オープンイノベーションとは、企業が社内だけでなく社外の技術や知見を積極的に取り入れイノベーションを促進するビジネス手法です。
そんなオープンイノベーションをとおして他社と共同で製品やサービスを開発する場合には、自社の技術を守るためにもNDA(秘密保持契約)を結ぶのが一般的です。
そこで今回は、オープンイノベーションにおけるNDAの必要性やテンプレート、結ぶ際の注意点などを徹底解説していきます。
他企業とオープンイノベーションをスタートさせた後にトラブルにならないためにも、NDAに関する基本的な考え方をチェックしておきましょう。
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NDAを含む契約面での注意点や、信頼関係を築きながら情報共有を進める具体的な手法を豊富に扱っているので、ぜひ貴社のオープンイノベーション推進にご活用ください。
NDA(秘密保持契約書)とは?
NDA(秘密保持契約)とは、企業が他の会社や相手に大切な秘密情報を教える際に、その情報を守るための契約です。
特に業務提携先や共同研究先に対して技術情報や顧客情報などを共有する際に、第三者への開示を防ぐ目的で用いられます。
オープンイノベーションにおけるNDAの重要性

オープンイノベーションは、自社の技術や知見を提携先企業に開示せざる負えない状態になることが多くあります。そのため、オープンイノベーションには、自社の技術や知見が漏洩してしまうリスクが生じます。
しかし、お互いにNDAを結んでおけば、第三者に自社のノウハウを利用されることもありません。自社の専門技術や知見を守るためにも、共同開発を進める前に必ずNDAを結びましょう。
出典:特許庁
オープンイノベーションでNDAはいつ結ぶ?
オープンイノベーションでNDAを結ぶタイミングは保護対象の秘密情報を開示する前になります。具体的には共同開発のスケジュールや目的の確認などの取引交渉段階が終わったタイミングです。
このタイミングでNDAを締結しておけば、打ち合わせ中に重要情報を開示できるため、その後の共同開発をスムーズに始められます。
出典:弁護士法人直法律事務所
オープンイノベーションでのNDAは特許庁の「モデル契約書」を利用するのがおすすめ

オープンイノベーションでNDAを締結する際には特許庁が作成したテンプレートである「OIモデル契約書ver2.2(2025年4月改訂)」を利用するのがおすすめです。
一般的に他社とのオープンイノベーションは、協業に向けたすり合わせから始まり、PoC(概念実証)と呼ばれる技術検証のステップを経て、研究開発に進みます。こちらの特許庁のモデル契約書は、そのステップに沿って必要な契約項目を提示したものです。
また近年、すべての企業で推進が進められているDXやAIのオープンイノベーションに特化した「OIモデル契約書ver2.2(AI編)(2025年4月改訂)」も用意されており、状況に応じた使い分けができます。
オープンイノベーションで提携先とNDAを結ぶ際のポイント
オープンイノベーションで提携先とNDAを結ぶ際には以下の5点に注意しましょう。
- 雛形の安易な利用は避ける
- 契約違反が生じた場合の対応を明記する
- 秘密情報の定義や範囲、期間を明記する
- 知的財産権の取り扱いを明記する
- 相互NDAの原則採用する
それぞれ詳しく解説していきます。
雛形の安易な利用は避ける
他社と契約を結ぶ際、テンプレートを使うことも多いでしょう。しかし、オープンイノベーションのNDAでは、テンプレートを安易に流用してしまうのは危険です。
NDA契約は、「制限する情報の範囲」や「秘密保持を負う人の範囲」「契約終了後の情報の破棄方法」など細かな規定を個別に定めなければなりません。
そのため、契約の個性を無視してそのままテンプレートを転用してしまうと本来守らなければならない情報を見落としてしまう可能性があるのです。
テンプレートを利用する際には、そのまま適用させるのではなく、各項目の内容を個別に精査・検討する必要があります。
契約違反が生じた場合の対応を明記する
NDAを結ぶ際には契約違反が生じた場合の対応を定量的に詳しく明記する必要があります。
もし、契約違反時の対応に具体性が欠けていると、契約違反による損害を受けたとしても、請求まで時間がかかったり、本来の請求額が減ってしまう可能性もあるのです。
そのため、契約違反のペナルティとなる違約金や損害賠償請求、差し止め請求などは具体的に契約書へ盛り込みましょう。
秘密情報の定義や範囲、期間を明記する
NDAを他社と結ぶ際には、秘密情報の定義や範囲、期間についても細かく記載する必要があります。
この秘密情報の定義や範囲を曖昧に決めてしまうと 、もし情報漏洩が発生したときに「それは秘密保持契約の対象になっていない」「いや、対象になっている」という企業間の争いが生じてしまう可能性があります。
知的財産権の取り扱いを明記する
オープンイノベーションで共同開発した製品やサービスに対しての知的財産についても必ず明記しておく必要があります。
共同で開発した技術の特許権やインセンティブは、お互いが納得する形で文章に明記するようにしましょう。
実際に日本の大手企業であるファーストリテイリング社でも共同開発したセルフレジの特許権を巡り、アスタリスク社と訴訟問題にまで発展してしまったケースが存在します。
そのため、かならずオープンイノベーションを行う際には、知財や利権に関する細かい取扱をNDAに盛り込みましょう。
相互NDAの原則採用する
相互NDAとは、お互いの企業に対して機密情報を守らなければならない法的拘束力がある契約です。
他社との協業では、一方性のNDA契約(当事者の一方のみが秘密保持義務を負う契約)を持ちかけてくる企業も存在しますが、自社に専門性の高い技術や知見がある場合は原則、相互NDAを採用するようにしましょう。
オープンイノベーションでNDA以外に結ぶべき契約
オープンイノベーションでNDA以外に結ぶべき契約は以下の3つです。
- PoC契約
- 共同研究開発契約
- ライセンス契約
それぞれ詳しく見ていきましょう。
PoC契約
PoC契約とは、Proof of Concept(概念実証)の略で、新しい技術やアイデアなどが実際に機能するか、または事業として実現可能かどうかを検証するために結ぶ契約です。
これまでスタートアップや中小企業が大企業と共同開発を行う際、協業の目的に合った技術力があるかを事前に確かめるため、中小企業やスタートアップは無償で事前検証を行う必要がありました。
その金銭的負担を減らすためにPoC契約書を交わし、事前検証時であっても大企業側が賃金を支払うようになったというわけです。
共同研究開発契約
共同研究開発契約とは、複数企業と協業する際にそれぞれの役割や費用負担、成果の帰属などを明確に示した契約のことです。
研究開発の過程や成果物などに関するルールを定め、企業間の権利や費用負担のトラブルを防止することを目的に作られました。
ライセンス契約
ライセンス契約とは、知的財産権を持つ企業が第三者に対してその権利の使用を許諾する契約のことを指します。
オープンイノベーションのライセンス契約は、自社のコア技術を利用する提携先に対して、製品やサービスの使用時にライセンス収益を得られるように契約を結びます。
オープンイノベーションではNDAを結び提携先とのトラブルを防ごう
今回はオープンイノベーションで提携先と結ぶべきNDAについて重要性や注意点、テンプレートを解説してきました。
オープンイノベーションでは、自社のコア技術やノウハウを他社に開示せざるを得ないため情報漏洩のリスクが伴います。そのため、必ずNDAを結び自社の専門技術や知見が外部に漏れないように注意しましょう。
適切なNDA運用が協業成功の鍵!実際の事例で学びませんか
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