研究開発から事業化までのプロセス|成功させるコツと成功事例を紹介 

研究開発から事業化までのプロセス アイキャッチ R&D・研究開発部門

どんなに優れた技術やユニークなアイデアがあっても、それだけではビジネスとして成り立たない現実に、もどかしさを感じたことはありませんか?

研究や開発に力を注いできた方ほど、「そこから先」をどう進めていいのか悩む場面も多いはずです。

ビジネスとして成功させるには、製品化・市場投入・収益化などと、技術とは異なる視点やスキルが求められ、戦略的なステップを踏むことが不可欠です。

本記事では、研究開発を事業として成立させるために必要な流れや課題、さらに実際に成功を収めた企業の事例を紹介します。

これから事業化を目指す研究開発担当者や新規事業開発マネージャーにとって役立つヒントが詰まっているため、ぜひ最後までご覧ください。


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研究開発(R&D)担当者が陥りがちな悩み

研究開発の成果をビジネスに結びつけるには、技術の完成度だけでなく、さまざまな条件を整える必要があります。

現場では、事業化に必要な仕組みや視点が不足していたため成果が社会に届かなかったケースが少なくありません。

ここでは、R&D担当者が直面しやすい代表的な3つの悩みを紹介します。

PoC(概念実証)で止まり製品化につながらない

技術の有効性を検証するPoC(Proof of Concept)段階まで順調に進んだとしても、事業化フェーズに移行できずにプロジェクトが停滞・終了してしまうケースは少なくありません。

PoCはあくまで「技術的に可能であること」の確認であり、「市場で受け入れられるか」「収益を生み出せるか」といったビジネス面の評価とは別軸です。

製品化につなげるには、ターゲット市場や顧客ニーズの明確化・収益モデルの設計・スケーラビリティ・コスト構造の見通しといった、ビジネス的な視点が不可欠です。

市場検証・資金調達などの非技術領域で壁がある

研究者や技術者は、必ずしもマーケティングや資金調達の知識・経験を持っているわけではありません。

事業化経験のある人材がいないと、市場ニーズの見極めなどの非技術領域における対応が後回しになり、プロジェクトが停滞しがちです。

量産・品質保証体制などの構築ノウハウが不足している

製品化を目前にして、量産体制や品質保証体制の整備に課題を抱えるケースも多くあります。

特にスタートアップや小規模な研究部門では、限られたリソースの中で設計・生産・品質管理をカバーするのが難しく、技術を市場に出す前の大きな障壁とされています。

研究開発を事業化するときの3つの課題

研究開発を事業化するときの3つの課題 イメージ

研究開発の成果をビジネスとして成り立たせるまでには、無数の壁が立ちはだかります。

とりわけ、「魔の川」「死の谷」「ダーウィンの海」と呼ばれる3つの難所は、研究開発から事業化へと進むうえで多くの企業が直面する共通の課題です。

ここでは、それぞれの段階で生じる典型的なハードルと乗り越えるためのポイントを紹介します。

魔の川:基礎研究を製品開発につなげる課題

「魔の川」は、大学や研究機関で得た基礎研究の成果を、企業活動で使える技術や製品へと橋渡しする際に立ちはだかる壁を指します。

たとえば、ある大学で開発された先端素材は高性能だったものの、コストや用途が不明確で企業に採用されませんでした。

このように大学や研究機関などで生まれた技術は、商業的なニーズや使い勝手を十分に考慮していない場合が多く、企業が事業化に踏み切れないケースが目立ちます。

魔の川を超えるには、「出口戦略」を意識した研究設計が重要です。初期段階から市場ニーズや社会課題との接点を明確にし、将来的な活用シーンを想定したうえで開発を進める必要があります。

また、産学連携や技術移転機関(TLO)などを活用して、企業と研究者の対話の場を設置するのも効果的です。

死の谷:研究開発を市場投入するときの課題

製品のプロトタイプが完成し、ビジネス化を検討する段階で待ち構えるのが「死の谷」です。

市場投入の際は準備に大きな資金と人材が必要とされますが、まだ収益が見込めない状況では社内のリソースも限定的で、外部からの投資も得づらいため、プロジェクトが中断してしまう危険性があります。

実際に、革新的なIoT製品の試作に成功したものの、量産や販売体制が整わず頓挫した事例があります。

死の谷を乗り越えるためには、PoCだけでなく早期に市場性を検証し、事業計画の仮説を立てることが重要です。

また、行政の新事業への進出・新商品開発への支援やアクセラレータープログラム、CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)などを活用すれば、資金面の支援に加えてネットワークやノウハウの提供も受けられます。

参考:ファーストカスタマー・アライアンス(東京都 都庁総合ホームページ)

ダーウィンの海:商品を定着させるときの課題

製品を市場に投入した後に待ち構えるのが「ダーウィンの海」です。革新的な技術や事業アイデアが市場で生き残るかどうか試される、初期の困難な期間を指します。

新しいモバイルアプリのリリース直後、ユーザー獲得や収益化が思うように進まず、競合に埋もれてしまうケースがあるように、この時期には失敗のリスクが高く、多くのプロジェクトが消えていきます。

ダーウィンの海で勝ち残るためには、選ばれる理由を明確に提示する必要があります。

ユーザー視点を重視したマーケティングと、製品を使い続けてもらうための仕組みづくりを整えましょう。

研究開発から事業化までの5つのプロセス

研究開発の成果を確実に事業化へつなげるためには、闇雲に動くのではなく、段階的かつ戦略的なプロセスが必要です。

ここでは、研究開発を実際のビジネスとして成功させるための5つの主要ステップを紹介します。

市場ニーズの調査

研究開発の第一歩は「誰の、どんな課題を解決するか」を明らかにするための市場ニーズの調査です。

いかに優れた技術でも、市場に求められていなければビジネスとして成立しません。

業界トレンド・社会的背景・ユーザーの困りごとなどをリサーチし、実現すべき提供価値の方向性を明確にします。

競合調査とペルソナの設定

市場の中での自社の立ち位置を明確にするため、競合他社の製品・サービスを分析し、差別化ポイントを見出します。そのうえで、自社が届けるべき顧客像(ペルソナ)を明確にし、ニーズや使用シーンに即した仕様設計を進めます。

以上の調査結果は、製品開発の段階だけでなく、マーケティングや営業戦略にも直結するため、丁寧に進めましょう。

実用化に向けたプロトタイプの開発と検証

市場性と技術性を踏まえたうえで、実用化に向けたプロトタイプ(試作品)を開発し、仮説検証を行います。

社内メンバーに限らず、ユーザーや外部の協力者のフィードバックも積極的に取り入れ、製品化への精度と確信を高めます。

製品化とビジネスモデルの構築

プロトタイプの検証結果を踏まえ、製品としての完成度を高めると同時に、持続可能なビジネスモデルの設計が必要です。

価格設定・販売チャネル・顧客獲得コスト・収益構造などを明確にし、実行可能な計画を立てることが持続的な事業化には重要です。

市場投入と顧客フィードバックの活用

最後に、実際に市場へ製品を投入し、顧客からのフィードバックを活用して製品やサービスを改善します。

市場での反応を定量・定性の両面で分析し、製品やサービスを柔軟に・スピーディにブラッシュアップさせることが重要です。

製品のリリースと改善を繰り返し、商品はより市場に適した形へと進化していきます。

研究開発の事業化を成功させるコツ

事業化の成功には技術力だけでなく、組織の柔軟性や戦略的な視点が求められます。

以下では、研究開発を事業化するうえで意識すべき成功のポイントを紹介します。

社内外のステークホルダーと早期に連携する

社内外のステークホルダーと早期に連携する イメージ

開発初期の段階から経営陣や営業部門・外部パートナーと連携しましょう。研究開発は研究部門だけで完結するものではないため、社内外のステークホルダーと早い段階で連携することで、技術の方向性と市場ニーズとのギャップを埋めるのに役立ちます。

後の工程での手戻りや市場とのギャップを最小限に抑えられ、事業の成功率アップにつながります。

既存リソースと新技術を掛け合わせる発想を持つ

新技術の開発に注目しすぎると、人的リソースが分散したりスピード感の低下を招いたりしてしまう可能性があります。

しかし、顧客基盤・ブランド力・製造ノウハウ など、既存の事業資源や技術・ネットワークを活かして新技術と組み合わせると、スピーディーかつ効率的に事業化を進められます。

掛け合わせの発想により、既存事業との相乗効果が新たな価値提案や市場アプローチの道筋になるでしょう。

他社にはない付加価値を創出する

市場競争が激化する中、技術を軸にした事業は競合との差別化が極めて重要です。

単純なスペック勝負にならないよう、顧客目線で「なぜそれを選ぶのか」を明確に打ち出せる、技術的・機能的な特徴や社会的意義を意識しましょう。

例えば「高齢者でも簡単に操作できる」「日本初の技術で特許を取得している」「環境問題を改善できる」など、機能的な価値とともに社会的・情緒的価値をアピールするなど、自社オリジナルの付加価値をつけることが事業化を成功させるコツです。

研究開発の事業化を成功させた事例

実際に研究開発を事業化し、成功を収めた企業の取り組みは、多くのヒントを与えてくれます。

ここでは、特に注目すべき3社の事例を紹介します。

Rapidus株式会社の事業化

日本初の先端半導体量産ファウンドリーを目指すRapidus株式会社は、経産省の支援を受けながら多くの企業・大学と連携し、世界最先端の2nmプロセス技術を用いたロジック半導体の量産化を目指しています。

日本の半導体産業再興の旗手として期待されており、技術開発と事業化を同時並行で進める大規模な体制構築が国内外から注目されています。

積水化学工業の事業化

積水化学工業は自社が持つ技術や開発力をもって、官民連携や補助金制度を活用しながら、研究開発から事業化までを一貫して推進しており、新たな収益モデルを築く企業として高く評価されています。

中でも、独自のバイオエタノール製造技術(BRエタノール)の開発や、フィルム型太陽電池(ペロブスカイト)の量産化は、社会課題の解決と収益化を両立した先進事例として注目されています。

愛媛製紙株式会社の事業化

中小企業である愛媛製紙は、限られたリソースを最大限に活かして新たな収益モデルを構築した好事例として評価されています。

同社の製紙事業の技術と設備を活用して、愛媛県特産の柑橘類の果皮から環境素材として注目される「セルロースナノファイバー(CNF)」を抽出する独自技術を開発しました。

さらに、化粧品原料としてCNFを活用した製品化・販売を開始しています。

愛媛大学や地方自治体、民間企業と連携した産学官プロジェクトとして進められ、環境配慮型の製品開発と地域活性化の両立を実現しています。

まとめ

研究開発を事業化するには単なる技術の完成にとどまらず、市場ニーズの理解やビジネス構想・製造体制の確立など、総合的な視点と戦略が不可欠です。

段階的なプロセスを踏み、立ちはだかる障壁を乗り越えられる体制の整備が成功への近道です。成功事例を参考にしつつ、自社の強みと資源を活かして、着実な事業化を目指しましょう。


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著者
ILS事務局

アジア最大規模のオープンイノベーションのマッチングイベント「Innovation Leaders Summit(ILS)」を開催。
ILSとは、大手企業のアセットとスタートアップのアイデアやテクノロジをマッチングし、グローバルイノベーションを生み出すことを目的に経済産業省後援のもと発足したプロジェクト。
2023年12月に開催したILS2023において、メインの事業提携マッチングプログラム「パワーマッチング」は、国内外の主力VCなどで構成する約100名のILSアドバイザリーボードが推薦する有望スタートアップ812社(内、海外企業266社)と大手企業113社が参加、3,121件の商談が行われ1,032件の協業案件を創出した。アジア最大級のオープンイノベーションカンファレンス。

主催: イノベーションリーダーズサミット実行委員会(SEOU会、ドリームゲート/株式会社プロジェクトニッポン)
後援: 経済産業省/新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)/東京都/日本政策金融公庫/オーストラリア大使館(第10回ILS実績)
運営: 株式会社プロジェクトニッポン

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