新規事業の立ち上げを検討する際、多くの担当者が最初に直面するのが「どのようなアイデアがよいのかわからない」という課題です。市場ニーズや社会の変化に対応するためには、新規性だけでなく、実現可能性と収益性を兼ね備えたアイデアが求められます。
本記事では、実際に使えるアイデアの見つけ方や、着想を得るための事例、発想を整理するフレームワーク、最新のビジネストレンドまで解説します。
アイデア出しに悩んでいる新規事業担当者や起業準備中の方は、ぜひ参考にしてください。
新規事業のアイデアに行き詰まった場合、外部連携という選択肢もあります
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新規事業におけるアイデアの重要性
新規事業の成否を左右するのがアイデアです。思いつきや直感に頼るのではなく、市場や顧客のニーズと照らし合わせた戦略的な発想こそが、事業の成功を導く鍵となります。
ここでは、その重要性についてふたつの観点から解説します。
市場ニーズに適応するため
社会やテクノロジーの変化が加速するなかで企業が生き残るには、常に市場ニーズに適応し、自社の新しい価値を提供していく必要があります。
「いま、世間はどのような価値を求めているのか」という問いに向き合い、柔軟に新しいアイデアを創出する力が欠かせません。
新たな収益源を確保するため
既存の事業モデルに依存していると、市場環境の変化や競合の台頭により、収益が不安定になるリスクがあります。
新たな事業の柱を立てることで売上の多角化が進み、企業全体の持続性と成長力を高めることが可能になります。
競合と差別化できる新規事業のアイデアの生み出し方
アイデアを生み出す際には、競合との差別化を見据えた視点が欠かせません。
ここでは、着想のきっかけとなる方法や、独自性を高めるためのアプローチを紹介します。
成功事例から着想を得る
すでに成功している他社の新規事業を分析することで、「なぜその商品やサービスを新規事業として押し進められたのか」を学び、自社に転用するヒントが得られます。
- 富士フイルム株式会社:フィルム製造過程で培った粒子を細分化する技術を、化粧品開発に応用
- 本田技研工業株式会社:自動車やオートバイの製造技術を応用し、小型ジェット機の開発に成功
このように、他社事例の背景を読み解き、自社に応用できる要素を探ることが重要です。
また、外部の事例に加えて、自社内の成功体験を深掘りするのも効果的です。売れている商品の共通点や、顧客に選ばれている理由を「Why(なぜ)」の視点で繰り返し問い直すことで、自社が提供すべき価値の本質が見えてきます。
市場ニーズに着目する
アイデア出しには、市場ニーズに着目し「売れるもの」から逆算することも有効です。市場のニーズを分析し、顧客の課題や欲求を特定することで、的確なソリューション型のビジネスアイデアが生まれます。
たとえば、情報収集には以下のような手段が有効です。
- Googleトレンドや検索ボリュームツール
- SNSのトレンドや口コミ
- 自社の問い合わせフォーム
- 営業現場の声
- アンケート/インタビュー
- 統計データ
「どのような人が、どのような場面で困っているのか」を具体的に描くことで、ビジネスアイデアの精度が高まります。
既存顧客からの不満を参考にする
すでに自社商品・サービスを利用している顧客の不満の声は、新規事業に向けたヒントの宝庫です。「もう少し〇〇だったら」「〇〇が使いにくい」といったフィードバックに注目することで、具体性のあるアイデアに繋がります。
- サービス内容には満足しているが、一部の機能が不便
- コストパフォーマンスに対する不満
- 他社サービスと比べたときの小さな差異
こうした声を収集するには、ユーザーアンケートやインタビューの実施が有効です。さらに、サポート窓口への問い合わせやSNSでの言及をモニタリングすることで、新たなアイデアの種が見つかることもあります。
既存のビジネスモデルを掛け合わせる
既存のビジネスモデルの掛け合わせにより、独自性の高い新規事業のアイデアが生まれることを期待できます。
世界的ベストセラー『アイデアのつくり方』でも「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」と語られているように、革新はゼロからではなく組み合わせから生まれるものです。
たとえば「サブスク × 専門家相談」「シェアリング × 農業」など、すでに存在するビジネスモデルの組み合わせにより、これまでにない切り口が見えてきます。
自社の強みと掛け合わせられる外部のビジネスモデルがないか、視野を広げて探してみましょう。
フレームワークを使う
発想に行き詰まったときは、フレームワークを使って論理的に整理しながら発想を広げましょう。以下に紹介するフレームワークを活用することで、思考の枠を広げ、抜け漏れなくアイデアを展開することが可能になります。
新規事業のアイデアに行き詰まった場合、外部連携という選択肢もあります
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新規事業のアイデア出しで使えるフレームワーク
続いて「何から考えればよいかわからない」「発想が広がらない」といったときに頼れる代表的なフレームワークを紹介します。
頭の中を整理し、見落としを防ぐためにも、ぜひ活用してください。
以下の記事でも新規事業のアイデア出しにおすすめのフレームワークを紹介しています。ぜひあわせてご覧ください。
SWOT分析

SWOT分析は、自社の状況を「強み」「弱み」「機会」「脅威」の4つの視点で整理するフレームワークです。
- Strength(強み):競合に対する優位性や自社の資源
- Weakness(弱み):改善すべき課題や競争上の不利な点
- Opportunity(機会):市場の成長性や外部環境の変化によるチャンス
- Threat(脅威):競争激化や社会情勢の変化などのリスク要因
これにより、自社がどの分野で新規事業を展開できるか、どう差別化を図るかを戦略的に検討できます。
SCAMPER

SCAMPER(スキャンパー法)は、既存の製品やサービスを7つの視点から見直し、新しいアイデアを生み出す発想法です。それぞれの頭文字が以下の意味を持ちます。
- S(Substitute):ほかのものと置き換えられないか
- C(Combine):ほかのものと組み合わせられないか
- A(Adapt):ほかの用途に応用できないか
- M(Modify):一部を変更・強調できないか
- P(Put to other uses):ほかの使い道はないか
- E(Eliminate):削除・単純化できないか
- R(Reverse/Rearrange):順序や構造を逆にできないか
各視点を使って問いを立てることで、思考の枠を広げ、革新的なアイデアの種を見つけやすくなります。
ペルソナ分析
ペルソナ分析は、理想的な顧客像を詳細に設定し、「その人が本当に欲しいものは何か」という視点でニーズや行動を考える手法です。
年齢、性別、職業、ライフスタイル、価値観、課題などを具体的に描くことで、ターゲットの本質的な欲求や不満が明確になります。
これにより、提供すべきサービスや訴求ポイントが見えやすくなり、精度の高いアイデア創出やマーケティング施策の立案に繋がります。
ポジショニングマップ

ポジショニングマップは、競合他社との違いや市場内での自社の立ち位置を視覚化する手法です。
縦軸・横軸に「価格」「品質」「利便性」などの評価軸を設定し、商品やサービスをマッピングします。未開拓のポジションや差別化の余地を見つけやすく、新規事業の方向性を検討する際に有効です。
KJ法

KJ法は、多様で断片的な情報やアイデアを構造的に整理・可視化するのに適した発想整理法で、以下の手順で活用します。
- 個々のアイデアをカードに書き出し、それらを意味や内容の類似性に基づいてグループ分けする
- 小さなまとまりをさらに統合しながら、より大きなテーマやパターンへと再編成する
- 類似したグループを近接させたり、相互の関連性を示す矢印や線を加えたりする
- 全体像が一目でわかる図解が完成する
- 図解したグループを文章化する
文章化するプロセスでは、思いがけない発見や新しい着眼点が生まれることも少なくありません。KJ法は、バラバラだった情報を意味のある形に整理し、チーム内での共通理解を育む強力な手段といえるでしょう。
新規事業のアイデアが出ないときの対処法
新規事業のアイデアに詰まったときは、自社内での対応とともに、外部の知見もバランスよく取り入れるのがおすすめです。
ここでは、4つの対処法を紹介します。
自社を分析する
新規事業のアイデアが思いつかないときは、自社を深く分析してみましょう。
たとえば、
- 自社の商品・サービスが売れている理由は何か
- 他社にはない独自のスキルや技術は何か
- どのような顧客から高く評価されているか
こうした問いを通して、自社の強みやリソースを再発見できます。
自社ならではの価値を活かして新たな事業を設計すれば、競合と差別化しやすく、成功の確率も高まります。
過去の成功体験を棚卸ししながら、新たな視点や切り口を見出しましょう。
ユーザー視点で考える
ユーザー視点で考えることで、共感性の高いアイデアが生まれます。前述した「ペルソナ分析」をもとに、理想の顧客の立場に立って考えてみましょう。
「どのようなときに困るか」「どのようなサービスがあれば助かるか」といった視点で日常を想像すると、思わぬニーズや課題が見えてきます。
具体的には、
- 共働き世帯の夫婦:「夕方の子どものお迎えに間に合わない」「買い物が手間」
- 30代ひとり暮らし:「コンビニご飯が多く食生活が乱れがち」「家事が面倒」
といった課題が浮かぶかもしれません。
こうした仮想体験を通じて、自社では見落としていたヒントが得られる可能性があります。
顧客インタビューと組み合わせれば、より実践的なアイデアに繋がります。
専門家からアドバイスを受ける
アイデア出しに行き詰まった場合は、自社だけで抱え込まず、第三者の力を活用することも検討しましょう。専門家からアドバイスを受けることで、新規事業のアイデア出しを促進できます。
社内だけでアイデアを練っていると視野が狭くなり、方向性に不安を感じることもあるでしょう。進め方や判断が正しいのかわからずに、足踏みするケースも少なくありません。
こうした課題に対しては、外部の専門家やコンサルタントの視点が有効です。客観的なアドバイスをもとに、課題やリスクを早期に把握し、最適な手順で事業を進められます。
AIに相談する
AIを活用して新規事業のアイデアを創出する方法も有効です。
実際、米国ではAIを使ってわずか60日間で275件もの事業アイデアを生み出し、そのうち23件が黒字化したとの事例も報告されています。
もちろん、AIが提案するアイデアの中から何を選び、どのように実行するかは、最終的に企業の判断に委ねられます。しかし、発想の幅を広げる手段として、AIの活用は新規事業の立ち上げを後押しする強力なツールとなるでしょう。
【最新】新規事業のアイデアに繋がる大トレンド
市場は常に変化し続けており、今まさに注目を集めているトレンドを押さえることは、新規事業の成功に直結します。
ここでは、新規事業のアイデア出しに繋がる最新トレンドを紹介します。
AIエージェントサービス
業務効率化やカスタマー対応の分野で、AIエージェントの活用が広まっています。AIエージェントとは、ユーザーの目標を達成するために自ら判断して最適な方法を選び、タスクを実行してくれるAI技術のことです。
【AIエージェントサービスが担う主な役割】
- サプライチェーン管理:在庫管理、需要予測
- 営業:顧客の行動分析による提案
- 人事:スケジュール調整、履歴書スクリーニング
- カスタマーサポート:問い合わせへの回答、トラブルシューティング
人手不足や働き方改革の影響で手が回らない業務を補い、業務全体の効率化と精度向上をサポートしてくれる頼れる存在です。
ウェルビーイングテックサービス
ウェルビーイングテックとは、健康や幸福をテクノロジーで支援する分野です。身体面・精神面の両方から人々の健康を促進するサービスが、近年大きな注目を集めています。
【注目されている主な領域】
- フィットネス
- ヘルスケア
- メンタルヘルス
- 食事
- 睡眠
たとえば、リモートワーク環境下でのストレス軽減を図るヘルスケアアプリのように、具体的なニーズに応じた技術導入が進んでいます。
社会課題の解決策として、ウェルビーイングテックの市場は今後も成長が見込まれています。
地域DX支援サービス
地域DX支援サービスでは、地域の行政や企業がデジタル技術を活用して、業務効率化や地域活性化を図るためのサポートをおこないます。
具体的には、データ管理システムの開発支援や、移動困難者の買い物支援、人材育成プログラムの開発など、多様な分野で地域の課題解決を支援します。
地域の暮らしやビジネスが便利になり、持続可能な発展が期待されます。
サステナビリティ経営支援サービス
サステナビリティ経営支援サービスは、企業や組織が環境・社会・経済の持続可能性を高める取り組みを支援するサービスです。
具体的には、気候変動関連の支援、SDGs(持続可能な開発目標)への対応支援、人権管理方針の策定などをおこないます。
企業が社会的責任を果たしつつ、ブランド価値の向上や長期的な成長を実現するために、欠かせないパートナーになり得ます。
まとめ
新規事業のアイデアは、ひらめきだけに頼るものではありません。市場ニーズや既存の課題を丁寧に分析し、フレームワークや事例を活用して論理的に組み立てていくことが大切です。
今回紹介した考え方やツールを活用しながら、自社ならではのアイデアを形にしてみてください。
「思いつかない」から「これでいけるかもしれない」へ。第一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。
新規事業のアイデアに行き詰まった場合、外部連携という選択肢もあります
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