともっと大企業の人が1回外に出て、外から冷静に本社を見てベンチャー的な現場を見るっていうのがオープンイノベーションへの第1歩かなと思っています。
それ以外は実際投資したりだとか、高橋さんが言っていたようにインキュベーションオフィスを運営したり、そういうノウハウはシリコンバレーにはごまんとありますから、そういった手続きに行ったり、現場を見たり、我々自身もアメリカでそういう活動をしているので一緒にそれを手伝ってもらうことによって、彼らが会社に戻った時に自分の会社のコーポレートベンチャーというのを立ち上げてやってくれれば、我々のミッションはコンプリートかなと。
我々が全部アウトソースして我々にずっとお金を払ってくださいということではなくて、我々から学んだらどんどん自分でやってくださいという。日本にはまだまだ我々の知見を必要としている会社がいくらでもあると思っているので、まずは現場を知ること、大企業が新規事業を開発というのをもっと真剣に考えるきっかけなればいいかなという風に考えています。
実際にお連れして駐在してもらって、皆さんの反応というのはどうですか?
まず大企業の若い人で仕事が出来ないような人の残念な派遣先にならないように。これは結構こだわっていたんですね。つまりは片手間に来てもらっては困ると。
シビアな要求ですが、「私は何やればいいんでしょうか」と言われるのは困るわけです。私のオフィスに来て仕事が整理されている訳ではないんで、私の前に座って「今日から私は何をすればいいんでしょうか」というのは困ります。
受け身なんですね。
確かに大企業ってそうだったんだろうと。やることがいくらでもあったんですね。会社に行けば。でも今回はない訳です。私自身がベンチャーを立ち上げている途中なので。
じゃあ、こういう業界を割と見ているので、一緒に調べるのを手伝ってとか、一緒にイベント行ってもらうんですね。例えば、自分の産業と全然違う業界のイベントに行って、シリコンバレーってジーンズとTシャツの若者ばかりで、こっちはスーツとネクタイで行ったら、それはカルチャーショックになりますよね。言葉の壁も多少あるし、まぁ我々は英語で問題のない人を送ってもらっている訳ですけど。それでも当然カルチャーショック、言葉の壁に、まず始めの2、3ヵ月は毎日が驚きと、ガッカリの繰り返しになるというのを見ています。でも3ヵ月も経つと、まず服装が変わるんですね。
感化される?
結構いい歳した人がジーンズとTシャツで来たり。それで全然若いベンチャーに会うのが抵抗なく、すごく自然体になっていて。今直面している問題を、派遣して来た人が本社にフィードバックする訳ですよ。こういう新規事業があって、こういう面白い会社を見つけたと。
でも本社が無反応なんですね。めんどくさい仕事増やしたなぁと、受けていられないでしょう。こっちでは一生懸命頑張っているんですけど、結局は伝えたいことのミソが本社側に受け手がいないから、レシーバーがいないということです。いくら面白いことを企画しても何も変わらない。
サーブをうちっぱなしではゲームにならない。
そう、拾ってくれる人がいないんですよ。球はいっぱい投げてるんですけど、全く反応がなくて、伊佐山さん、困りましたと。来て面白い経験をいろいろしたんだけど、このままだと駐在してても、ただお前は楽しいところに行ったなで終わっちゃうから、本社側の対応を変えてもらわないといけないと。
レシーバーを育てないといけないという。
そうなんですよ。言われてみて、それは確かに忘れていたと。ちゃんとそれを受ける人と、受けて余計な仕事を増やすなって言われないような構造を作らないと、これはうまくいかないなぁということで、これはまだ今現在進行形で。まだ欠陥だらけですけど、なんとかやっているということです。
非常に実感のこもったお話し、ありがとうございました。 さて、お時間も迫ってまいりましたが、菅原さん、この後、政府として大企業発のベンチャーやオープンイノベーションの精神どう培っていったらいいでしょうか。
あんまり難しいことを言うつもりはないんですけど、おそらく大企業発のベンチャーとかイノベーションというのは、大企業にとって望まれることではなくて、やらざるを得ないことに、もはやなってきているんですね。
これだけ技術の進歩が速い国が、社内における潜在的失業者とか、秘蔵技術の山になるかもしれないんです。これを何もしなければ、おそらく大企業は潜在的社内失業者と秘蔵した技術でおそらく潰れる、もしくはそれで方向転換せずに操業すらうまくいかなくなることは目に見えているのと、変化のスピードはまだまだ速くなりますので、それについていくためには、スピンオフとかカーブアップとか言葉は別にして、潜在的に社内で埋もれた人材を、言い方は厳しいですけど、外に出すことによって、その人も救われる、会社も救われる、という環境を作っていくのが、大企業のミッションの1つに確実になっていくんじゃないかと。
そんななかで伊佐山さんが言ったシリコンバレーをよく見てみるっていうのも1つの手だと思っていまして、伊佐山さんがやっているやつも、ある意味で今日本では刺激になるなと思っていまして、来年度の予算要求で2億位要求したいんですけれども、今言ったのはベンチャーの経営者で、見込みのある人、あとは社内のプロジェクトマネージャーで社内の変化が早そうな人、ベンチャーキャピタルで新規事業がどうアメリカで回っているのかもう一度勉強したい人、そういう人たちを、どの程度公費で支援するかは別として、シリコンバレーでもう1回短期間学んでもらうという事業を立ち上げたいなと思っています。
ありがとうございます。最後に皆さん一言ずついただいて終わりにしたいと思うのですが、今日は日本経済全体でのベンチャー創造のためにというタイトルで70分議論してまいりました。では、せっかくお集りの皆さんに一言ずつメッセージあるいは宣言でもいただければと思いますが、では伊佐山さんからよろしくお願いします。
制度とかファンドは日本は十分に増えたと思いますので、後はそれを利用する人が変わらないと、こういった協議会をあげても何も起らないと思うんですね。僕が言いたいのは、ここにいる会場の人だけではなく、これらの若い人も含めて、今までと違うやり方をするんだというマインドを持ってもらうこと。
そのためには多分、マインドを持っているベンチャーをやれというだけではなかなか変わらないので、いかに刺激をもらえる環境を作るかということだと思うんです。その1つはもしかしたらシリコンバレーに行くことかもしれないし、普段やってる仕事の外の部署に行って世間話をすることかもしれない。その人に合ったベンチャーの道筋があると思うんですけど、1つ言えるのは今の現状に甘んじることをしない。つまり自分の外の世界に1回、目を向けてちょっとめんどくさいけどやってみるとか、余計なお世話だけどやってみるとかということを、もっともっと個人レベルでやると結局それがベンチャーマインド1つだと思うんです。
今やってることに楽なことだけやってると、当然ベンチャーにはならない。人がやらないことをやるからベンチャーになるわけなので、そういったマインドを改めて再認識していけば、10年後の日本というのはもっともっと面白いものになってるんじゃないかなと思っています。
ベンチャーという立場からと女性起業家という立場から2点、最後にお話をさせていただきたいと思います。もう本当に誰かがなんとかしてくれるという時代ではないなと。いつもいつも思っていて、ベンチャーだから、大企業だから、行政がなんとかしてくれるではなくて、この会場にいる一人一人のそれぞれのネットワークや職歴、経歴を活かして、何か新しいものを世の中に生み出していこうと、それを自分のことのように翻弄していく時代なんじゃないかと切に感じています。皆さん一人一人がそんな風に思いながら、小さい企業も大きい企業も手をとりあいながら、日本経済を盛り上げていこうということができれば、これから日本経済が発展するポテンシャルはあるんじゃないかなと考えています。そして2つ目、最初に小渕優子大臣が出られてご挨拶されたように、これから女性の起業家ですとか女性が社会で活躍しなければ、労働生産人口が間に合わないという時代がいよいよやってきています。女性が社会で活躍するようになるためには、やっぱり男性の理解が必要です。家で仕事をすれば残業することもあるわ、土曜日曜に外出することもある、子育てを知り合いに預けなければいけないこともある、そういったことも含めてご主人が奥様のことを温かく見守ってくださったり、女性が大企業と連携して何かやりたいというときに、女性だからというのではなく、一緒に成果効果を求めていこうねという、同志としてお力添えをいただければいいなと思います。
僕はこのイベントに参加させていただいて、最近の動向を見ていて、このベンチャー企業に対する国の取り組みというのは、真剣に出してきているなというのは、我々もすごく感じていまして、それに対して我々企業家も精一杯努力していないといけないですし、一応ベンチャースピリットを持っているつもりでありますので、その中で役割を果たしていきたいと思っておりますので、ベンチャー企業は本当に元気になってきていますし、いろんな分野で活躍し始めていますので、国あるいは民間一緒になってバックアップしていきたいなと思っております。
国がやる環境整備とは、今何をやるかということに加えてですね、20年後、30年後が重要だと思っていまして、その一環としてベンチャーに対する教育をなんとかしたいと思っていまして、今、文科省と話をしていまして小学校、中学校の土曜日授業にベンチャーとはどういうものかというところで、20年後、30年後の日本経済を支える小中学生の選択肢として、立派な会社に入るだけじゃなくてベンチャーというのは大きな選択肢だというのを、小さい時から根付かせるのが重要だと思っています。
その関係で、これはもうお願いなんですけど、ベンチャー創造協議会の皆さんには来年度から全国的に展開しようと思っていまして、そうするとやはり良質な起業経験者もしくはそういう人を講師としていろんな小中学校に派遣することが必要になってくる思っておりますので、このベンチャー創造協議会の中から人選をしてもらって、早速来年度から全国各地の小学校でベンチャーの授業を行うというのを目指したいと思っています。ぜひご協力をいただければと思っています。
ありがとうございます。さて、パネルディスカッション「日本経済全体でのベンチャー創造のために」、そろそろ終了したいと思いますが、今日のパネリストの皆さんのお言葉に勇気ややる気が湧いてきたのではないかと思います。
今日は長時間にわたりお付き合いいただきましてありがとうございました。では4名のパネリストの皆さんに大きな拍手を。
ありがとうございました。
主催: |
TOKYOイノベーションリーダーズサミット実行委員会 (SEOU会/DREAM GATE・プロジェクトニッポン) |
同時開催: |
新事業創造カンファレンス NEDOドリームピッチ/ベンチャーショー 中小機構JVAピッチ |
後援団体: |
経済産業省 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 独立行政法人中小企業基盤整備機構 |