「新規事業のアイデアがまったく思い浮かばない」「何から手をつけてよいかわからない」そんな悩みを抱えていませんか。
実は、新規事業が思いつかないのには明確な原因があります。多くの新規事業担当者や個人が陥りがちな思考の罠を理解し、適切なアプローチを取ることで、革新的なビジネスアイデアは必ず生まれます。
本記事では、アイデアが思い浮かばない原因を明確にし、発想を広げるための5つの視点と8つの具体的なフレームワークを紹介します。
新規事業開発に悩んでいる方が、次の一歩を踏み出すための指針となる情報をお届けします。
新規事業のアイデアに行き詰まった場合、外部連携という選択肢もあります
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新規事業が思いつかない原因

新規事業のアイデアが浮かばない理由は「発想力がない」わけではなく、情報不足などが原因かもしれません。
ここでは、よくある5つの原因を解説します。
新規事業のアイデア出しで行き詰まっている方は、自分に当てはまる原因を見つけ、解決の糸口にしましょう。
顧客インサイト不足で本質的な市場課題が見えない
顧客の行動や感情、状況の変化を深く掘り下げて見えてくる「顧客インサイト」が不足すると、「なぜその課題が存在するのか」「その課題が解決されたときに、顧客が何を感じるのか」などの本質的な市場課題の特定が難しくなります。
たとえばアウトドア用品を扱う事業で、「最近の若年層はキャンプに興味がある」と漠然と捉えているだけでは、ニーズの本質は見えてきません。ユーザーインタビューを通じて、「友人とSNS映えする写真を撮るのが目的」「テント設営に時間がかかるのがストレス」といった具体的な声が得られれば、単にキャンプ用品を作るのではなく、「設営が簡単で写真映えするテント」という商品開発のヒントが得られるようになります。
ユーザーインタビューやカスタマージャーニーマップなどの手法を活用して顧客インサイトを把握すれば、事業の核となる顧客の課題が見え、新規事業のアイデアに近づけるはずです。
詳しくは以下の記事で紹介しています。あわせてご覧ください。
自社アセット・強みの棚卸しができておらず方向性が定まらない
新規事業を成功に導くうえできわめて重要なのが、自社の強みやアセットを正しく理解し、戦略的に活用することです。
製造技術に定評のある企業が、技術力ではなく流行に乗った新サービスを立ち上げようとした結果、競合と差別化できず早期に撤退するケースがあります。これは、持っている強みを十分に活かさず、市場ニーズとの接点を見誤ったことが一因です。
このように持っている強みを十分に把握しないまま新規事業を進めると、方向性が定まらず、実現可能性も低下します。
失敗を避けるためには、技術・人材・設備・ブランド・ネットワークなど、複数の視点から自社のアセットを洗い出し、それらがどのように世の中の課題解決に役立つかを再検討することが重要です。
最新トレンド・技術動向のインプット不足で刺激が足りない
新規性のある着想を生むためには、定期的な最新トレンド情報収集や技術動向のインプットを心がけましょう。
「自社の強みを活かした新商品を企画しようとしても斬新なアイデアに至らない。」と悩んでいた企業では、若手社員が海外スタートアップの事例や最新の素材技術を共有したことでアイデアが広がり、競合と差別化できる新サービスにつながった、そんな事例もあります。
市場や技術のトレンド、他業界の成功事例など、外部からのインプットを常に心がけ着想の種を育てましょう。
組織文化や評価制度がリスクテイクを阻み、発想が萎縮してしまう
失敗を許容しない組織風土や短期的な成果を求める評価制度は、リスクテイクを阻み、新規事業のアイデアを生み出す妨げになります。
社員の挑戦的な発想を促すためには、リスクを前提としたチャレンジを評価する制度設計が必要です。たとえば、プロセス重視の評価基準を導入したり、失敗事例を学びに変える「失敗共有会」を設けたりする取り組みを通じて、挑戦をポジティブにとらえる文化を醸成していくとよいでしょう。
また、経営層自らがリスクをとって挑戦する姿勢は、社員へ失敗に対する心理的安心感を与えます。
組織全体の創造性を育み、新規事業の芽を生み出すためには、挑戦を後押しする制度と心理的安全性の両方が必要です。
実際に経済産業省のデータによると、日本企業の研究開発投資効率(30.4倍)は米英(39.5倍、70.6倍)と比較して低く、これは短期的成果を重視する評価制度や、技術の事業化における意思決定の慎重さが影響している可能性があります。
アイデア創出フレームワークを活用していない
新規事業を考える際、アイデア創出のフレームワークを活用せず、思いつきに頼っているケースが多く見られます。
SCAMPER法やジョブ理論、マインドマップなど、考えを広げるための手法を活用すれば、ゼロからでも着実にアイデアを組み立てられます。
アイデアは才能ではなく技術です。ひらめきを求めるのではなく、まずは手順を学びましょう。
フレームワークについて詳しく知りたい方は以下の記事もあわせてご覧ください。
新規事業を思いつくための発想法
新規事業のアイデアを生み出すには、無から有を生み出すのではなく、既存の要素を組み替えるのが有効です。
ここでは、実践的かつ再現性のある4つの発想法を紹介します。
アイデア創出に行き詰まりを感じている方は、ぜひ参考にしてください。
SCAMPER法で既存製品・サービスを再発明する
SCAMPER法とは、以下の7つの視点から既存の製品やサービスを見直し、新しいアイデアを生み出す発想法です。
Substitute(代用) | 他の素材・工程・機能で代用できないか? |
Combine(結合) | 別のアイデアや機能と組み合わせられないか? |
Adapt(応用) | 他業界の要素や使い方を応用できないか? |
Modify(修正) | 形状や意味合いを変えたり、誇張したりできないか? |
Put to another use(転用) | 本来と異なる使い道はないか? |
Eliminate(削除) | 不要な部分を省けないか? |
Reverse(逆転) | 順番や役割、構造を反転させられないか? |
「カフェ」を題材にした場合、以下のように各視点から問いを立て発想を広げます。
- 店員をロボットに代用したらどうなるか?(Substitute:代用)
- 書店やコワーキングスペースと組み合わせたら?(Combine:結合)
- 飛行機のファーストクラスのようなサービスを取り入れたら?(Adapt:応用)
- 空き時間にワークショップを開催したら?(Put to another use:転用)
SCAMPER法は、既存の要素をベースにしながらも思考の枠を外し、革新の糸口を見つけるのに非常に有効です。
ジョブ理論インタビューで顧客の「片づけたい仕事」を深掘りする

ジョブ理論は、顧客目線でニーズを分析する手法です。顧客が日常の中で片づけたい仕事とその背景に着目し、行動の裏にある本質的な課題を明らかにします。
【例】
- 「毎朝の時間が足りない」と言っている顧客がいる
- インタビュー等を通じて「片付けたい仕事」は「朝食を効率的に済ませたい」だと見抜いた
- 「栄養バランスのよい時短スムージー」を開発すればよいとわかる
このような流れで顧客が抱える課題を把握できれば、新規事業のヒントが見えてきます。
戦略キャンバスで競争軸をずらす
戦略キャンバスは、業界内での競争要素を可視化し、自社がどの軸で勝負すべきかを導き出すツールです。
たとえば、従来ホテル業界では「立地」や「設備の豪華さ」が競争軸とされていた中で、Airbnbは「地元とのつながり」「価格の柔軟性」などの別軸を打ち出し、新しい市場を開拓しました。
戦略キャンバスを活用すれば、競合とは異なる軸に資源を集中させて、独自のポジションを築き、事業を成功に近づけられます。
異業種クロスオーバーで新しい価値を生み出す
他業界の常識や手法を取り入れると、新しい価値を生み出せます。
具体的には、異業種の展示会に足を運んだり、異なる業界のプロと交流したりするのがおすすめです。
社外との共創やアライアンスも視野に入れると、より実現性の高いアイデアになるでしょう。
新規事業を生み出すためのフレームワーク
新規事業の成功には、思いつきや直感だけでなく、論理的な仮説検証のプロセスが不可欠です。
ここでは、事業の構想から検証までを支援する4つのフレームワークを紹介します。
前節で紹介した発想法が「アイデアを生み出すための視点や思考法」であるのに対し、ここで紹介するフレームワークは「生まれたアイデアを事業として形にするための設計図や検証手段」です。
新規事業をより確実に形にするためのヒントとして、ぜひ参考にしてください。
リーンキャンバスで事業仮説を整理する

リーンキャンバスは、スタートアップ向けのビジネス仮説整理ツールです。
「課題」「解決策」「独自の価値提案」など、9つの要素を1ページにまとめて、アイデアの全体像を素早く把握します。
たとえば新しいアプリを考えている場合、「誰のどんな課題を解決するのか?」「そのためにどんな解決策を提供するのか?」などの項目に沿って書き出します。
仮説を可視化して、不確実性の有無や検証すべき点を明確にできます。
ビジネスモデルキャンバスで価値創造の9要素を俯瞰する

ビジネスモデルキャンバスは、「誰に(顧客セグメント)」「どのように届けるか(チャネル)」「どうやって収益を得るか(収益の仕組み)」など、事業の全体像を9つの視点から見渡せるフレームワークです。
たとえば、子育て中の忙しい親に時短ミールキットを届けるビジネスを考えた場合、
- 誰が顧客か(顧客セグメント)
- 通販サイトやSNS広告でどう届けるか(チャネル)
- 誰と提携するか(パートナー)
- 自社で何を持っているか(リソース)
などを1枚のキャンバスで整理できます。
リーンキャンバスを活用して立てた仮説をさらに具体化し、実現性やリスクを多角的にチェックできます。
そのため、チーム内の議論や上司・投資家への説明にも使いやすく、事業構想をスムーズに共有できるツールとして活用されています。
マンダラート×マインドマップで思考を強制的に広げる

マンダラートは、曼荼羅模様のようにマス目が書かれた紙を使って、ひとつのメインテーマから8方向へ発想を広げる手法です。
マス目にひとつずつアイデアを書いていくシンプルな手法のため、さまざまなシーンで活用されています。
マンダラートを活用した代表例として、大谷翔平選手が挙げられます。高校時代に「ドラフト1位で8球団から指名される」という夢を中心に据え、実現に必要な要素を整理し、目標達成の道筋を明確にしました。
さらに、より柔軟な思考を促すマインドマップと組み合わせると、マンダラートの効果を高められます。
5W2Hでアイデアの実行プランと課題を具体化する
5W2Hとは、以下の7項目から事業アイデアを具体化する手法です。
- Who(誰が)
- What(何を)
- When(いつ)
- Where(どこで)
- Why(なぜ)
- How(どのように)
- How much(いくらで)
構想だけで終わらせず現実的なプランに落とし込み、次にとるべきアクションを明確にします。
まとめ
新規事業のアイデアが浮かばないと感じるとき、それは「才能の欠如」ではなく、「視点や手法の不足」に過ぎません。
顧客インサイトを深く探って自社の強みを再認識し、体系的なフレームワークや発想法を使えば、誰でも創造的なアイデアをつかめます。
本記事で紹介した視点と手法を活用し、小さな実践からはじめてみてください。正解を求めるのではなく、問いを重ねながら仮説を育てるプロセスこそが、新規事業成功への近道です。
新規事業のアイデアに行き詰まった場合、外部連携という選択肢もあります
本メディアではアジア最大級のオープンイノベーションマッチングイベント「ILS(イノベーションリーダーズサミット)レポート」を無料配布しています。
大手企業とスタートアップが3,000件以上の商談を重ね、協業案件率30%超のイベントです。新規事業創出に向けた具体的な外部連携相手の探索方法や選定方法を豊富に扱っているので、ぜひ貴社の新規事業開発にご活用ください。